19年目

 ユウ君の大学生活がスタートしました。


 広大なキャンパスの中に、10棟以上の教室と研究室棟のほか、複数の実験棟に、大きな体育館と図書館、2つのグラウンドにテニスコート。


 敷地内には緑地スペースもあり、木漏れ日のベンチなんかもあります。

 

 すごく立派なキャンパスです。


 ユウ君、ここでキャンパスライフを送るんだね。

 いいな~。


 

 入学早々に、履修届の説明があり、年間単位数を考えて自分で時間割を組んでいきました。

 高校とは違い、授業は90分。

 1コマが長いね~。


 じゃあ、ここでちょっと授業を覗いてみましょう。


 え~っと……基礎物理学Ⅰ…?


  dy/dx=y


 なんか、いきなりよくわからないことが黒板に書かれだしたよ?

 まずは簡単なおさらいからって先生が言ってたけど、簡単なの?


 でぃーえっくすぶんのでぃーわい?


 え?違う?

 でぃーわいでぃーえっくす?

 え?「/」はどこいったの?わかんないよ~?


 でも、授業を受けている人たちは黙々と板書を取り、教科書を確認し、先生の話を聞きます。


 ユウ君も、同じくノートを取って、問題を解いていきます。


 おや?ちょっと頭を悩ませてるみたい。


 難しいかな?ユウ君?


 実はこの前提出した課題の序盤で、ユウ君は躓いてしまったんです。


 課題にはバツが付けられていて、先生のコメントが入っていました。

『これくらいの微分方程式は解けるようにしておいてください』


 うわ~、きびしい!


 でもめげないで、ユウ君。

 ユウ君は、これまでずっとがんばってきたんだから、今回だってきっとなんとかなるよ!



 さて、そんなこんなでもうお昼。

 たくさんの学生が学食に行きます。


 あ、定食が390円だって。ソースかつ丼300円⁉

 すごい!うらやましい!


 ですが、学食にユウ君の姿はありません。


 校舎の一角には何組かのテーブルと椅子が並んでいるんですが、そこにユウ君はひとりで座ってお弁当箱を開いています。

 お母さんが朝作ってくれたお弁当です。


 でも、テーブルに誰もいないのはなんで?

 お友達は?


 これが、ユウ君の悩みの一つ、大学でのお友達がいないことです。


 付属大学なので、同じ高校の人はいます。

 ですが、学部や学科が違っていて、高校時代に仲が良かったお友達と、大学で顔をあわせる機会がほとんどなくなってしまいました。


 だから、お昼は一人で食べています。


 そこへ、三人組の女の子が歩いてきます。

 どこか座る場所を探しているようですが、生憎の満席です。

 数人で課題の答え合わせをしていたり、ジュースを飲みながら談笑していたりと、どこも空きそうにありません。


 それに気づいたユウ君は、急いでお弁当をかき込むと、これまた急いでお弁当を仕舞って席を立ちます。


 ユウ君が座っていた席が空いたので、女の子三人は「空いてるー」と言って座って午後一番に提出の課題を見せ合い始めました。


 ユウ君、女の子たちが座れるように譲ってあげたんだね。

 優しいな、ユウ君は。



 こんなキャンパスライフを送っているユウ君。


 がんばれ、ユウ君!


 お友達はこれから作ればいいし、お勉強だって、がんばればきっと大丈夫だよ!


 負けるな、ユウ君!


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