嫌な悪寒
芦原は白光が降り注ぐ天井を眺めながら、椅子をぎしぎしと揺らした。背中をつけるたび、ひんやりと冷たい感覚が染みていく。既に後悔しても手遅れな状態だった。
パソコンに表示されている日付が変化していないことから察するに、間違えを理解しなければ終わらないことは明白であった。しかし、その間違えが見つからないのである。至る所を探しても、間違っている内容は存在しないのである。
芦原はだんだん伸び始めている顎髭を触りながら眉間に皺を寄せた。過去の自分自身の過ちに対し憤りを感じる。それでも、現在の問題を解決するには至らないのである。仕方がないと割り切りながら、男は徐に書籍を手に取る。
本をぱらぱらとめくりながら活字に目を通していると、腹の虫が鳴った。時計に目をやると短針は十二をさしていた。あまり熱中しない気質の芦原は内心驚きながら部屋を後にした。
今日もパンが置かれているのだろう。そんなことを思いながら机に目を移す。
しかし、そこに置かれていたのは普段とは異なっているものだった。
机に置かれていたのは、小綺麗な新聞だった。芦原は新聞を開き日付に目を通す。そこに書かれていた内容を見て、男は目を見開いた。
なぜなら、新聞の日付は受領した年より一年も前だったからである。
男の背筋に嫌な汗がはしる。
もしや、この実験はタイムマシンの実験ではないのか?
そんなバカげた考察が頭の中にわいてくる。
しかし、そんな技術はあるはずがない。
ここ最近調査していた最新技術にも、タイムマシンは存在していなかった。現に存在していたとして、人間の身体が光速以上の速度に耐えられるわけがないのだ。科学的にあり得ないと一蹴される意見を考えた頭を軽く小突いてから、男は眠るために部屋へと戻っていった。
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