第六十八話:『菅原家』のライバル~検証㉑~
※※ 68 ※※
寒風が吹くグラウンドでは部活動も早めに切り上げられ、僅かに体育館の中で
次期生徒会の構成メンバーとは『歴史研究部』で別れ、俺と灼は校門を出た後、やたら長く
「平良。あんた、ついに『
「まだ決まったわけではないが……『鎮守府将軍』だの『征夷大将軍』だのと言われると
俺は
「全校生徒の頂点に立つのよ、胸を張りなさい」
強さが
「ああ、出来るだけ心掛けるよ。会長と四字熟語が学校サイドへ、部長は教育委員会と地元議員、商工会議所に根回して予算と建設許可を受理してもらう
ふん、と灼は当然のように鼻で笑う。
「
「ああ……」
少しだけ間を置いた俺は、思い巡らしながら一歩先へ進んだ。
「鎌倉幕府における『地頭』と『守護職』は、
「ええと、たしか
言う間に灼が俺の前に出て、くるりと振り返った。俺は肩を
「そう、その『大江氏』だ。また、源義家が大江
「
得意げに笑う灼の後ろから、俺は大きく
「――十二年の合戦の後、
と、いうのが『
「源
「あんたにはその根拠があるのね」
俺と灼は坂を下り切って歩く前、県内で一番の大動脈が走る交差点が赤に変わった。立ち止まって、そんな灼の
「根拠というほどのものじゃないさ。あくまでも俺の私見で『
日本最古の兵書といわれる『
その真剣
「その……つまり『
グゥゥゥゥゥ……。
「いいわ。今晩はラーメンを作ったげる。続きはごはんの後にして、スーパーに寄るわよ」
信号が青になり、灼は激しく情けない俺の手を引いて歩いた。
帰宅後すぐに入浴を終え、俺は安らぎを求めてソファーに身を沈める。灼も
「灼ちゃん。今晩ラーメンを作るって聞いてたけど……
学生カバンから取り出す食材を眺めていた母親が軽く
「麺は打つのよ。平良、ちょっと手伝って」
「何をすればいいんだ?」
「あんたは
「……
そう
「お
「まあ……かなりお腹が
俺は腹の虫を気にして
「薄力粉は良いようね。まあ
「お前って海外生活、長かったんだよな」
「フランス、ドイツ、イタリアに
キッチンテーブルの真ん中に塩と
「中国語で『盐是骨头碱是筋』――つまり塩は骨格で重曹は筋肉って意味で、特に重要視されてるの。ラーメンの麺は『
「さあ、平良。あんたの出番よ。
「おうよッ」
言って、俺は
「ねえ、平良……」
「なんだ」
台所という
「『菅原家』と平氏の構図を考えて、やはりライバルと言うべき源氏にも『大江家』が存在した……って話で止まってたわよね」
――俺たちは違った。歴史の話を
「俺が話すのはあくまで私見だ。それを
俺はボールの中の作業に視線を
「『大江家』は『菅原家』と同じく氏姓は『
その孫の大枝
「大江家もやっぱり流されるのね。学者の家って
灼が大きく嘆息した。俺は肩を
「時の権力者の『
「これが、あんたが言ってた源
灼の言葉に、俺は大きく
「源
きっと『
灼が人差し指を唇に押し当てた。こいつが思考する時の
「菅原家ではなくて、大江家を選んだのは『平氏』に対抗したの?」
俺は
「いや。菅原
つまり元々武装集団を持ってた『菅原家』は平氏を育てたが、武装集団を持たない『大江家』は源氏に近づいて武力を得ようとしたと見るべきだと思う」
「
灼は話の
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