第29話 ルーダン魔王国5
「すっげー、見ろよアズ、夏イベの時よりかなり発展してるぞ」
フォルダンの街が見えてくるにつれケイのテンションがあがっていく。
「いや、俺はベータ勢じゃないから元をしらないんだが……」
街が近づくにつれ行き交う人も増えてきた。エリアボス討伐を聞きつけて見に来た人達も多いようだ。
「夏イベの時は道も舗装されていませんでしたし、今みたいに石造りの建物はごく少数でした。街の規模も広がってる気がしますね」
エフィも含めてみんなベータ勢であり夏イベントにがっつり参加していたらしいが、その発展具合には驚かされているようだ。
「ん、最初はほとんど木造だった。最後の方でもクランハウスは石造りになったけど殆どは木造のままだったはず」
「そうだな、そのクランハウスが残っているかも確認しないといけないな。まずは『ジャバウォック』のクランハウスに向かうけどそれで良いかな?」
「あ、俺は自分とこのクランハウスに報告も兼ねて行ってみます。アズ達の今後の予定はどうなってる?」
ケイのクラン『アーサーと愉快な仲間たち』は夏イベント時はこの街の復興をメインで行っていたらしくそれなりにでかいクランハウスがあるらしい。ちなみにエフィの所属している『
「俺? 俺はクエストを進めるためにも『ロコノア城下街』まで行くつもりだけど……」
「私はアズさんの予定に合わせますよ」
エフィも『ロコノア城下街』行きで確定。
「問題なければ僕達『ジャバウォック』も着いて行きたいと思ってるんだが良いかな?」
「ん、アズはボクのパーティメンバー」
「店長達が着いてきてくれるのであれば心強いです。出発は……流石に明日以降ですけど何時が良いです?」
だんだん薄暗くなってきており、今から向かうのは無謀だろう。
「それなんだけど、明日は攻略クランでも今後の予定についての打ち合わせを行いたいのよね。なので、明日はこの『フォルダンの街』の観光でもしてもらって、明後日出発ということでどう?」
「了解です。明日は
明後日の出発に向けて明日は各自で準備をすることとして解散となった。なお、ログアウト用にはジャバウォックのクランハウスを提供してもらった。
◆ ◇ ◆
「アズと
週末明けの月曜日の昼休み、京と一緒に委員長にワールドクエストの進行状況を伝えていた。
「俺はアズをガードしてただけだからな、まあ、美味しかったな」
「眷属召喚でいっぱい呼ばれた時はどうしようかと思ったけど、おかけでいっぱい食べられたし結果オーライ?」
「は? いや、私はワールドエリアボスの話を聞きたいのであって食べ物の話を聞きたいわけではないんだが……」
困惑する委員長に魔法の効果とワールドエリアボス討伐の顛末を詳しく話す。
「……つまり、アズの魔法は美味しい揚げ物がドロップする魔法だったと……って何よそれ、私なんか山の中を彷徨って野草で飢えを凌いでたっていうのに……」
東へ向かっている委員長は山越えをして湖を目指しているとのことだが何故か辿り着けないと愚痴っていた。
とりあえず、機会があったら合流して唐揚げを食べさせるということで落ち着きはした。なお、お弁当の唐揚げも取られたことを付記しておく。
◆ ◇ ◆
「準備と言っても実際のところ何が必要なんだ?」
喫茶リンドウでのバイトを終えてログインし、エフィと共に『フォルダンの街』をぶらついていた。
「『ロコノオ城下街』までは竜車も走ってるとのことですし、半日かからずに着くらしいので旅の準備は必要ないですよね……」
隣を歩いていたエフィが少し離れ、こっちをじっと見ている。
「そういえばアズさんは初期装備のままでしたよね。珍しい装備なので初期装備には見えませんけど」
「あぁ、持ち込み品扱いだったんだよね。とはいえマントとかは特に普通のものだったけど」
:――――――――――――――――:
名称:うさぎのてぶくろ
説明:角兎の皮で作った手袋。
肉はスタッフがおいしくいただきました。
兎のヘイトおよび
作成者:※※※※※
所有者固定:アズ
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:――――――――――――――――:
名称:魔術師見習いのマント
説明:何の変哲もない魔術師見習いのマント
:――――――――――――――――:
「マントも持ち込み品だったんですね。けど、ごく普通ですね。てぶくろの作成者は相変わらず読めないまま……って説明の『
「ん、あれ、ああ、前は読めなかったところだな。
良くある設定的には魔力の元になるのが魔素といったところか。
「どこかで聞いた気はするんですけど……それこそ店長さんとかに聞いてみれば良いと思いますよ」
「そうだな、店長に聞いとこう。じゃあ新しいマントとかを探しに行くか」
『フォルダンの街』は魔人族が多く、背中の翼を出し入れするための穴の空いたマント等も普通に売っている。
:――――――――――――――――:
名称:初級魔術師のマント
説明:多少の魔法耐性のある魔術師用のマント
:――――――――――――――――:
「アズさん似合ってますよ。あまり見たことなかったけど羽が生えてたんですね」
普段広げていなかった羽を出してパタパタさせてみる。
「ところで、お客さんは魔術師なんですか? この島も昔は魔術師、魔法使いもいっぱいだったって話なんですけどねぇ」
「昔はって今はいないんですか?」
「うーん、いない訳では無いが精霊様が居なくなってしまったからねぇ。あんたらは外の人だからその辺は知らないか――」
昔々、ルーダン魔王国は魔王様の元、精霊樹と精霊様を信仰していた。
そして、魔人族は皆、精霊魔法を扱うことができた。
しかし、
今ここに住んでいる人はその時に出ていかなかったり逃げ遅れた人達の子孫とのことだ。
「――ロコノオも復活したみたいだし、精霊樹も復活するかもねぇ。まあ、その時はまたフォルダンに遊びに来てよ」
ニコニコと手を振る店のおばちゃんに手を振り返したりしつつ、フォルダンの街をまわった。
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