第六十四話:『将門』の義侠と限界~検証⑲~
※※ 64 ※※
唐突に始まった夕食会が終わって数時間後、新庄が洋式の
「あたし、もう帰らなきゃッ。両親遅くて弟たちが待ってるし、残業続きの兄貴に夜食もつくらなきゃだしッ。今日は本当にごちそう様。双月に谷、
と早口で一気にまくし立てて、食後に飲んだティーカップを台所に持ち運ぼうとする。灼は横合いから「そのままでいいわ」と柔らかに動きを
「新庄さん、とても
何気ない
「ふ、ふ……ふんッ。大したもてなしも出来なかったし、気にしないでいいわ」
灼は
「明日も学校で。私、谷君のこと頼りにしてるから」
「あ、ああ……。また生徒会で」
俺は決まりきった答えで返した。だが、灼の顔がいきなり
(ま、まさか……会長。
その言葉を聞いて
「あたしも平良と生徒会へ行くわ。あんたの『部室整理令』を終わらせましょ」
戸惑いを
「あなたが言うと心強いわ。とにかく頑張りましょう」
会長は先に玄関へ向かった新庄を追うようにリビングを出ていった。
灼の部屋からそのまま続く
「……どうして、会長はあんなこと言ったのかしら?」
灼が急に気の抜けた声を
「あんなことって……自分から押し付けた『
俺の一言に、灼は胸に鋭い痛みを覚えた。しかし表面上は抵抗を感じる様子もなく続ける。
「まあ、それもあるけど……『歴史研究部』に対するペナルティーというより、どちらかというとあたしと平良に対しての課題だったじゃん?」
「確かに、『
俺は小さな違和感とともに、放課後に起きた生徒会室での事件を思い出していた。
「そうよッ。あいつ『世の中に……』の歌と『散ればこそ……』の返歌であたし達を
灼は、被害
「しかも、あいつは――」
口が止まらない灼の小さな頭に、俺は手を添え優しく
「……平良は
俺は前を見たまま、
「灼は『
意味が分からないまま、灼は隣に目を向けた。俺は答えを待たずに自分の言葉を続ける。
「放課後、『部室整理令』で立ち退く部を監督するために生徒会室へ行った時だ。高橋先輩と藤川先輩が会長に抗議をしてた。『運動部の反発が激しい。部も愛好会も等しく厳しい課題を与えるのではなく、せめて実績がある部には
俺は気配を感じつつ、一旦言葉を切る。隣に視線を向けると見つめられた少女は
「『
灼は真っ赤な顔で口答えするが、反発の色はない。ただ
「会長は先輩たちに対してこう言った。『私の課題をクリアできないほどの実績ならば、部活動とは
「なるほど。『
灼は
(そして今や、敵と味方の旗色がはっきりしたため、あたしたちに突き付けた課題のペナルティーも必要無くなった)
会長の
(常に
灼は考え、思いを巡らし、思い
「ま……まあ、次期生徒会長に
灼は
「どうだろうな? なんせ『
そして
「そう言えば『
灼の
――『
俺は灼に伝えるべきことを考え、出来るだけ言葉を
「自分たちが正しいと思い込んでる反骨精神
「でも、
灼は不思議そうな顔をする。俺は少しの
「毎度のことだが、俺の私見は……
しかし国人ごときでは中央の
「まあ、可能性としてあり得るわね」
灼は呆れの
「
「
言葉の
「ああ。将門記には、
――幸沐恩澤於海内、須滿威勢於外國。
つまり朝廷に認められた
「さっき平良が言った、
少なからずの
「
そして坂東が平定されると、今度は安心して国人たちは
――将門記には、
常陸國居住藤原玄明等、 常陸國に居住せる藤原
素為國之亂人、為民之毒害也。
望農節則貪町滿之歩數、
至官物則無束把之弁濟。 官物に至りては則ち、
……
長官藤原維幾朝臣、 長官<
為令弁濟官物、雖送度々移牒、 官物を弁濟
對捍為宗、敢不府向。
将門に与した藤原
朝廷から六月上旬、
天慶二年<九三九>六月七日、『
突然割って入って灼は
「それは、つまり
俺は当惑と感嘆を交えて、表情に重さを加えた。
「
俺は嘆息とも
「
しかし
「それって……」
灼の言いたいことは分かっていた。だから俺はもっともらしく
「その後、
灼は悔やんでも仕方ない、
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