第四十四話:秘めたる『恋』
※※ 44 ※※
昼過ぎて、なお寒風止まぬ
空気は冷たく
俺はその中でも特に生徒が多い部室棟へと向かい、
「早いな」
言って、部室に入った俺を、灼が笑って迎える。
「あ、平良。ここも久しぶりな気分よね」
先に着いていた灼は、万能
箒で塵やほこりを追い、集める灼の前に、俺は
「平良」
「うん?」
訝しげに、短く返事を返す俺。その間にも灼は、集めたゴミを掻き入れていく。
「……今日で、
盛られたゴミを捨てて、俺は言う。
「ああ、
「うん……」
今度は、嘆息交じりに答える灼。今まで見落としていたものを気付かされた。得るものもあったが、同じくらい傷付いた。 恒常的な世界を信じていたのに、変化は必ず来ると思い知らされた。
「まあ、俺たちの『歴史研究部』は守れたわけだが……その、悪い……おまえまで生徒会に巻き込んで。今まで色々と嫌な思いをさせてしまって」
灼は、自分の悲しみや
「そ……そそそ、そんなことないわッ。当然のことをしただけよ!」
突然、灼は無茶苦茶に万能
「お
「お邪魔しますッス」
戸が開き、二人の女子が入ってきて、
「アッキーに平良君、お久しぶりっス。お菓子持ってきたっス」
「あらあら、オザキちゃん。これから
「げッ」
「何が『げッ』なのかしら?」
会議用の長机に広げた、様々なお菓子を
「まあ、いいわ。私もお茶を持ってきたし。お
会長は、油性マジックで『生徒会』と書かれた電気ポットとティーバッグを置く。それが合図かのように、全員が椅子に座った。
お茶とお菓子が全員に配り終わったところで、会長が
「今日集まってもらったのは、特に
「ちょっと、待ってくれッ。灼は
会長は
「そう……谷君は『政治』には
逆に言えば、生徒会に推薦されるということは、その組織は予算配分や部室の使用等、色々な優先権を得る可能性がある。そして『歴史研究部』と密着な関係にあり
会長の挑戦的な瞳を受け止めて、俺は頭を
「なるほど、それでオザキかァ。それだったらお猿さんの方がもっと有能だぞ?」
「ウッキィッー! 平良君、
ポカポカと、無邪気な拳の
「クックックッ。部長の
「部長も
薄く笑みを浮かべる会長は、すぐに顔を引き
「……例のものは持ってきた?」
「一応、持ってきてんけど、ホンマかまへんの?」
結衣さんは
「それは『古代考古学研究部』の部員名簿と収支計算書よ。今後『古代考古学研究部』は『歴史研究部』と
「ウチこそ、部を守り切れへんで……
二人の
「山科さんとは一年の時から一緒で『古代考古学研究部』やったんや。生徒会長になってから『百人一首部』の部長も兼任するようになったんと、後輩が入らへんかったんでウチと
結衣さんが俺の後ろに回って、肩越しに部員名簿を
「ウチと山科さんが一年の時、発掘調査に行った時の写真や。
俺の背中と結衣さんの豊かな胸が重なるように乗り出してきた。長い黒髪が、サラサラと
さり気なく
「やっぱり、平良君はイケズやわァ。一般的には『夏の
結衣さんが強く俺の腕を抱き
俺は小さな
「懐かしいわね。一年の私、確かに
画面の中心で腕を組み、明朗と破顔している男性をそっと
「並木さんと市川さん、ここの卒業生だったんだ。あと
「えッ!? 茂木センセッ」
俺の言葉に反応して、脇から首を突っ込む灼。会長も過去を
「定例会までは私が『歴史研究部』と同調しそうな部や委員会を
「ちょっと待って。あたしたちと同調する部や委員会ってどういう意味?」
立ち上がる会長を、灼が呼び止めた。
「クックックッ。藤川や高橋も、谷君に対抗する推薦者を
いまいち
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