45年目
ユウ君の生活は、大きく変わりました。
夕方に目を覚ますと、部屋の前に置かれた晩ごはんを食べます。
無料漫画サイトと無料ブラウザゲームという、いつもと同じローテーションで時間を過ごし、深夜になりお腹が空いたなと思ったら、ドアから顔を出して、食べ終わった晩ご飯の食器と入れ替わりに置かれているお弁当を食べます。
朝になると、部屋の前には朝ごはんが置かれているので、それを食べます。
相変わらずの無職引きこもり生活ですが、なんと、三食食べています。
なんということでしょうか。
理由は単純。
お父さんがいなくなり、お母さんだけになったので、強く出たのです。
お母さんはあまりユウ君に強く言わず、むしろ甘いので、そこに付け込んだんです。
相変わらずゲスいね、ユウ君。
しかも、一か月5,000円のお小遣い付きです。
45歳にお小遣いって、ホント⁉
ユウ君、本当に期待を裏切らないよ…。
ユウ君の傍若無人ぶりはかなりのものです。
お母さんはいつも決まった時間にごはんをもってきてくれます。
しかし、ゲームに夢中になって朝ごはんのおみそ汁が冷めてしまうと、ユウ君は床をドン!と踏みます。
お、ニート必殺、かの有名な床ドンだね。
年齢的に、もうニートじゃなくてただの無職だけど。
床ドンすると、お母さんがやってきて、ごはんを温め直します。
もちろん、感謝の言葉なんてかけません。
う~~ん、ナイスクズ!
またあるとき、お仕事から帰ってきたお母さんが、部屋の前で声をかけたことがありました。
「ねぇ、ユウ。たまには外に出てみない?ほら、あんまり部屋に籠りっぱなし――」
「うるせぇなっ」
壁をドン!と叩いて怒り、威嚇します。
お父さんがいたころには絶対にやらなかったことです。
天敵がいない外来種みたいに態度が大きいです。
「でもね、ユウ――」
それでも諦めずに声をかけますが、
「勝手に産んだくせに、エラそうにすんじゃねぇって。生産者責任取れよ」
「ユウ、そんなこと――」
「俺だって好き好んでこんなとこに生まれたわけじゃねぇんだよ!」
「――っ」
お母さん、息をのんで、一階に降りていきました。
リビングで、お母さんは泣いていました。
自分はどこで間違えてしまったんだろうと、かつてお父さんと一緒に悩んでいましたが、今はただひとり、テーブルで頭を抱えてすすり泣いています。
ユウ、ごめんね。
お母さん、あなたの育て方を間違えたのかもしれない。
ずっと、ずっと、後悔の念をつぶやいていました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます