第16話 シオ-ムスビを携えた依頼《クエスト》攻略、いとめづらし

「お、おはようございます! ヴィオラ様!


 翌朝、私は、ヨーリ、ドウランさんを連れて冒険者ギルドにやってきたのですが、入って早々、仰々しく迎えられてしまいました。

 私に声を掛けたのは、このツルバミ支部では確か、四番目位の地位の方でしたかね。

 イガロ含めて上から三人は、自宅謹慎をさせています。

 ゲンブ様のお家の力を借りて監視付ではありますが。


 確か、ケインさんと仰いましたかね。

 金色の髪は短く切りそろえられていたスッキリしており、気弱そうではありますが真面目な印象。

 私がにっこり微笑むと、彼も引き攣らせながらも微笑んだので、口を開きます。


「私などのお迎えに人を割いていただいてありがとうございます。ですが、もっと重要視することがあるのでは?」


 そう言うとケインさんは顔を大きく引き攣らせ、


「は、はいぃいいいい! し、失礼しました! 何かあればお呼びくださいぃいい!」


 そう叫びながら奥へと駆けていき、他の職員の皆さんも慌てたようにお仕事に戻っていかれました。


「おおー、怖いねえ」


 ドウランさんが心底おかしそうに笑いながら仰います。


「このギルドはトップが揃っていない状況で、腐敗も進んでいました。立て直すには時間がかかります。私如きに使うなんて勿体ないですわ」

「いやあ、お嬢ちゃんは気持ちがいいねえ。俺はやりやすくて有難い。話は手っ取り早いのが一番だ。流れをわざわざ悪くするのは、気持ちが悪くてなあ」

「同感です」


 聞けば聞くほど五行陰陽術は自分に合っているなと感じます。

 ドウランさんが面倒くさがりという印象なのも、わざわざかける手間を省きたいのでしょう。


「無駄でいいのは、釣りと酒くらいだな」

「趣味は大切ですわ。むしろ、自身の好きな事をする為に無駄な仕事の効率化は重要ですもの」

「ますます気が合うなあ。ちなみにお嬢ちゃんの趣味は?」

「格闘技ですね」

「……悪い。それには付き合いたくねえわ」


 そんな事を話しながら受付へと向かって行きます。

 昨日の話は伝わっているようで、私たちが進んでいくと道が空けられて行きます。


「楽でいいなあ」

「まあ、そうですね。昨日のように下手に絡まれるよりマシです」


 昨日はさっと見た程度ですが、ジパング風の服装の方が3割、外の国が7割といったところでしょうか。


 昨日の騒ぎはあったものの、依頼は沢山あるのでしょう。賑わっています。

 そして、私たちが受付に辿り着くと、栗毛の短い髪の女性が笑顔で待ち構えていらっしゃいました。


「ようこそ、冒険者ギルド・ツルバミ支部へ! ヴィオラ様!」


 受付嬢の元気な声に思わず笑みが零れます。


「こんにちは、こちらでの、冒険者登録を行いたいのですが」

「かしこまりました。では、ご記入をお願い出来ますか? こちらで行いましょうか?」

「自分で」


 彼女の対応は非常にテキパキしていて好感が持てますね。

 私が必要事項を記入していくと、彼女が話しかけてきます。


「昨日は本当にありがとうございました。イガロの横暴っぷりには皆辟易しておりまして……」

「追い出すことは出来なかったのですか?」

「それが……このツルバミ支部、いえ、ジパングの冒険者ギルドは、その、言いにくい話ですが掃きだめのような扱いでして」

「まあ、貴女のような聡明そうな方でも?」

「まあ。ありがとうございます。正直申しますと、私、前の職場でもイガロのような男を殴ってしまって言わば左遷されたのです。なので、まあ、ある意味問題児の集まりのような所でして。後がない人間達をいびって甘い汁を啜ろうというイガロが連れて来た人材なんです」


 そこまで一気に言い切ると、彼女は書き終えた書類を最終確認しながら呟きます。


「なので、イガロがいなくなって、職員の半分以上は清々しています。ケイン支部長代理は、気弱ではありますが規則を重んじる方なので、きっとヴィオラ様の敵にはならないはずです。そして、私含め多くの職員が、貴女が来られたことを歓迎しております」


 書類に魔力印をつき、ニコリと微笑みこちらを見ると、


「申し遅れました。私はイリアと申します。改めて、冒険者ギルド・ツルバミ支部へようこそ。我々は貴女を歓迎します。天職【陰陽師】を持つ冒険者、ヴィオラ様」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る