第五十四話:菅原家の『回収係』~検証⑮~
※※ 54 ※※
洋式の
(そろそろ、かな)
俺は時計を
「あんた、
「あ……、ああ。そうだったな」
俺は熱い紅茶が満たされたカップを静かに置いた。
「
今日、何度目か分からない
「やっぱり坂東なのね。さっきも言ったけど
「ああ。お前の言う通り、関東への玄関で交通の要所でもある。その
あっさりと、さばさばしすぎる態度で、灼は笑って言う。
「朝廷……と、いうより藤原
「いや、私見だが……多分『菅原家』が困ってる
しかし『菅原家』にとって、『菅家廊下』の遺産を坂東まで回収しに行かねばならない。同時に
「まあね。それで菅原
その笑顔で、少し不満そうに切り捨てて言う灼。解答は分かり切っているのに何度も同じ課題が問われる、あからさまに
俺は
「菅原
「えっと……
俺は、灼が
「律令制下、
俺は、カップを取り、紅茶を啜った。
「菅原
しかし、灼は少しばかりの
「『
俺は大きく頷く。
「そう。伝承では
突然、灼がくすくす笑い出した。
「あんたって、小学生の頃から、
「そうだったかな?」
俺は声だけで笑い、幼少の頃も同時に思い出す。俺と灼……
「そういう灼だって。お前が小学五年の時、一人で
灼が頬を赤らめ、唇を
「あ、あれは……。そう、もともと目星を付けてた窪地に
灼は、そのままの姿勢で俺を見る。しかし灼は大きな栗色の瞳を細めた。俺が隠しようもなく笑っていたからである。
俺は再びカップを持ち上げ、紅茶を
「短期間で
そして茨城県
俺は、ひと呼吸入れて、
「これは、あくまで私見だ。
もともと『鉄』の採掘権を持ち、官営製鉄所を任されてる
保証も正確もないので、ただ言うに
「『菅原家の知識』の象徴である『神社』を私欲で動かしたと判断した
「まあ、それだけだったということはないと思うがな。平
俺はカップを
「あ、紅茶を
「もう十分だ。ご飯で腹一杯なのに、これ以上は入らない」
耐熱ポットを持って立ち上がる灼は、悲しいほどに残念な表情を見せる。俺は苦笑で好意を断り、重い腰を上げた。
「もう遅いし……今度こそお
「……うん」
灼の力無い返事に後ろ髪を引かれながら、俺は玄関に向かった。靴を
「平良ァ……」
立ち
「あんた、『部室整理令』に関わってるといっても……会長や
灼は小さな声で俺を責めた。灼自身が平良を待っていること、期待していること、はっきりと痛いほど自覚している。そして自分の元へ来てくれることも。
(平良は、いつもあたしの傍にいてくれる)
俺は振り向き、灼の頭に手を
「そんなことないさ。確かに生徒会とか面倒事が増えてしまったが、
「……うん」
灼は声を押え、短く答えた。まるで壊れることを恐れるように。
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