36年目
去年の同窓会を経て、ユウ君は余計に引きこもりが激しくなりました。
具体的には、平日の日中に1階に行くことがほぼなくなりました。
この半年、同級生の無邪気な笑顔がよみがえる度に、怒りと悔しさと情けなさが込み上げてきて、怒ったり落ち込んだりと、傍から見ているとまぁ忙しいこと。
それでもその悔しさが働こうという原動力にならない辺り、まだ衝撃が足りないのか、実はただの被害妄想だとわかっているのか。
(働いてねぇのがそんなに悪いのかよ)
唇を噛み締めながら、震えています。
(結婚してんのがそんなに偉いのかよ)
ぷるぷると震えています。
でも噛んだ唇が切れないあたり、本気で噛んでるわけではないみたいです。
悲劇のヒロインみたいな感じでかわいそうな自分に酔ってる可能性もあるね。
(高卒の底辺職のクセに…!)
タイ君のことを思い出して、心の中で
(あのアバズレビッチが…!)
中井さんのことも貶します。
心の中とはいえ、さっきから口汚いよ、ユウ君。
段々とイライラがひどくなって、貧乏揺すりが激しくなります。
唐突に、年季が入ってきたパソコンを立ち上げました。
一分以上経って立ち上がったパソコン、そのブラウザを起動。
お気に入りからあるサイトを選択。
ユウ君、どうするの?
すると、ちょっと――いえ、バリバリ大人なサイトが表示されました。
裸の女の人が出てくる動画が流れました。
ユウ君の呼吸が荒くなり、ズボンに手をかけました。
ちょっと、待ってユウ君!
前の方でズボンが引っ掛かって、一気に引き下ろせず、一度動きが止まります。
カメラ、早く止めて止めて事故る~!
※※※ しばらくお待ちください ※※※
♪♪♪(清々しい川のせせらぎと鳥のさえずり)♪♪♪
ふぅ、間に合ったよ~。
ユウ君、そういうことは見えないところでやってよ~。
放送事故になるところだったよ~。
「はぁ、はぁ、おい、わかったかこのっ」
ん?あ、まだマイクが――!
「ごめ、ユウくん、きもちいいっ――どうしたいか言ってみろ――ユウくんの、ほしいよ――ふっ、このインランが――」
まずいよ、一人芝居を始めたよ!
大人な映像を流しながら、ユウ君の頭の中で、押し倒されたあられもない姿の中井さんを妄想して、右手をうならせながら一人二役でおせっせしてる気持ち悪い声が!
早くマイクを――!
「よしの、だ、だすぞ――だ、だめ、なかは――」
マイク止めて~!
ユウ君のフィニッシュよりも前に、一刻も早くマイクを止めて~!
じゃないと、早くしないと――
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