第10話 混迷の英雄達

 邪神の追放から早数日。

 天地戦という動乱と混乱を知らぬ空は雲一つない澄んだ青で広がっている。

 絶妙な暖かさを持つ風は眠気を誘い平穏以外の何者でもないだがその下では穏やかとは相反する状況に包まれていた。


「はぁッ!」


 混じり合う甲高い金属音。  

 泥臭い汗は迸り、二人の男は互いに剣を衝突させては火花を盛大に散らす。

 模擬戦も兼ねる訓練施設では壮介は高貴なる純白の武装、エクレスの鎧と剣を纏い騎士団長ハレアへと懸命に戦いを挑んでいる。

 女神アレルの選定の結果、生徒達は主に武具を扱う騎士派と主に魔法を使う魔導師派の二つに分かれていた。

 彼以外の騎士派も複数の生徒が果敢に鍛錬へと励んでいるものの、結論を言えば壮介の技量は誰よりも抜きん出ているのが現状。


「なるほど……幾らアテナ様の力があるとはいえ戦いは素人、だがここまで俺の動きに付いてくるとはなッ!」


「これでも覚えはいい人間ですからッ!」


「宜しい、それでこそ血湧き肉躍る!」


 エクレスの鎧と剣。

 三十の神々において剣の神ライズが使用していたとされる神聖なる力。

 実態を言えば至ってシンプル、搦手などはない代わりに得ているのは絶対的な攻撃力と絶対的な防御力。

 鎧は装着者の肉体を強化及び龍の牙をも弾く防壁を持ち、剣は上位魔族すらも一撃で切り裂く力を持つ。


「迅速刺突ッ!」


 熟練の腕からなるハレアの剣撃を崩すべく壮介は四倍の移動速度を付与する自強化の詠唱を巧みに繰り出した。

 彼に与えられる魔法も自強化などが目処であり、フィジカル特化の性能と称しても過言ではないだろう。


 この世界において魔法は内に秘める魔力を詠唱を経由し、空間へと魔法陣として具現化を行うことで多岐に渡る現象を引き起こす。

 至極単純な原理だが詠唱は星の数すらも易しく思える程に種類は豊富であり、また気の統一がされていなければ魔力を上手く具現化することが出来ず威力は半減する。

 シンプルながら実に繊細、それが魔法でありこの世界のルールなのだ。


「おっとッ! やるな……だがッ!」


 熟した技術と経験を持つハレアでさえ、彼の突撃には回避が間に合わず胸部へと叩き込まれた峰打ちに後方へと弾き飛ばされる。

 だが流石の対応力か、余り戦況を読まずに立て続けに攻め入ろうとした壮介へとハレアはカウンターの姿勢を整えていく。

 

「地原斬ッ!」


 長剣の刃先へと打撃性能を高めた強固な土塊を付与を終えるとハレアは刺突を繰り出す壮介の懐へと侵入を果たす。

 巨体に反した風のように緻密な動作による反撃は壮介が未熟であることを痛烈に自覚する一打と化した。


「ぐぁッ!?」


 熱が入り過ぎる壮介は怯む姿に油断に満たされ反撃の姿勢を視認しきれていなかった。

 跳ね上がった剣先の打撃は壮介を大きく吹き飛ばす。

 

「だがまだ荒削りの荒削り、戦いのいろはも分かっていないな、一度有効打を与えからと決して気を抜くな、慢心は戦場で死を意味することを自覚しろ」


「分かっています……もう一度ッ!」


 劣性的状況、図星を突かれる言葉と勝ちきれない事実に壮介は憤り、己の立場を自覚するがそれでも周囲は彼の評価は変わらず畏怖の視線を向けるのだった。


「スゲェ壮介……もう騎士団長について行ってるよ、やっぱ天才児は違うのか」


「俺なんて五秒も経たずにボコボコにされたんだぞ? 勝ててないとはいえ一矢報いている時点でバケモンだ」


「私なんて部下の女騎士さんと手合わせしたけどそれでも歯が立たなかったわ」


 そもそも同じ土俵でやり合う事が異常故に彼の評価に勝敗は関係がない。

 生徒達は壮介の機敏な動きに関心を抱き、中には現地の民もアノニラス・ハイドの再来だと合わせた黄色い声援も上がる。

 英雄と持て囃され、尚且つ文武両道の美丈夫となれば当然どちらの世界でも心を惹かれさすのは自然の流れだが当の本人は余りその事実に気付いていない。

 

