第六十九話:谷家の食卓
※※ 69 ※※
「まあまあ、ね。やっぱり男の子は違うわ」
およそ十五分前後。俺がひたすら
「拉麺还可以锻炼身体<麺打ちは身体を鍛えることに似ている>って言うぐらいハードな作業なのよ。あんたも少し鍛えた方が良いみたいね」
軽く肩で息をしている俺を優しい目つきで
「そうよ。部屋の中で歴史書ばかり読んでないで、前みたいにお父さんの警察署道場で
「あの地獄の特訓は勘弁してくれ」
「うん。よく煮えてる。今回、スープの方は簡単に済ませちゃうわ。さて、と」
ボールから取り出した大きな団子をまな板の上に乗せ、手の先を油に
「
俺の前で「よいしょ、よいしょ」と
「なに、ボーっとしてるのよ。後であんたにも手伝ってもらうんだから、ちゃんと見てて」
何となく俺の視線を気にしていた灼は、怒り半分、
「お……お、おう」
と、棒状の麺の前に立つ。灼が見せたように手の先を油に
(灼を意識してしまったのは、きっと細くて
が、思う前、再びハーフジャージから
「平良ッ」
目の前に構える少女の声で、俺は自身の手が止まっていたことに気が付いた。
「また、何を見て……馬鹿!」
「あ……えっと、ごめん」
俺の
「いいわよねー、
いつの間にか、カウンターに座っていた母親が、灼を抱き止める姿に若き日の青春を重ね合わせて言った。
「俺がどうかしたのか?」
突如、居間のドアが開き、父親の
「お父さん、お帰りなさい。実はねェ……今しがた
「お……お義父さん、お帰りなさい。今日のごはんは中華よ」
困った笑顔の灼が、母親の言葉を
「中華だとッ!? 平良……もしや今、母さんが言いかけたのは
もはや中華料理は
「ちが……違う、違うッ。お袋と灼は関係ないッ! 何にもないッ!!
「ラーメン……?」
「学校帰りに平良がラーメン食べたそうにしてたから……ラーメンだけでごめんね。その代わり
父親の苦笑と
「そう言えば、灼ちゃんが作るラーメンを食べるのは初めてだな」
「うん。中国ではよく作ったけど……、日本には性能の良い製麺機があるからね。機会がなかっただけだわ」
言いつつ、
「もう、すぐに出来上がるけど先に食べる?」
ようやく
「そうしよう。その前に着替えてくる」
灼の
両親が食卓に着いて
「平良。あんたはお椀にオイスターソース
俺の
「で、出来たぞ」
俺の達成感に満ちた笑みと、四つ並んだ
「じゃあ、他の五つも両腕の力を均等にして、
言い置くと、自分が先に伸ばした棒状を平たく
「この麺を大体五分くらいかしらね。
熱湯に麺を放った灼は、なぜか勝ち誇った顔で
灼は先程俺が用意したお椀に煮豚の煮汁を入れお湯で少々
「いただきますッ」
「…………ッ!」
俺と両親は口に広がる、今まで味わったことのない
「……確かにラーメンだ。でも俺が今まで食べてきたラーメンと全然違う。この『モチモチ感』はうどんにも
父親が驚きの顔で
「ホントに美味しいわ。灼ちゃん」
母親が頬に手を当て、惜しみない
「たったあれだけの調味料で……。ちゃんと『醤油ラーメン』だ」
「あたしが本気で作ったら、こんなもんじゃないわ」
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