ルーダン魔王国
第25話 ルーダン魔王国
「囲まれてるわね。今回は私が交渉しましょうか」
白い鎧に身を包み、槍を手に持った長身の女性が前に出る。
「あ、団長!」
攻略クランの一つ『
エフィはこの女性だけで構成されているクランに属している。
「あら、エフィじゃない。えーと、こんな時どう言えば良いんでしたか……。『リア充爆発しろ』?」
「はぁっ?! 団長、何言ってるんですか? 副団長に毒されてません?」
「あ、えーと、エフィ、とりあえず、もう大丈夫だから離してもらえるか?」
そう言えば魔法を放って倒れかけてからずっとエフィに支えてもらっていたのだった。
「ふぇっ、あ、あぁ、あーっ」
エフィが真っ赤になった顔を押さえてうずくまった。
「さて、そこの林の中の方々、できれば話し合いをしたいのだが出てきては頂けないだろうか?」
団長は良く通る声で林の中へと呼びかけた。
「すまない、そんなに警戒しないでくれ。我々は貴方がたに敵対する意志はない」
両手を上げて木の陰から複数の人達が現れる。一部鎧らしき装備を身にまとっている者もいるが、他はごく普通の布の服に見える。
「
現れた人々は皆頭に角が生えていた。また、背中に羽や尻尾を生やしている人々もいる。
プレイヤーとしての魔人は増えたがそれ以外の魔人をラナ王国ではほとんど見かけることがない。
「うむ、我々は近くの魔人族の里に住んでいる者だ。ところで、そちらの魔人族の方を紹介して頂きたいのですが?」
現れた魔人族の集団にじっと見られている。だが、敵意は感じられない。
「えーと、
「アズ様でしたか。先ほどの
どうやらエリアボスとの戦闘も見られていたようだ。
「アズ様って、アズでいいです、アズで」
「いえ、精霊様を使役されている方を呼び捨てにはできません」
「
守護者と聞いて団長が慌てている。
俺達はワールドエリアボスとして倒すべき相手と認識していたが、現地の人にとっての認識が異なっていた場合、最悪戦闘になりかねない。
「ああ、心配しなくても大丈夫です。ですが、詳しい話は里に戻って村長に聞いて頂くため、里までお越しください」
―― ミッション:魔人族の隠れ里
ミッションが開始されました。
―― プレイヤーがワールドクエストのミッションを開始しました。
これによりワールドクエスト『精霊樹の復活』が進行します。
「えっ、団長、クエスト開始しました?」
ミッションの開始とワールドクエストの進行がアナウンスされ、皆が団長の方を見る。
「いや、特に選択肢は出ずに開始されたが?」
エフィに聞かれてログを遡って見ているらしき団長は首を横にふる。
「アズ、お前か?」
ケイがこっちを見た。
「俺の方も出てないですよ……? 強制で開始では?」
一応ログを見るが特に選択肢は出ていない。
「それでは皆様、里の方にご案内致します」
言われるがままに海岸沿いの細い道をたどって魔人族の隠れ里に向かうのだった。
◆ ◇ ◆
「……今から五、六百年前、ルーダン魔王国は災禍に襲われた」
その原因ははっきりとは分かっていない。龍脈の枯渇や暴走とも言われたがルーダン魔王国の滅亡は避けられなかった。
「魔王様は住民の殆どを国外へ脱出させた。ここに居るのは最後に島から出てきたものの末裔なのです」
里では魔人族が
俺達のパーティーと各パーティリーダーは村長の話を聞くべく村長の家に集まっている。
「ふむ、我々はその島、ルーダン魔王国を目指しているのですが、現在、島に渡ることは出来ないんですか?」
「島からは海底洞窟を経由してこちらに来たと言われています。そして、その洞窟を封印するために
村長さんの表情が曇る。
「あれっ、やっぱり倒しちゃまずかったんじゃ……?」
「いえ、我々の祖先は元々島を出ることを拒否し、魔王様と共に島へ残ろうとしたのです。しかし、島を追い出され守護者により帰ることができなくなったのです。魔王様曰く『
「あ、それなら良かったです……?」
本当に良かったのかは疑問が残るが里の皆さんが納得しているなら良しとしよう。
「そして、島への海底洞窟の入口の封印が解けていることも確認しました。明日の朝にでもご案内しますので、今日のところは宴に参加してください」
「おぉ、それが良い。ほら、帽子屋にセンセーも話は後だ後。宴に行くぞ!」
「マッスルはただ飲みたいだけだろ。まあ、宴の席でも話は色々聞けるだろうから行くか」
「村長はんにはまだ色々話を聞いたり、資料を見せて貰ったりしたいんやけどなぁ」
『ころっせお』のクランマスター、マッスルさんに店長とセンセーが引きづられていったことで村長との会合は終了となった。
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