「おいおい、お前らは何時までそこに突っ立ってんだ? このままじゃ可愛い女の子は皆壮介に奪わちまうぜ?」


「別にそもそもアンタ達があの優等生以上に日の目を浴びる事とかないっしょ」 


「ッ……そ、それは」


「そう……だけどさ!?」


「おいおい止めとけハズキ、そう言ってやるんじゃねぇよ」


 図星をつく発言に周囲は何とも言えない重苦しい空気に包まれた。

 トップを走る彼だが及ばずとも負けてはいない騎士派の生徒も存在している。

 第一に名が挙げられるのは屈強な体力を持つ蓮と覚え込みが早くセンスが高いハズキの二人だろう。

 剛力の龍殺斧バルレクスと迅速の麗羅槍レアリエル、対照的な要素を持つ武具だが双方共に二人との親和性が高く、元の素質もあって既に主力に値する実力を有していた。


「俺は……戦うッ! 死んでいった者の為にも俺が大義を果たすッ!」


 天性の才能を持つ壮介。

 父が警視総監という名家育ちなのもあり、内に眠る正義感や統率力への意識は高校生ながら誰よりも高い。

 仕方ないと割り切ったとはいえ、既に一人の犠牲者が生まれた事実に壮介はより二つの思いを加速させ武に身を投じている。  

 周囲の者も同じくクラスメイトが死んだ事実に心を曇らせるが壮介の言葉に酔う形でも訓練に励むことで現実逃避を行っていた。

 あらゆる面で中心に位置している彼を称賛する者がいれば天才に対しての妬みの言葉も勿論存在する。

 

「チッ……生意気に、成功者はこっちでも成功者になんのかよ」


 正体は勇斗を含めたソウジを標的にしていた取り巻き達だ。

 一時は魔神の子であるソウジの排除に積極的な姿勢だった故に王国側から賞賛を浴びせられていたが一日も経てば話題は壮介へと奪われた現状に不満を抱く。

 実に奇妙だが、世界が変わろうと前に広がる光景は前世と大差なく、同じヒエラルキーの構図がクラスには誕生していた。

 壮介一強状態が続く騎士派とは裏腹に魔導師派は対照的な空気に包まれる。


「素晴らしい、やはり皆さん、神の力に選ばれるだけの素質はありますね」


 壮介達が位置する真隣に存在する魔導師専門の第二訓練施設。

 仕草、外見、声質、何処を取っても美少女にしか見えないハリエスが誇る屈指の中性的魔導師サラキス・レスタ。

 上品さ柔らかい姿勢も相まって既に魔導師派の生徒には絶大な人気を誇り、中には「男でもいいかもしれないッ!」と新たな扉を開く男子生徒も存在する。


「では次はより魔法操作の精密動作を行いましょう。皆さん、あの的に向けて己が持つ力を解き放つのです」


「「「はいッ!」」」


 サラキスの部下が顕現させた魔力防壁に貼られた真紅に光る点へと生徒達は一斉に詠唱を開始していた。

 魔導師派、与えられた武具を鑑みて主軸として魔法を利用する側の者達は騎士派よりも繊細な技術を求められる。

 魔法は火、水、風、雷、光、闇とメジャーな物から無属性にまで渡る。

 長年の技術発達により詠唱文の簡略化や魔法陣構築の単純化などはあるもののそれでも戦闘経験のない素人にとって最初は苦難を強いられる行為だろう。


「剛岩撃ッ!」


「氷我輪ッ!」


「雷撃散弾ッ!」


 生徒から放たれる数々の上位魔法。

 強固なる岩の弾丸、無数に放たれる輪状の氷結の斬撃、稲妻轟かす雷の広範囲攻撃。

 装備故に放たれる威力は非凡だがスペック頼りなのは否めなかった。

 魔法の質は高くとも精密性はお世辞にも高いとは言い切れずサラキスが設定した標準への着弾は成功していない。


「炎天破ッ!」 

 

