第26話 ルーダン魔王国2
―― ミッション:魔人族の隠れ里
ミッションをクリアしました。
―― プレイヤーがワールドクエストのミッションをクリアしました。
これによりワールドクエスト『精霊樹の復活』が進行します。
「クリア条件は魔人族の里で過ごすことかいな?」
「それと、島への通り道となるこの祠に到達することだろうな」
厳重に封印されている祠の外装が剥がさせれていく前で情報クラン『ジャバウォック』のクランマスターこと店長と検証クラン『ライブラリ』副クランマスター、センセーが何やら話し込んでいる。
他の『ライブラリ』のメンバーも興味津津で解体作業を見守っている。
「この祠が島への抜け道なんですよね?」
「そう伝え聞いてはおりますが、中が実際にどうなっているかはわかりません」
祠の更に先には海底洞窟へと続く開かずの扉があるらしい。
ただし、
「これで祠に入れます!」
「さて、開かずの扉が開くか見に行きましょうか」
皆で村長さんの後を着いて祠の中の階段を降りていく。
「これは、思ってたよりでかい扉だな」
「確かに。これ、普通に開けるの大変じゃないか?」
階段を降りた先には巨大な扉があった。
「元々は竜車が行き来する街道だったと聞いています。もっとも我々はこの先がどうなっているのかは知らないですがね」
村長は感慨深く、そして自嘲気味に扉を見上げていた。
「それならこの大きさも納得ですね」
「ほな、開けてみよか! 誰がいく?」
センセーが大扉の前で振り返って訊く。
「アズ君と言いたいところだけど、この大きさと開けた後の危険性を考えると……」
「俺らが開けるのが無難だろうな。念の為他の連中は下がっててくれ」
マッチョな集団、『ころっせお』のパーティが前に出て、センセーは横にどいた。
「全員戦闘準備、特に盾役はすぐに動けるようにしてくれ。村長とアズ君は一番後ろまで下がって、何かあったら退避」
店長の声に全員が戦闘モードになる。
「それじゃあいくぜ、せーの!」
大扉に取り付いた『ころっせお』の面々が筋肉を盛り上げて押しこむ。
「……」
「開きませんね……」
「さて、封印が解けてないんか、開けるための鍵があるんかやな……」
「それじゃあ、鍵になりそうなアズ君にお願いしようか」
「アズ、何かあったら俺が割り込むよ」
ケイが大盾を手に横に並んだ。
「えー、みんなしてハードル上げるのは勘弁してくださいよ」
注目が集まる中、仕方なく大扉の前に立つ。
近くで見ると薄っすらと表面が光っているように思える。
となると、魔法か魔力が鍵だろう。
両手に魔力を纏わせて扉に手をかける。
―― パキン!
微かな破壊音と共にゆっくりと扉が開きだした。
◆ ◇ ◆
扉の先は緩やかな下りになっており、先を見通すことはできなかった。
「扉の先にモンスターは見えないな。奥の方はわからないが入っても問題はなさそうだ」
店長や検証クランのメンバーが入口付近を確認して結論づける。
「早速向かいますかな?」
「そやな、時間は有限や。何人かはここで調べもんするために残るけど他は進むで良いんやろ?」
魔人族の隠れ里に残るメンバーとエリアボス戦のみに参加のメンバーを残し奥に進むことになった。
また、入れ替わるように魔人族の隠れ里からも先遣隊が選ばれた。
少し薄暗い洞窟内に水滴の落ちる音が響く。
「なあ、アズ、やっぱここダンジョンだよな」
隊列を組み、警戒しながら進んでいるがモンスターの姿は見えない。
ただ、光源がないにもかかわらず視界が確保されていることからダンジョンであると思われる。
「多分、ダンジョンかな。扉を抜ける時にも変な感じがしたし、あれが多分ダンジョンの境界だと思う」
「そうなんですか? 私は全然気づかなかったです」
「ほー、アズ君は分かったんや。ダンジョン内は異世界とか異空間という説があってな、少なくとも中と外では切り離されていると考えられててな……」
うっかりセンセーに聞いたのは間違いだったかもしれない……
しかし、モンスターを見かけないと言え、まっすぐ歩くだけの洞窟の中がセンセーの話だけで終わってしまうとは思っても見なかった。
「おぉー、登り坂の先に陽の光が見える……」
一緒に延々と話、いや、講義を聞かされていたケイが遠い目をしている。
俺はと言えば魔法に関する考察等、実に有意義な時間を過ごせて大満足だ。
◆ ◇ ◆
陽の光が眩しい。目の前には広い草原に眩しく輝く海、そして、鬱蒼とした山が続いていた。
「「「おぉーーっ!!」」」
―― プレイヤーがルーダン魔王国に到達しました。
これによりワールドクエスト『精霊樹の復活』が進行します。
ワールドクエストのアナウンスも洞窟を抜けて興奮に包まれているメンバーへは届いていない。
「ところで銀ちゃん、ここって夏イベの時の島だと思う?」
「太陽の位置や植生、ここから見える景色。どれをとっても、間違いなく夏イベの時の島、『名を失った島』だな」
あちこち見回っていた店長が断言した。
「なあ、帽子屋、ここって俺が攻略しようとしていたダンジョンってことだよな?」
『ころっせお』のクランマスターでもあるマッスルさんが怪訝な顔で今でてきた洞窟を覗き込んでいる。
「ん? この島に確実に存在しているダンジョンは三つ。そのうち、島の中央と南のダンジョンは確認できている。まあ、位置的にはここが北のダンジョンだろうなぁ」
「しかし、全くダンジョンっぽくなかったよな。モンスターが一匹もでなかったし、闘いがいがあるかないか以前の問題だぞ」
「あー、それは、多分二層目からモンスターが出るんじゃないか?」
「に、二層目っ?!」
「あれれぇーっ、マッスル、お前、もしかして気づいてなかった感じか? 途中に怪しそうな場所が一杯あっただろ?」
店長がマッスルさんを煽っている。
「なっ、マジかよ。いや、ほら、俺は斥候職じゃないし……」
「アズさん気づきました?」
エフィも首をかしげている。
「明確に進める道はなさそうだったけど、なんだか違和感があったとこは何回か通ったかな」
「アズはわかったんだ。俺は気づかなかったな」
「多分殆どの人は気づいてないよ。今回は洞窟を抜けるのが優先だったしね。ともかく、ここで一旦今後の方針を立てる会議を行うらしいので、皆は一旦休憩ね」
洞窟の出口近くにはいつの間にか簡易拠点が作られていた。
ちょっと早いが昼飯を食べにログアウトを行うことにしよう。
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