34年目

 何やら下が騒がしい。


 ユウ君はゲームに課金ができなくなり、一日中ベッドの上で動画サイトを眺めているのが習慣になりました。


 それどころかお金がないので月額使用料がかかるゲームはできず、無料のブラウザゲームやスマホゲームしかできません。でも課金ができないのでお気に入りのキャラクターがガチャでピックアップされてもゲットできなくて、すぐにやめてしまいました。


 なので、世間が通勤・通学時間帯を終えた時間に起きて、ぐだぐだと動画を見るのが習慣になりました。


 そんな日常が、今日はちょっと違っているのです。


 今日は土曜日。


 お父さんはいますが、それでもお母さんと騒ぐようなことはないのです。


 一階はどうなっているのかというと……。


 なんと、ナオちゃんがいました。


 その隣には、幼い女の子がいます。


 実は、ナオちゃん結婚して長女を出産していたんです。


 仕事先で出会った理容師の旦那さんと結婚し、女の子を授かって早二年。


 お母さん、孫にメロメロです。


 お父さん、顔が緩んでいます。


 もう、ナオちゃん、結婚したなら教えてよ~!


 ユウ君も、どうして教えてくれないの?


 そう思って過去を振り返ってみると……。


 ああ、引きこもってゲームで散財して、でも無職ってことに少しは負い目感じてて、掲示板でドヤってたね。


 ちょうどそのころ、ナオちゃんが結婚するからって連絡がきて、お父さんとお母さん大慌て。ユウ君も結婚式と披露宴に招待されたけど、「行かない」って言って、独りでお留守番してたんだ。


 いや~、ユウ君に密着してたらか気づかなかったよー。


 結婚式なんて、いい撮れ高なのに~。


 ユウ君、ナオちゃんの結婚を聞いて、ずっとぐちぐち言ってました。


「結婚とか、コスパ悪いんだよな。ま、アイツも情弱だし、頭悪りいから、日本経済のために底辺なりに金回せばいいんじゃね?俺はそんな、女と一緒とか、無理だね。なんつーか、セッ〇スとか、気持ち悪いっつーか、人の体温とかどっちかってーと不快だし?」


 ユウ君、ナオちゃんのこと悪く言っちゃだけだよ?

 あと、童〇のくせに何言ってるの?

 最後に女の子に触れたの、小学校のフォークダンスでしょ?


「そんな思いまでして子ガチャ外れたらたまんねーし。まぁ、アイツみたいな底辺の親んとこに生まれたガキんちょもかわいそーだけどな。親ガチャ外れだし」


 そういう意味では、ユウ君は外れた子ガチャだね?


「そもそもさ、結婚って形にこだわるってゆーのが日本の悪いとこでさ、フランスなんか事実婚がけっこうあるんだし? 日本もそういうところ古いんだよな。老害がうるせーんだよな、そういう形式にこだわるとこがさ」


 ずーっとぶつぶつ言ってるユウ君。


 もうちょっと素直におめでとうって言おう?


 大事なことだからね、ユウ君。

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