第四十九話:もう一つの『事実』
※※ 49 ※※
日差しさえも
「元気ないわね。朝ご飯、あまり食べなかったし……。
言うや、灼は俺の腕を引き、
そして
「うん、熱はなさそうね」
安堵の声を
(昨晩は
風呂から上がったあたりから灼の態度が妙によそよそしかった。その時は軽い違和感程度だったが、今から思えばあれは明らかに変だった。俺が異常に気付いたのは電灯を消して暗い部屋の中。
「……平良ァ」
「どうした?」
俺は目を細めて半身を起こした。灼は
「そっちに行っても……いい?」
以前、ベッドに
「今、あたしたち二人だけだね……」
予想外の一言で、激しく強い
両親の帰宅を待ち
心身ともに極限まで疲労した俺は、ノロノロと歩みを進め、大きな
県立東葛山高校の玄関ホール。二年生用の
「おはようさんッ! 平良君」
背後から誰かの腕が伸びてきて、制服
「ゆ、結衣さんッ!?」
正解を引き当て離れようとする俺を、超絶美少女の先輩は、その
しかし別の力強い勢いが俺を引き
「まだ、いらはりましたん? 灼ちゃん。一年生はあっちでっせ」
「脂肪の
小柄で幼い容貌を感じさせないくらい、圧倒的な存在を周囲に
「クックックッ。ラノベの主人公、谷君。
不意に俺の下から低く
冷や汗と嫌な汗を同時にかきながら、苦悩する俺の
(いったい、どうすれば)
この期に
「あ、あの……二人とも。皆さんに迷惑だし、そろそろ……」
まさに進退
「と、
「
男の
「命拾いしはったなァ、灼ちゃん」
「それは、あんたのことじゃないの?」
額を
俺一人、事態に取り残されて、その場で大きく嘆息するのだった。
昼休みになって、
「よう、朝っぱらからリア充全開だったな。むしろ前よりレベルアップしてないか?」
何となく外を眺めていた俺に、男子生徒が声を掛けてきた。
「
言うほど
「『ラブコメ一直線』を走ってるおまえのために、何で俺がモブキャラしなきゃならんのかよ。それより俺に言うことない?」
にやけた自分の顔に親指を立てる
「ああ……。お前の
「そう言う言い方、
俺は廊下を行き来する生徒を注視しつつ教室の周囲を見た。
「まあ、『
と、カバンから弁当箱を取り出して立ち上がった。
「谷。お前には聞いてほしかったんだ。
のそのそと去ろうとした俺は振り向いた。俺は目の前、緊張した声で張り詰めた、しかし不安な色を
が、それもすぐに
「……まあ、いちおう友人だし。話だけは聞いてやるよ」
再び歩き出す俺の後を追う
「どこ行くんだよ?」
「ここじゃ、マズいだろ。別の場所だよ」
俺は、その
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