第六十五話:再会の場所
※※ 65 ※※
俺と灼は冷たい上にも冷たくなった空気が吹き抜ける部室棟を渡り『歴史研究部』の扉を開けた。
「うー……
灼は小さく
「ねえ、やっぱり会議は生徒会室の方が良かったんじゃない? あっちの方が暖かいし、広いし」
灯油用ポンプを準備する俺の背後で、寒気に
「昨晩も言っただろ。
俺は給油し終えたストーブに点火する。その上に載っているやかんが湯気を上げる頃には、温かな空気が室内に広がっていた。俺は二つのコップにティーバッグを入れ熱々の湯を注ぎ、一つを灼に手渡した。
「とにもかくにも、声をかけた部がどれだけ『新生生徒会』に集まるか、信任投票までにどれだけ浮動票を集めることが出来るか、その両方にかかってるが……それも今日次第だな」
「なに
ずぼらな俺の言葉に対して、万事キッチリした灼の返事は少々
「そもそも『部室整理令』ってルール守らない部や愛好会が悪いんでしょ。会長が科したペナルティーも結構厳しいけど……自分勝手に言いたい放題。それを次期生徒会長に信任投票される平良が事後処理しなければならないだなんてッ! いっそ老朽化した部室棟も
寒さもあって機嫌がなかなか直らない灼は
「よォー、相変わらずお前ら夫婦は仲が良いな」
「
扉が開かれ、二人の姿を取って入ってきたのは三年の先輩である。懐かしの『歴史研究部』部長と四字熟語。
約一か月前に開催された文化祭で我ら『歴史研究部』は
地元の議員や建設会社を巻き込んで原寸大の『
「数週間ぶりなのに、ずいぶん
部長は
「気にするな。とにかく『歴史研究部』が
「
相変わらず
「部長も四字熟語も
なにより大きな存在感を
「おやまあ、部長さんに四字熟語さん。お久しぶりにお二人さんのお顔を見ましたなぁ。お元気どしたか?」
「……平良。
「そ、そりゃ……
「ほほほ。
「みんな、お久しぶり」
と、ストーブの奥にいる俺と灼に目を留めた。近くまで歩を進め、
「
「大したことはしてないさ。なあ、灼」
水を向けられた灼は表情を
「べ……別に、会長があんたたちに渡した『歌』で『
口調自体はぶっきら棒で
「あんたがいない間に『古代考古学研究部』を併合してしまって……その、
灼の実直で飾らない言葉に飯島先輩は笑顔で返す。
「そこはまあ、双月が
困った灼は
「ふ・た・つ・き、ちゃん!」
「――ッ、ひゃわァ!!」
いつの間にか背後に回った結衣さんに、とても描写できない指使いで
「にゃァァァーッ!」
全ての語句に
灼は細い肩で何度も荒い息を吸って、半泣きの結衣さんに
「あんたって、本当に
「……感謝や
言いながら、頭頂部を
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます