第四十二話:生徒会の暗部
※※ 42 ※※
ようやく追い付いて隣に並びかけた時。
灼が引き戸のガラスを砕きかねない勢いで開け、その衝撃が
「
「勝手に来ただけよッ! あたしも呼ばれた覚えはないしッ」
「生徒会に手を貸そうって言ってんのよッ! 早く未決済書類を渡しなさいッ!」
会長が小首を
「いや……まあ、今朝のヘルプの件を話したのだが――」
俺の発言で、意味もなく灼がふんぞり返る。
「ふ、ふんッ。よくも平良を
とはいえ、せっかく生徒会に恩を売れるのだから、あたしも生徒会を手伝ってあげる。これは純粋な取引よッ!」
灼の長い主張に、会長は同じくらい長く
「言葉の
だから不法行為に基づく損害賠償は発生し得ない……でも、まあいいわ。双月さんが『歴史研究部』の代表として交渉するというのなら、生徒会としても
この時点で、俺は当事者にも関わらず、完全に
「つまり、交渉成立ということね」
不敵に笑う灼を、会長は軽く
「私は前向きに検討すると言ったのよ?」
「は、はァーん……ということは、あんたはつまり、平良との交渉を『善処する』前にコキ使ったということになるわ。これって不法行為にはならないのかしら?」
ズイッと
やがて、会長が肩を
「双月さん、あなたには負けたわ。交渉成立……優遇措置は約束する」
と、
「ただし、二人には生徒会の役員候補として働いてもらうわ」
「役員候補……って何だ?」
「私が二人を次期生徒会役員に
受けて灼が眉根を寄せる。
「あたしの知る限りでは、文化祭後に行われる通常定例会で、各委員会やクラス委員、実績のある部から
「そうなのか?」
俺の質問に、灼は隠さず不満を
「あんたって興味がないことに関しては、とことん無知ね」
「オヤジが公務員だからな。政治には関与しないんだ」
「
しかも
俺と灼が同時に
「生徒会長である私が、貴方たち二人を生徒会役員に
「生徒会に『歴史研究部』の部員を推薦することで、
さらに生徒会が『歴史研究部』の
(そして、俺たちを利用して分裂しかけてる生徒会を立て直し、
俺は
「あんた」
幼い顔立ちに静かな
「もし、あたしたちを
「クックックッ。そんなつもり
執務机に向かい、座り直した会長はメガネを掛け、ノートパソコンのキーボードを
再び、
時々、灼が立ち上がる椅子の音と、会長が給湯器で湯を
「何でここに一年の双月が?」
包み隠せない小声の上級生たちが、
「
「な、何かな?」
会長の
「貴方の総勘定元帳、13億4312万3002円合わないわ。転記ミスの可能性があるから確認して
藤川の顔が無残に
「い、いや、これで三度目だぜ。転記ミスじゃなくて、
「
冷淡に容赦なく告げられた、もう一人の上級生、高橋は
「僕も何回も見直したッ! そもそもクレイジーな『歴史研究部』が途方もない収益を計上したばっかりに、余計な仕事増やしやがってッ」
「数字の大小関係なく、単なる足し算と引き算よ。貴方たちが文化祭決算報告書を作成できないというのなら、二年の雑務を手伝ってもらうわ」
会長の
その駆け去る足音が遠く消え行くのを聞きながら、俺は本日二度目の出来事に心の
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます