第五十七話:みんな『エース』を狙っている
※※ 57 ※※
「その勝負、あたしも加えてちょうだいッ」
突如、灼が
パイピングが
しかし足取りは軽やかに。乱れた細めのプリーツを押える仕草は少し恥ずかし
「双月さん。あなた、状況が分かって言ってるのかしら。生徒会として決して受け入れられない
灼は最初から無かったかのように会長の言葉を聞き流しつつ、
「あんた」
「あ、あんたって……一年のくせにッ! どういうつもりでッ……」
見た目は年齢よりも
「あんたにとってテニスは
「そ、そうよ。あたしにとって高校生活の全てだわ」
たじろぎつつも
「わかったわ。あたしと、あんたと……庭球部の誰か。そっちはペアでいい。テニスで勝負しましょ」
新庄は怒れる
「……いつもいつも、いつもッ。そうやって……
と、猛烈な怒気を
「生徒会って何も分かってないッ!」
「あんたも生徒会でしょ」
にべもなく斬って捨てた灼の言葉に、やり込まれた
「双月。あんたって有名だわ。勉強も運動も料理も出来て、ちょっと可愛くて……
「だから何?」
灼の周りだけ急に冷え込んだ平静な声。ただし
幼さを隠す
灼はさらに歩を進める。
「あんたみたいに
言いつつ灼は目線を会長に移し、再び
「……まあ、正直あたしも会長のやり方は気に
「ただし、条件があるわ」
「あたしが勝ったら、
「あ、ああ……たしが勝ったら?」
受けた
「好きにすれば。もちろん生徒会はあんたのスポーツ推薦を教師サイドに
さらに灼は言葉を
「もし、あんたが
「あ……ああ。灼の言う通りだ。そうなると
会長が諦めというより呆れに近い嘆息を
「色々問題あるけど……まあ、いいわ。ところで根本的な質問だけど、双月さんはテニスが出来るの?」
意味のない質問に、意味のない反応。しかし誰かが言わなければならない答え。多分、会長も全て分かった上で聞きたかったのだろう、灼の実力を確認するために。
「灼。おまえ、テニスは小学校以来だろう。誰かと組んでダブルスにしたほうが良くないか?」
俺は
「そうよッ! 思い出したァ!!
突然、テニス部員が
「どういうこと?」
「あたしがテニス経験者ってことよ。小学校低学年までドイツでテニス習ってたし、多少ブランクあるけど、あんたには負けないつもりよ」
もはや言い返す気力もなく、
ごく少数だがいるのだ。血の
「双月。あたし、あんたをテニスでブッ潰さないと気が済まなくなったわ。早く始めましょ」
「双月さん。私も参加するわ。
灼も同じことを思ったのだろう、異なる生き方や価値観が僅かに揺らぐ。心が痛かった。
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