42年目
今日も今日とて、ユウ君の日常は変わりません。
去年は家を追い出されたものの、ちゃっかり戻って来て、部屋に閉じこもりました。
追い出し業者は、10万円以下のものはただ外に引っ張り出すだけだし、施設に入れるものは数百万円以上するので、お父さんとお母さんはもう頼ることをやめました。
もしお金があったとしても、施設の中には命に関わる危ない場所もあると聞いたので、特にお母さんがためらい、反対しました。
結果、ユウ君は勝った、と思いました。
一日三食のご飯は出してもらえなくなりましたが、お父さんとお母さんが留守の間に二階から一階に降りて、食べられるものを持ってくるようになりました。
まるでコソ泥だね。
もう、生活習慣もメチャクチャです。
基本、眠くなったら寝て、起きたらベッドの上でスマホか、のっそりと起きてパソコンに向かうかです。
「ふぁ~ぁ~ぁ~……」
ちょうど、ユウ君が目を覚ましました。
昼過ぎくらいに起きて、お腹空いたので、まずは物音を伺います。
家の外で話し声。
窓からそっと覗き込むと、家の前でお母さんがご近所さんとお話をしています。
ガレージに車がないので、お父さんも出かけているのがわかります。
そっと部屋を出て、一階に下ります。
階段が軋まないように、そ~っと。
リビングのドアを開けて、袋に入った食パンを見つけました。
8枚切りと書いてあって、開封済みの中身は6枚です。
冷蔵庫から、使いかけの――っていうかほぼなくなりかけのマーガリンを見つけたので、それも持っていきます。
冷蔵庫のドアポケットに、お茶のペットボトルがあったので、それも忘れずに。
本当は炭酸飲料が欲しいのですが、この際贅沢は言いません。
食料を抱えたまま、そ~っと階段を上ります。
そして、午後2時を迎えようという時刻になって、今日初めてのご飯です。
マーガリンの蓋を開けて、人差指ですくいとって食パンに塗ります。
塗った後は人差指をぺろり、っていうか、ちゅっちゅと吸って、上着で
くちゃくちゃ噛みながら、まだ動くんだなと感心するレベルに使い古されたパソコンの電源を入れます。10年選手をとうに超えましたが、まだまだ現役です。
起き抜けに掲示板を巡回し、ブラウザの無料ゲームのスタミナとデイリーを消費し、無料漫画サイトの一日無料枠で三本の作品を読みます。
そうこうしているうちに2時間が経過し、適当に動画サイトを巡回し、さらに1時間を過ごすと、おもむろに違法動画サイトに接続をかけて、エッチな動画を探します。
まぁ、男のサガなのでしょうがないにしても……。
ユウ君が吟味して探し出したのは、お姉さん系でもお仕事系でも妹系でも熟女系でもコスプレ系でもなく、アニメでした。
つるぺたです。
ちっちゃい子がいたずらされて、おじさんと合体しています。
ユウ君の最近のお気に入りは、こういうロリ系です。
女の人が怖くてしょうがなくなってしまったからです。
同窓会で、アルバイト先で、嫌な思いをしたので、もう同年代も、年下も、怖くなっちゃいました。
なので、自分のことを変な目で見そうにない、いざとなったら腕力でどうにでもなる、いたいけな少女に劣情を催すようになってしまいました。
室内ではぁはぁしながら、ぎゅって握った右手をせっせと動かして、20秒くらいで慌ててティッシュを取り出します。
出すものを出すと、今度はまた掲示板を巡回。
「この国、終わってんな。マジ政治家とかクソだわ」
という風に、終わっているクソなユウ君は愚痴をこぼし、夜中になって無料オンラインゲームにログインして、そのまま寝落ちするのでした。
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