第13話 最前線2
―― ミッション:精霊樹を探そう
「『精霊樹を探そう』か……。確かにワールドクエスト『精霊樹の復活』のトリガーとなってるミッションで間違いないな」
俺のクエストメニューにはワールドクエストの画面にミッションが表示されているが店長達にミッションは表示されていないらしい。
「ミッションもだが、その発生のトリガーとなった話も重要だな。西の海にある島『ルーダン魔王国』と魔族の精霊樹信仰に魔法か……」
「『ルーダン魔王国』って夏イベントの時の島ですよね?」
「ん、あそこの正式名は『
どうやらエフィさんに眠茶さんもルーダン魔王国のことを知っているらしい。
「俺の友人もルーダン魔王国のこと知ってましたけど、どこにあるかわかってるんですか?」
京の奴は知っていたが、委員長は知らなかった。
「おっ、アズ君の友人は結構な情報通かな。公式にはその名前は出てないから、プレイヤーの配信を見ていたか、それなりの情報網がないと知らない筈だよ」
「あ、私はクランメンバーから聞きました」
実はエフィさんもベータプレイヤーで、正式サービスで実装された
なお、『
「それで、ルーダン魔王国だけど大体の位置の予測はできている。むしろ、今のアズ君の話を聞いて間違いないと思ったよ」
「本当ですか!」
「ああ、おそらくはこの川を辿った先、そこには海が広がっているんだが、そこから遠目に見える島がある」
「それがルーダン魔王国ですか?」
意外と近いところにあった。
「夏イベントの時の予想でもコトの街からそれほど離れたところではないと考えられていたんだ。時差や植生、気候や温度、いろんな条件に差がなかったからね」
「えっ、そんなところで分かるもんなんですか? ゲームですよね?」
時差とか気候と言われてもアンメモはそんなところまで作り込まれているんだろうか?
「アンメモに関してはゲームという概念は捨てたほうが良いかな。わかっている範囲でも時差や気候、植生の差が観測されている。ゲームと言うよりは惑星シミュレーターと呼んだほうがいいかもしれない」
そういえばここに来るのに山を抜けてきたが
「とりあえず、ルーダン魔王国と思われる島へ行くことについては僕達も協力しよう。というか、この最前線にいる攻略組の方がアズ君達に協力したがると思うよ。なにせワールドクエストのキーパーソンだからね」
「あ、ありがとうございます。是非お願いします」
この最前線の現在の状況としては川沿いに海に向かうか、川を横切って西に向かうからしい。
「ルーダン魔王国行きはこの後のクラマス会議でも話し合うとして、もう一つ気になる事があるんだよね」
テーブルをトントンと指でつつきながら店長は何やら考え込んでいる。
「ん、店長は何が気になってる?」
「ミッションの発動条件かな。ウチの双子もだけど何人かは王立図書館に入ってるんだよね。ほら、ライブラリの連中とかはそれこそ入り浸ってたのにミッションは始まってない。つまり、アズ君が踏んだ条件があるはずなんだ」
「ん、図書館の司書との好感度とか?」
「は?! 何ですかそれ! アンメモってギャルゲーですか? アズさんはハーレム系主人公ですか?!」
何故かエフィさんがキレ気味だ。
「その可能性もあるか」
「いや、ギャルゲーじゃないでしょ!」
店長の言葉にエフィさんの目が厳しくなった。
「ギャルゲーじゃないけど、好感度は普通にあるぞ」
「えっ?! そうなんですか?」
「好感度というか、アンメモのNPCはプレイヤーと同じく生きていると考えて接した方がいい」
「ん、嫌われて買い物が出来なくなったプレイヤーもいる」
「つまりはゲームのNPCと思わず異国の住人として考えてた方が良いってことですね」
「まあ、好感度は置いておいて図書館で他に見つけた物とか無かったかい?」
「……あっ!」
すっかり忘れていたアイテムがあった。
「何か心当たりかあったようだね」
店長の言葉に仕舞っていた黒い
「栞?かな、見ても良いかい?」
「ええ、ただの栞ですけど」
栞を手にした店長は明かりに透かすように表、裏と数回確認して、エフィさんに渡した。
「エフィさんなら読める?」
「え?! 私ですか? というか『読める』?」
「へ? 無地じゃ無かったですか?」
取り出したのは黒に金の縁取りをした無地の栞だった筈だ。
「え~と、『ᛃ᛫ᛓᚩᚬᚳᚥᛂ』って文字はわからなくもないですけど、意味はわかりませんよ」
「あ、やっぱり文字はわかるんだ」
「ん、さすがは
三人は何か書かれているという栞を覗きこんでいる。
「ちょっと、それ無地でしたよね?」
「いえ、意味はわかりませんけど、ルーン文字で『ᛃ᛫ᛓᚩᚬᚳᚥᛂ』と書いてありますよ?」
「ゲームとかだとエルフがルーン文字ぽいのを使ってたりするからエフィさんわかるかなと渡したわけだ。ほら、アズ君も確認して」
店長から返された栞を手に取る。
「さっき見た時は裏表とも無地だったんですけど……」
受け取った栞には、やはり何も書かれてはいない。
首をかしげつつ裏返した……
「あれ? 書いてますね。『つめにひをともす』……、あ、『爪に火を点す』か!」
―― シュボッ!
栞を持つ手の指先に火が点いた……
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