22年目
今日は土曜日、神在月家4人が揃って夕食です。
「ナオと一緒にご飯なんて、久しぶりだね」
お母さんが、食卓に着くナオちゃんに言いました。
「だって、お母さんが誕生日を祝うって言うから」
渋々と、いえ、ちょっと照れたようにナオちゃんは答えます。
そう、今日はナオちゃんの誕生日です。
食卓には、昔から好きだった唐揚げやお稲荷さんが並び、ケーキも用意してあります。
「奈緒、学校はどうなんだ?」
お父さんが聞きます。
「うん、なんとかやれてる。卒業したら国家試験だから、卒業できても気は抜けないけど」
ナオちゃんは美容師になるために専門学校に通っています。
毎日帰りが遅いのでお父さんもお母さんも心配していますが、なんだかんだでなんとか修了できそうなので、少しだけ安心したみたい。。
「で、優の方はどうなんだ?」
お父さん、今度はナオちゃんの隣に座るユウ君に質問です。
「大学は?就活はどうなんだ?」
聞かれて、ユウ君は固まってしまいました。
実はユウ君、今年大学を卒業できないことが決まってしまったんです。
理由は単位不足。
履修結果の一覧を見ると、見事にDばかり。
必修科目は取れてもギリギリCで、一般教養はBが多いかな?
とにかくなんとか力学とかいうのが単位を取れなくて、大学4年生なのに見事に今年の卒業単位不足になってしまいました。
だから、就活はまだしていません。
そして、もう1年余計に大学に通わなければならないことを、まだお父さんとお母さんに伝えられていません。
ユウ君、固まってしまいました。
何も答えられません。
さっきまでおいしく食べていた唐揚げが、途端に味がわからなくなるくらい。
「どうした、優」
お父さんは不審に思ってもう一度聞きます。
「じ、実は……」
意を決し、ユウ君は説明を始めます。
見る見るうちに、お父さんの顔が険しくなっていくのがわかります。
「何してたんだ、お前はっ!」
「ご、ごめん!」
お父さんの怒鳴り声に、ユウ君は思わず肩をすくめます。
「ちゃんと勉強してたのか?遊んでいたんじゃないんだろうな?」
「い、いや、そんなことなくて……」
ユウ君、更に委縮してしまいました。
「お父さん、落ち着いて」
そこへ、お母さんが助け舟を出してくれました。
「ユウは、家に帰ってからも勉強してるし、授業だってサボらずにずっと通っているの。そうよね、ユウ?」
「う、うん…」
お母さん、ユウ君が家に帰ってからも一生懸命勉強していることを知っています。
お友達がいないことまでは気づいていませんが、ユウ君が頑張っていることは知っているんです。
「それに、せっかくのナオの誕生日なんだから、今日くらいは、ね?」
「そうか、ううん……」
お父さん、怒りを鎮めて腕を組み、何やら考えています。
「なら、あと追加で1年だけだぞ。5年で卒業して就職しろ。いいな?」
「……わかった。がんばるよ」
「さぁ、食べましょう。せっかくのナオの誕生日だもん。あ、ケーキ持ってくるからね」
お母さん、がんばって場を明るくしようとケーキを持ってきます。
ナオちゃん、夢に向かって順調に進んでいるね。
ユウ君、お兄ちゃんも負けていられないよ?
ガンバレ、ユウ君!
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