解答さん 其の4


「いやーさすがに今回はハズレだったようだね」

「まぁ…そう頻繁に異常が起こっても困りますしね」


解答さんが現れなかった事に落胆しながらも、どこかホッとしたような空気の中そう切り出した。


「さて、残念ではあるが今日の所は解散としようか!時間も時間であ…」



プルルルル



言いかけたところで電話の着信音が響く。

音は私の携帯からなのだが、生憎と私には電話をかけてくるような知人に心当たりは無かった。


「はて?」


携帯の画面に目を落とすと、そこには『やかましJK』と表示されている。

なるほど、これは解答さんの情報をくれたやかましいあの女子であるようだ。


「仲が良ろしいんですね…」

「おー!隅に置けませんねー!部長!」

「え!?いや!ちが!私にも何が何だか!?」


千影君のなぜか軽蔑したような冷ややかな視線が物凄く突き刺さる。

景君も悪乗りで茶化してくるものだから居心地が悪いといったらない。


「恐らく間違い電話に違いない!困ったものだ!ははは!」


だが応答のマークをタップした瞬間に…


『助けて!!』


ただ事ではない声が我々の部室に響き渡ったのだった。


「な!何事かね!?」

『ニッシー!?ニッシーだよね?あの解答さんの話した!』

「そうであるが…一体全体何事か…」

『ヤバいんだって!あの後あーし達もやってみたの!解答さん!!そしたら実際に解答さんが!!』

「なんだって!?」

『あーしはそのまま回線切られたンだけど友達が解答さんに…』

「その友達は!?」

『今からその子ンとこに行くとこなんだけど…最後の質問に答えられなかったみたいで…』

「私も向かおう!何か力になれるかもしれん」

『ごめんニッシー…知り合ったばっかなのにこんな変な事…誰もこんな話信じないだろうし…まだ何か起こった訳でもないし…あーし訳わかんなくなっちゃって…』

「いやいや、私が解答さんの話を聞いたのが原因というのもある…」

『ごめん…』

「何もなければないに越したことは無い!すぐ向かおう!」

『駅前で待ち合わせでいい?』

「うむ!」


その後、二言三言交わして電話を切る。


「というわけで、情報提供者の身に危険が迫っている可能性がある!」

「ニッシー…」

「ニッシーって呼ばれてるんですね…」

「そこ!?そこが気になるかい!?」

「まぁ冗談も程々に…もし本当に危険が迫っているなら見過ごすわけにはいきませんね」

「声も震えていました、本当に不安なのでしょう…」

「うむ、ほとんど見も知らずの私に相談してくる程不安だったのであろう…これを放置しては都市伝説けんきゅうかいの名が廃る!」

「…いきましょう!」

「いざという時の為の道具も持参しなくてはいけませんね」


二人が賛同してくれる。

それだけで私の中から恐怖心という物が消えていくのが分かる。

いくつかの護身グッズを鞄に詰め込み、我々は

電話の主である女子高生のもとに向かったのであった。



数十分後



「ごめんニッシー!待った?」

「いや来たばかりだ、紹介しよう。私の頼もしい仲間である千影君に景君だ」

「初めまして、お話は伺っております」

「よろしくね」

「あ!ヨロです!!わざわざすいません!!」

「さぁ早速で悪いがその解答さんと話した彼女の元に案内してくれるだろうか?」

「うん!すぐ近くだから!ついてきて!」


道中、少々気になった事を訪ねてみる。


「解答さんの儀式には3人以上の人間がいるはずであるが…他の子は?」

「…あーしらも3人でやってたんだけど…もう1人はもう本気でビビっちゃって…言うてあーしもビビってんだけど…ハハ」

「いやなに、責めてるわけではなくその子が安全ならと思ったまでだ」

「…うん、家に籠もってるみたいだから大丈夫と思う」

「うむ」

「ところで…何が起こったのか…詳しく聞かせて貰ってもよろしいですか?」

「あ!はい!あのー…あーし達もニッシーと別れてから解答さんの話で盛り上がっちゃって…実際にやってみよって事になったんです…」

「ふむ」

「で…皆一旦家に帰ってから3人でアプリ繋げて…解答さん呼び出す儀式して…あとはなんか彼氏がどうとかって話をダラダラして…」

「我々と同じような感じだが…違いがあるとすれば一旦皆が解散している点くらいか…」

「そしたら…」


ブルっと身震いをして彼女は続ける。


「解答さんって名前の人が急に参加してきて…そこであーしともう1人は急に通話切られちゃって…あとはどうやっても参加できなくなっちゃって…」

「……」

「しばらくしたら解答さんと話してた子から泣きながら電話かかってきて…『どうしよう…最後の質問答えられなかった…死んじゃうのかな私』って…」


泣きそうになっている彼女の肩にポンと手を置き、気休めにしかならないであろう言葉をかける。


「大丈夫、なんといっても都市伝説のプロフェッショナルがこっちには3人もいる!その子も君も明日にはいつもの日常を送っている事であろう!」


何がどうプロフェッショナルなのかは分からないがそう断言する。

実際、我々はくねくねを撃退しているのだ。

プロフェッショナルを自称しても問題ないであろう。


「…ついたよ」


ビュウと風が吹く。

何の変哲もない一軒家を前に我々の足は止まる。

さあ!見せてやろうではないか!プロフェッショナルがプロフェッショナルたる所以を!!

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