第27話 ルーダン魔王国3
「お、出かけてなかったのか?」
部屋を出てリビングに入ると妹のスイがテーブルに参考書を広げていた。
「今日は午後からの予定。おにいは休憩?」
「ああ、次の街へ進む前に昼食を、と思ってな。パスタでよければスイも食べるか?」
「食べるー! おにい、ありがと」
茹でてレトルトのソースをかけるだけの手抜きであるので一人でも二人でも手間は変わらない。
「で、なんでエビチリパスタなの? いや、美味しいけど……」
スイは出来上がったパスタを納得できないような顔で頬張っている。
「アンメモの中で食べてたら
「あー、そう言えば味覚も再現されてるんだよね。いっぱい食べても太らないなんてスイーツ食べ放題じゃない! うぅ、早く高校生になってアンメモで遊びたい」
「そういえば、高校はどこに決めたんだ?」
スイはかなりのゲーマーであるものの中学三年生であるため高校受験が終わるまでアンメモを始めることができないのだ。
「第一候補は
「花女の知り合いねぇ……、あ、いたわ……」
◆ ◇ ◆
「……ってやり取りを昼飯を食べながらしてた訳で」
「アズさん、妹さんが居たんですね。入学したら後輩ですか、ええ、先輩として教えますよ」
スイのことを離すとエフィが思った以上に前のめりで話に乗ってきていつの間にか顔合わせをすることに決まってしまった。
花女は中高一貫で高校からの編入もあるが、推薦枠の試験情報は外部公開されてはいないが手に入れる事は可能らしいのでお願いする。
「エフィが教えてくれるのなら助かるな。詳しいことはまた後日ってことで」
などとのんびり話をしながら寂れた道をだらりと歩いていた。
というのも、この合同パーティは攻略クランの精鋭で構成されている。つまり、出てくるモンスターは瞬殺されており、初心者かつキーパーソンとして護衛対象にまでなってしまった俺の周辺は暇なのだ。
「昼休憩の間にトンネルの出口の休憩所が村扱いまで拡張されたからかこの辺のモンスターも弱体化したみたいだよな。エリアボスが居なければフォルダンの街まで今日中にたどり着くんじゃないか?」
ケイによると『フォルダンの街』とは夏イベントの開始地点となった海沿いの村らしい。最初はほとんど何もなかったが夏イベントの終了時には『街』にまで発展したとのことだ。
もう柵を立てるのは嫌だ……、と遠い目をしていたのは聞かなかったことにした。
「しかし、せっかくケイがエリアボスフラグを立てたのに本当に出ないな」
「おい、人をフラグ製造機みたいに言うな。フラグを立てまくってるのはアズだろ」
「エリアボスは出ないか弱体化してる可能性が高いかな」
店長がエリアボスについて判明している条件を挙げた。
エリアボスの出現条件としては新たなエリアへの関門となる場合、および、王都ラナとコトの街の様に行き来できるようになる場合だ。
今回の場合、フォルダンの街はおそらく夏イベで既知の領域扱いとなるし、ワールドエリアボスも居たことからエリアボスは居ないと思われる。
また、今回のメンバーには夏イベントの際のエリアボス戦に参加したものも多い。エリアボスは一度倒されると戦闘回避、もしくは、弱体化した状態での戦闘が可能となる。
「ん、あれは美味しかったからできれば出て欲しい」
「あのエリアボスって美味しいんですか?」
夏イベでのエリアボス戦はジャバウォックのメンバーは全員参加している。しかし、エフィとケイはベータメンバーで攻略クランに所属はしているがエリアボス戦には参加できていないとのことだ。
「
「え、アズさん、それを聞いちゃうんだ……」
エフィとケイは知っているらしく、微妙な表情をしている。
「ん、
「タコはともかく、蜘蛛って美味しいんですか?」
「本物のクモは食べたこと無いから知らないけど、
「アズの魔法によるドロップアイテムのエビの唐揚げは美味しかったからなぁ」
ワールドエリアボス戦は眷属も多く召喚されており、ドロップアイテムも大量だった。戦勝祝でかなり消費したが、まだまだ残っているぐらいのエビの唐揚げがインベントリに入っている。
「やっぱり一家に一台アズさんですよね。クレンの町でも重宝されてましたけど、あの魔法だけでも一財産築けそうです」
「確かに屋台とか出せば食事事情がイマイチな今なら稼げそうではあるけど、俺がやりたいのは
とは言え、金策は必要だしドロップアイテムが文字通り美味しいのは悪くない。
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