第四十一話:夢の『歌』
※※ 41 ※※
やたら長い、桜並木の坂道を登り切ったところに県立東葛山高校の校門がある。
普段の俺ではありえないくらい早朝に、開いたばかりの校門を
「なんだ? 誰もいないじゃん。何だよ、朝から呼び出しといて……」
俺は、会議室によくあるキャスター付きの長机を
「――『
「クックックッ。
言って、給湯室から出て来る女子がいる。生徒会長の山科
「昨晩、急にお願いして悪かったわ。朝礼までにプリントを仕分けして、
会長はテキパキとプリントを仕分けして、長机に並べる。そして、端から一枚ずつ拾い上げ、二つ折りにしてホッチキスで止める。その作業の中ほどで、
「プリントに折り目を入れる時、定規でなぞると効率的よ」
会長が楽にできる方法を示してくれる。初めての手伝いで、要領を得ない俺には有り難かった。
と、俺はホッチキスで
「会長」
「何かしら?」
「昨日、電話で言ってた通り、生徒会の手伝いをすれば『歴史研究部』の存続を優遇する話、間違いないよな?」
会長が小首を
「……
それも束の間、会長は再び作業を再開する。俺はいきなり意外なことを聞かされ、嫌悪な表情で問い
「おいッ! 俺は、昨晩あんたが
言いかけた時、勢い強く扉が開かれる。
「やばいッ、やばいッてェ! ……あれ、会長?」
見識のない女子が一人、室内に
「わあ、ありがとうございますッ! 実は部活の朝練があるんですが、ギリで起きちゃって」
その女子と目が合い、俺は軽く
「何だか作業も大体終わってるみたいだし……あたし、朝練に行きますので失礼します」
女子は、会長に大きくお
「待ちなさい」
足早に出て行こうとする女子を、会長が呼び止めた。
「あなた、三日前『今朝までに終わらせる』って言ってたわよね。頼んでた雑務を
会長の
「そ、それは大会が近くて朝練が厳しいし……『部室整理令』の対象になってるから、頑張って実績作らないといけないし、わざとじゃないです」
「と、同時にあなたは生徒会役員でもあるのよ。それを忘れないで
顔を
「さ、きっきも言ったとおり、早めに朝来て作業します……」
「まあ、いいわ。三度目はないわよ」
答えを聞いて視線を作業の手に落とす会長。
「何なのよッ! あの
恐らく廊下で待機していた他の女子部員たちだろう、口々に
「また、あの会長? ちょっと出来るからって、いつも上から目線なのよねェ」
「そう言えば、チラッと見えたけど、生徒会でない男子が一人いたような」
「ああ……どうせ、弱みか何か
「カワイソーッ」
「谷君のおかげで作業が終わったわ。ありがとう」
およそ3:7の割合で
「大したこと、してないさ」
と、
「ねぇ、谷君」
会長は長机の書類を整理し、自らの荷物を取りに行きがてら、窓から空を眺める。
「貴方の歴史検証、読んだわ。とってもユニークで有意義だった」
「そりゃ、どうも……」
頭を
(美人だけど、人を寄せ付けないオーラがあるんだよなァ)
特に
だが
(不器用なんだな)
不器用といえば、
「会長と式子内親王は似てるな」
俺の言葉に、会長は口を開けて
「私が式子内親王に似てるって初めて言われたわ。せっかく
笑いながら「でも……」と、続ける。
「
味を
状況の説明を要求された俺は、元々隠すつもりもなかったので、出来事の全てを語った。
「何て
聞くや
「おい、ちょ待ッ!?」
その
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