「幻影召喚、グレップドラゴン」


 だが騎士派に抜きん出る者がいるように魔導師派にも同様の才能を持つ存在は勿論存在していた。

 射出された槍状の業火と召喚された小型ながら鋭い牙と獰猛性を持つ双龍はサラキスの目標へと的確に攻撃を着弾させる。

 その他にも数名の生徒はサラキスが望んでいた結果を齎す。


「やはり特に貴方方は飲み込みが早い。素晴らしい技術です環奈様、祭華様」


「お褒めの言葉……ありがとうごさいます」


「別に〜普通にやっただけだよ?」


 アメラスの杖を持つ治癒師の峰月環奈、ラビレイズの腕輪を持つ召喚士の雨宮祭華。

 互いに三十の神々が装備する力を得ている二人だが役職だけ見れば彼女達は戦闘向きの存在とは言えないだろう。

 現に他の魔導師派やユズに比べれば戦闘特化とは言い難いのが事実。

 しかしそこは女神、いや神話の補正、本職以外にも多彩な魔法が付与されている故に戦闘分野でも然程支障はない。

 潜在的なセンスも相まって環奈達は壮介と同じく自らに与えられたアーティファクトを支配していた。


「いい動きだな、環奈、祭華。だがお前達は魔導師だ。純粋な力を考えればこちらには及ばない、だからこそ俺の力で守ってやる」


 一区切りがついたと同時に後方からは訓練を終えた壮介含む騎士派の面々、ハレアなどが汗を拭いながら歩み寄る。

 称賛を口にしつつも、悪気なく放たれた言葉に環奈や祭華は若干眉を潜ませる。

 蔑むつもりは毛頭ないのだがリーダーという立場の責任からかたまにこのような失言をかますのは彼の欠点だろう。

 しかし中心メンバーを筆頭にクラスは段々と纏まりに包まれ始め、ソウジの死も踏まえて段々と己の立場を自覚始めていた。


「フンッ、中々やるようだな。いややってもらわねば困る話ではあるが」


 突如、集結したクラスメイトへと低音からなる不適を極める声が訓練施設へ鳴り響く。

 金髪を靡かせる上品ながらも気性の荒い反対的な二つの雰囲気を纏う王族の服を身なりにする男の出現にハレア達は反射的に跪き、敬意の姿勢を取る。

 壮介達もワンテンポ遅れて取り巻きを連れる紅の瞳が煌めく腰部へと双剣を備える荘厳なる者へと膝をつかせた。


「マルス王弟殿下ッ!」


 マルス・ヴェネクス・ツバウェル。

 ハリエス王国現女王サリアの五つ下の弟であり、王位継承資格第一位の存在。

 姉弟で似たキレた瞳と様相は立つだけでも様になっており、周囲の者へと無条件で威圧感なる物を与えている。

 彼も例外ではないアレル教の信者であり、美麗な顔立ちに一部の女子生徒は惚気けにも似た表情を浮かべていた。

 

「ハレア、サラキス、現状を報告しろ」


「ハッ! 英雄の教育は順調であり、女王の想定通りに進んでおります」


「こちらも同様に順調そのものです」


「なるほど、確かに最初の間抜けを極めた顔付きも少しはマシになっているようだな。姉様も満足してくれるだろう」


 筋肉質な腕を隠す黒手袋をはめ直しながら周囲を一瞥し、マルスは微笑を浮かべる。

 彼と壮介達が顔を合わせたのはソウジ処刑の翌日、歓迎パーティと生徒達を饗した際に初めて彼はその正体を現した。

 女王の弟でありこの国の右腕、なのだが壮介及び男子生徒達は彼の存在を余り良くは捉えていない。

 

 主な理由は彼が持つ女癖の派手な婆娑羅的な一面が挙げられるだろう。

 マルスは神聖なるパーティにも関わらず愛人であろう美女を複数人も連れ、尚且つ生徒へと即席への誘いを次々に口にしていた。

 流石に女神アレルが選びし英雄達を食い物にする気など毛頭ないがそれでも彼の振る舞いは多くの同性の僻みを買ったのだった。  

 外見や態度は世の理想的なモテ男そのもの故に尚更たちが悪い。


(マルス……この男とは恐らく、いや確実に分かり合えない、この色男から俺が全ての花を守らなくては)


 壮介も例外ではないが動機は色欲ではなく何方かと言えば純粋なる正義感と少しばかりズレており、敬意を払う姿勢を見せつつも心の内では何処か警戒心を抱いていた。

 そんな彼の心を知ってか知らずか、マルスは一瞬だけ壮介を見やると直ぐにハレア達へと瞳を向け直す。

 

「まぁいい、ならばそろそろテストとでも行こうではないか」


「「「テスト……?」」」


 突如発せられたテストという言葉はクラスメイト全員の首を傾げさせる。

 状況が理解出来ない面々に対し、ハレアやサラキスを含めた王国の者は驚愕を意味する形相へと変貌を遂げた。

 

「ッ! お言葉ですがマルス王弟殿下、彼らの実戦投入はまだ先のはずでは、それに飛躍的な成長とはいえまだ精神面は」


「ハレア騎士団長、君も理解しているはずだろう、我が国いや我が人類の立場を、昨日だけで一体何人もの尊き命が失われた? 結論を言おう、我らに時間はないのだ。姉様もそれを望んでいる」


「ッ……畏まりました」


 マルスの意向に従うハレアとサラキスはほぼ同時に立ち上がると困惑気味の者達へと事実を赤裸々に伝える。


「マルス王弟殿下、及びサリア女王陛下からの要望だ、少し早いが君達を早速実戦に投入したいと考える」


「勿論、誠心誠意のサポートは行いますがあくまでその安全は絶対ではありません。心してかかるようお考えください」


「なっ実戦って!?」


「そ、そんないきなり言われても!?」


 何時かは来ること、王家側からもいずれは実戦での戦闘訓練を行うと宣告されてはいたものの、予定は一ヶ月も先の話だ。

 しかし半ば不条理に決定した実戦の前倒しはまだ心構えの出来ていない生徒達へと明確に動揺を走らせる。

 確かに技術はついているものの、それと精神的の話は別問題、必然的に消極的な空気が流れるが彼らの現状を吹き飛ばしたのは精神的支柱でもある壮介だった。  


「皆! 俺達は数多の宇宙から選ばれた偉大なる英雄だ、世界を救う者として何時までもこんな場所にいてはならない、これはチャンスだ、俺達が更に前へ進むチャンスが早まったという事だッ! 王弟殿下、俺は貴方の願いを引き受けますよ」


