金髪碧眼ノ陰陽師~「四大元素魔法を理解できない落ちこぼれが!」と追放された私ですが流れ着いたジパングで五行とコメと美丈夫に出会って『いとおかし』でして、戻って来いと言われましても『いととおし』~
第15話 グロンブーツという王国の崩壊、いとあし・その一★
第15話 グロンブーツという王国の崩壊、いとあし・その一★
【アレク王子視点】
「みんな、おはよう」
「「「「「おはようございます、アレク様」」」」」
爽やかな朝だ。
少し冷たいくらいの空気が心地いい。
あの口やかましいヴィオラを追放して一か月が経った。
ヴィオラがいると大変だった。
会う度に、頭の痛くなるような政治に関する話をされるし、私の普段の生活を使用人たちから聞き注意してくる。
お陰で、ヴィオラがいた頃は早起きして、勉強や訓練をしている振りをしなければいけなかった。
だが、今は自由だ。
ヴィオラは居なくなった。
本当は、殺してしまいたかったのだが、殺した時の呪いを恐れ、監視をつけるだけとなった。
あの一筋の黒髪が、ヤツの弱点でありながら、ヤツを守る切り札となってしまった。
しかも、監視の目を逃れどこかへ行ってしまったらしい。
まあ、だが、グロンブーツ王国に帰ってくることはないだろう。
みんな、ヤツの事を疎ましく感じていたのだから。
なんせ家族にも嫌われていた女だ。
父親にも、妹にも嫌われていた。
そうだ。今日はアリアの元へ行こう。
姉に似て美形で金髪碧眼だが、黒髪がなく、そして、私を認めてくれるアリア。
ヴィオラからアリアに婚約を変えることが出来て本当によかった。
私は、午後からの予定を変更し、ディフォルツァ家へと向かうべく仕事に向かう。
一か月も前であれば、ヴィオラが態々書類を見返して、私をしかり、修正をさせていた。
だが、もうヴィオラはいない。
あれからの方が順調だ。
配下の者達は、私に対して笑顔を向けてくれることが増えた。
ヴィオラがいる時は何度も直させたり、却下していた為に、曖昧な笑顔を浮かべる者が多かった。全ては信頼が大事だというのにヴィオラは何も分かっていなかった。
仕事を適度に終わらせ、ディフォルツァ家へ向かう。
「アレク王子、ようこそおいで下さいました!」
美しく可憐なアリアがこちらへと駆け寄ってくる。
可愛い奴だ。ヴィオラとは違う。
「やあ、私のかわいい恋人。元気だったかい?」
「ええ、でも、アレク王子に会いたくて、ずっとあなたの事を考えていました」
なんて可愛い娘なのだろう。ヴィオラなら
『ありがとうございます、王子。まあ、それは置いといて、グロンブーツ王国の食糧事情ですが……』
等と言ってきたに違いない。
「ロレンツは元気かい?」
「お父様なら、こちらに来られているはずです」
「アレク王子!」
ロレンツがやってくる。
ロレンツとはヴィオラを追い出したい者同士、とても気が合う私にとっては義父となるが、親友とも言えた。
「ロレンツ、調子はどうだ?」
「は。まあまあ、ですかな」
歯切れの悪い返事をする。が、それもまた彼の愛嬌だ。
「まあまあ、とはどういうことだ? 私とお前の中だ。腹を割って話そう」
「は。それが、最近になって商人どもの動きが悪いのです。ヴィオラが出張っていたせいか、私に変わって戸惑っている者も多く、まったく融通が利かない連中です。ですが、知っての通りディフォルツァ家は今色んな事業に手を伸ばしているので……多少入用でして……」
「分かった。父上になんとかしていただけるよう進言しよう」
「流石、アレク王子! ありがとうございます!」
「かまわんさ。全く、こういったスムーズなやりとりもあの女がいては滞っていたからな」
ヴィオラは、せっかちで話を早く進めたがる割には、確認が多かった。
「全くです。商人もあの女に影響を受けたのか、遅い遅い。しかも、魔物が増えたから料金を追加して欲しいなどと言ってくる始末なのです」
「ほう、魔物が……急に?」
「ええ、馬鹿な話です。
「それもまた急にか? 馬鹿馬鹿しい」
「全くです。優秀な冒険者がいなくなったのは、鉄仮面の冒険者がいなくなったせいだとかそんな下らぬ噂も流れているようです。全く、人々は娯楽に飢えるとすぐにそういう噂に走りたがる」
全く下らない。ヴィオラはそういう噂さえも確認したがっていた。
そういえば、その鉄仮面の冒険者について興味を持っていたな……全くもって下らない。
「グロンブーツ王国は、今このあたりで最も勢いのある王国として注目されている。もし仮に冒険者達が此処を離れようとしているならば、彼らの目もあの女の髪のように黒く濁っているのではないか」
「まったく、その通りですな」
やはりロレンツとは気が合う。
「もう男同士で盛り上がってばかりいないで、アレク様、私とお庭でゆっくり過ごしましょ」
アリアはその柔らかい身体を押し付けながら私の気を惹こうとする。
まったく可愛い娘だ。
「そうだな……じゃあ、アリア。庭で私たちの明るい未来について話そうじゃないか」
私はロレンツに見送られながらアリアを抱き寄せて庭へと向かう。
咲き誇る花々が私たちを祝福してくれるようだった。
だけど、私は勘違いをしていたのかもしれない。
その美しい花咲く庭と同じく、国の栄華も勝手に続いていくと。
そして、分かっていなかった。
あの女の手がどれだけ加えられていたのかを。
私は、気付いていなかった。
グロンブーツ王国という花が枯れかけているというその兆しに。
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