33年目
悲報です。
ユウ君、とうとうお金が尽きました。
口座残高は、1,562円。
働いていた時には実家暮らしでも一銭も入れておらず、600万円以上あった預金額は、見る影もありません。
そりゃ毎月20~30万円以上課金、それを何年も続けてればなくなるよ。
最初の数ヶ月は無課金でゲームしてたのに、レア武器がほしくて1万円だけ課金して、そこから「月に2万円まで」って決めていたのに、どんどんほしいアイテムや装備が出てきて、その装備を見た人がギルドに誘ってもらい、仲間ができたとウキウキして。
ちょっとダブった装備をギルドの仲間にあげたら、「ありがとうございます!」って言われて舞い上がりました。
かわいい女の子キャラだったので、本当に女の子にちやほやされているみたいですっごく喜んでいたユーことユウ君。
後でネカマってわかりました。
う~ん、ネカマってなんだろう?
とにかく、課金ができなくなったので、ギルドの人たちにアイテムを配ることもできなくなりました。
『ユーさん、俺、明日誕生日なんですよ』
『……あ、ああ、そうなんですね』
期待を込めたギルドメンバーの発言に、ユウ君はたじたじです。
もう、プレゼントなんて送れません。お金がないので。
なので、適当なあいづちを返すだけで、今までみたいに高価なアイテムのプレゼントを渡すわけでもない『ユー』さんに、ギルドの人は訝しみます。
そうなるとあら不思議。
周りの人たちは、『ユーさん』から離れていきました。
一緒にゲームして、楽しんでいれば問題なかったんだと思います。
高価なアイテムをプレゼントしてくれることに価値を見出されてしまったので、それがなくなったことで、急に『何もない人・できない人』認定をされてしまったみたいです。
「くそっ」
ユウ君はそっと部屋を出て、リビングに入りました。
物音を立てないように、そ~っと。
テーブルの上には、お母さんのお財布が置いてあります。
え?ユウ君、もしかして……。
ユウ君はお財布に手を伸ばします。
何枚かのお
これがあれば、少しの間だけ、ゲームの中でちやほやしてもらえる。
そう思いました。
「—―っ」
結局、ユウ君は何も持っていかず、クレジットカードの番号も控えないまま、リビングを飛び出しました。
「ユウ?」
廊下でお母さんとすれ違いましたが、顔を合わせられずに急いで階段を上って部屋に戻ります。
ユウ君、なんとか一線を超えることなく踏みとどまりました。
よく我慢したね、ユウ君!
結局、ゲームの中で何もプレゼントできなくなったユウ君は、ギルドの中で微妙な立場になり、居づらくなって、とうとうログインすらしなくなってしまいました。
そして、半年後――
このMMORPG、サービス終了のお知らせがされました。
あ~あ、ユウ君、どっちにしろ居場所なくなっちゃったね。
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