第四十七話:オタク少女は多くの『歴史事実』を記していた~検証⑩~
※※ 47 ※※
灼は小さな容器に水と酢を同量入れ、
「さて準備は出来たわ。何食べたい?」
得意満面の笑みで俺に
「んじゃ、好物のサーモンで……」
「ちょっと、待ったァ!」
俺の言葉が終わらないうちに、灼はその上に重ねて押してきた。突然『お
「まずは白身とか、
「だってお前……何食べたいって
俺の
「いい?
別に好きなモノ、好きなように
「い、イカで……」
「しみったれてるわね。ここは
本気で困惑顔を見せる灼。『食通気分』の
「ま、真鯛をひとつ」
「あいよッ」
「!! ん……ん旨いッ」
一瞬、言葉を忘れた俺だが、
「えんがわを貰おうかな」
「お? お客さん、
灼まで調子に乗ってきた。俺の皿にはえんがわが
「後は『大将』のおすすめでお願いするよ」
灼がにやりと笑い、
「あんたも、
と、どんどん大皿に盛り始めた。最初にあった痛いほどの緊張が、口の中の幸せによって安堵へ変わる。俺は顔を
「藤原
そして
まあ、
灼は
「へえ……天皇にも信任が厚かったんだね。
意外そうな顔をしながらも声は
「でも、他にも有能で国司を任せられる官僚はいたんじゃない? それだけ天皇の信任が厚いなら、わざわざ
俺はイクラの軍艦巻を、心中で歓喜の声を上げながら口に入れた。
「おまえの言う通り、親王任国の
言うに及ばず全国各地や関東はますます治安が
今度こそ俺は、待ち望んだサーモンの握り寿司を
「
さらに官僚としての能力もあるから年労第一の
「そっかァ! これ以上の人選は確かにないわね」
灼はワサビ
でも、しかし……食べ過ぎると分かってても手が止まらないのだ。
俺は大トロを口に運び、とろける
「通例、国司が入国あるいは出国する際は、
しかし、当時の
灼はキッチンからカウンターへ移り、俺の隣に座った。握り寿司を口に入れ、
「……
――『……つとめて舟に車かき
さっきのあんたの話だと、見送りの人とお互い別れを
俺は緑茶を
「流石だな。ちなみに
「誰よ?」
「平
俺の言葉に、灼が驚きの顔を隠せない。
「
俺は再びイクラの軍艦巻に手を伸ばす。
「
灼の
「『せうとなる人』は菅原氏長者になる菅原
やはり武装集団としての『菅原家』は健在だったのだろう。実際、
灼は嘆息し、緑茶を
「物語の世界に
限りない
「ああ。
灼は
「京都についたらマイホームも買って……姉も兄もいて、楽しく暮らして。危険から家族を守って。そんなお父さんだったのね」
かつて生きていた人間の
「おっ、ウニが
普段は出さない、俺の少し声高な感嘆が響く。灼は切なさを嬉しさに変えて声を
「そ、そう? よかったわ」
俺は、灼の柔らかな笑みに妙な感慨を覚えたが、口の中の幸せがすぐに
「そう言えば、
ある日、
――『
「『
灼は見上げる大きな瞳に確たる答えを示して言った。俺は、
(女子は夢をみる。だから『
会長の言葉が
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