20年目

 ユウ君、大学二年生の夏休みです。


 朝から日差しが強くて、8時なのにもう気温は30℃に迫ろうとしています。


 そんな暑い真っ盛り、なんと、今日ユウ君はアルバイトです。


 普段はアルバイトをしていないのですが、長期休みに週に3日だけ、派遣会社に登録して働いています。


 今日の現場は湾岸地区の物流倉庫で、最寄り駅に他のアルバイトの人と集合し、現場に歩いて向かいます。


 15分ほど湾岸道路を歩くと、大きな倉庫に着きました。

 今日の現場です。


 今日はピッキング作業です。

 たくさんある荷物を配送先別に仕分けていくお仕事です。


 みんな汗だくになりながら荷物を運んでいます。


「おい、ぶっ倒れんぞ。水分補給しろ!」


 現場の社員さんが大きな声で言います。


 ユウ君、水分補給は大事だよ?

 ちゃんと飲もうね?



 へとへとになりながら、やっとお昼です。


 ユウ君はバッグからお母さんのお弁当を取り出して食べます。

 ユウ君の好きなハンバーグが入っています。


 疲れた体に染みるね~。


 でも、お昼休みもあっという間に終わり、午後の作業です。


「おいちゃんと力入れろ!」


「ひっ」


 近くで怒鳴り声が聞こえました。


 ユウ君、びっくりして変な声が出ちゃいました。


「別に力ねぇし」


 怒鳴られていたのはユウ君じゃなくて、別の人でした。

 同じくらいの年の、線の細い男の子です。


「じゃぁなんで来たんだよ!?」


「ここに来いって言われただけで、俺が選んだんじゃねぇし」


 そう言って、男の子はどこかに行ってしまいました。


 うわ~、恐いところだよ~。


 ユウ君も、自分のことではないけれど、恐くてビクビクしてしまいます。


 怒鳴られるのが恐いので、疲れた体に鞭打ちながら、一生懸命働きます。


 午後4時になり、さすがにもうへとへとです。

 ずっと倉庫内を歩き回っていましたから。


 実は、午後の休憩をもらっていないユウ君。


 本当はちょっとお休みしたい。

 でも、怒られるかもしれない。


 そう思って、「休憩行きます」って言えないユウ君。


「あ、あの……」


「あぁっ!?」


 勇気をもって社員さんに話しかけますが、ちょっと相手は不機嫌そう。


 がんばれ、ユウ君!


「……か、かご、どこに置けば……」


「そんなん、端に並べときゃいいよっ!」


「は、はひっ」


 社員さんんお迫力に押されて、変な高い声が出ちゃいました。


 結局、休憩を取れなかったユウ君は、定時までそのまま働きました。



「うぅ、疲れた……」


 帰り道、足の痛みに耐えながら湾岸道路を歩くユウ君。


 一日がんばったね!えらいぞ、ユウ君!


「金稼ぐって、つらいな……」


 しみじみと、ユウ君は労働の大変さを感じています。


 これまでは、お父さんお母さんになんでも用意してもらって、お小遣いをもらっていたユウ君。


 でも、自分でお金を稼いでみる経験をしてみると、千円札1枚が、すごく重く感じました。


「週3日だってしんどいのに、週5とかぜったいむり……」


 毎日働いているお父さんのすごさが改めてわかったかな?


 でも大丈夫だよ。


 ユウ君は頑張り屋さんだから、きっと大丈夫!


 この経験は、ユウ君を成長させてくれるはずだよ?


 だから、めげずにがんばれ、ユウ君!

 

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