「フッ、その答え以外は求めていない、神が選びし偉大なる英雄達よ」


 半ば睨み、半ば決意の瞳にマルスは見下ろしながら不敵に口角を上げた。

 壮介の言葉は瞬く間に周囲を動かし全員の意見を正反対へと導ゆく。

 たった一人の犠牲者ともう一人の不在者を抜いて一致団結を終えようとした時だ。


「待ってッ!」


 全員の鼓膜に決死ながらも美しさを持つ音色が響いたのは。

 振り返るその先にいたのは最後までソウジを守り続けようとした唯一の存在。

 そして、ソウジの死という絶大なる可能性を唯一拒絶している選ばれし者の一人。


「私も……行かせて欲しいです」


「ッ! ユズ!」


 朝日ユズ、女騎士達に誘導される形で現れた彼女は高らかに忠誠の言葉を口にした。

 ソウジに並ぶ問題児だと判断していた王国側及びマルスは意外な人物の登場に少しばかりを目を丸くする。


「朝日ユズ……確か姉様が投獄した女神アルスナの魔導書に選ばれた麗しき花か、即席に迎えたい程には美しい顔をしている」


 相変わらずの女癖が垣間見える言葉を口にするマルスだが半ば無視する形でユズは決意に満たされる形相を浮かべた。


「ソウジは生きているって……今でもそう信じている、それに変わりはない」


「待てユズ、あいつはもうッ! いい加減現実を受け入れろッ!」


「それでも信じるッ! 信じているからこそ私は前に進みたいと思う。だから……私は貴方達に忠誠を誓います。ソウジが生きてるって証明する為に」


 ユズは揺るぎ無い決意を声に表し、結果的に復活のキッカケとなった祭華へと感謝の視線を向ける。

 彼女の動機は全員を唖然とさせ、思わず壮介は現実逃避とも取れる発言に咎めを行うが被せるようにユズは思いを貫く。

 魔神の子が生きている、本来ならばあってはならない事を吐く彼女に王家の者は批難の声を浴びせるがマルスは顎に手を当てると考える素振りを見せ始めた。


「王弟陛下、如何なさいますか? お望みとならば直ぐに処罰を」


「いや、寧ろ良いではないか」


「はっ?」


「戦力の増加、忠誠を誓うのであれば動機など何だっていい」


 マルスは彼女の言葉を妄想に駆られた戯言だと一蹴しており、動転している心を利用できると即座に判断を行う。

 行動原理はなんであれ、言う事を聞くのなら戦力に変換するには持っての好機。

 部下の困惑を意に介さず、相手の芯までもを見つめる瞳でユズへと問い掛けを始めた。


「朝日ユズ、貴様が発した忠誠心に嘘偽りはないか?」


「ありません、あの牢獄で燻っていては私は何も変えることは出来ない。起きたことにくよくよしても仕方ない、だからこそ私は前に進んで真実を知る為に貴方達に従います」


「フンッ……貴様の個人的な目的は知らんが我らに属するのならそれだけで構わん、サラキス、お前の傘下に入れてやれ」


「ハッ! 責任を持って彼女も人類勝利への道しるべとなるよう教育致します」


「宜しい、ならば早速行こうではないか。始め給え」


 瞬間、サラキスを筆頭とした魔導師達は生徒を取り囲むと直径数十メートルは及ぶ尨大な魔法陣を顕現する。

 複数人の魔力からなる転移型魔法は瞬く間に全員の光の渦に包み始めていく。


「ユズ……お前まだソウジのことを。もう現実を見ろ、あいつは大義の為に散った。不安なら俺が拠り所になってやる」


「ハッハハハハハァッ! お前もあいつみたいに妄想癖でもついたのか? いい加減現実ってやつを見「黙りなさいッ!」」


「ッ!?」


 彼女らしからぬ平素の何倍もある激情的な反撃は思わず煽る勇斗を怯ませる。

 錯乱気味だと捉えられかねないが彼女の瞳には間違いのない光があり、一概に現実逃避とは言い切れない物があった。

 ソウジは死んでいると仮定してきた面々もユズの異質さに前提が崩れるような音が僅かに鳴り響く。


「壮介、私も共に行く。でもそれはあくまで心の内にある本能を確かめる為よ、ある人が私に教えてくれた、何時までも燻っていても何も始まらないって。こんなの私じゃない、だから戦う、ソウジが生きている手掛かりを見つける為に」


「ユズ……お前」


 幾ら中心格の壮介だろうと彼女の言葉を覆すことは出来ず言葉を詰まらす。

 取り乱し、見失いかけていた自分を取り戻したユズは空を見上げながら決意を固める。


(ソウジ……必ず見つける、私は真実が分かつ死だとは思っていない、絶対に……必ず見つける、もう過ちは繰り返さない)

 

 助けられなかった彼への罪。

 その贖罪の為、過ち犯したままで終われないとユズは己の強さである心の深さを武器に転移による光に包まれるのであった。

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