3年目

 ユウ君、今日はお父さんとお出かけです。

 

 目的地は、車で自宅から15分の病院です。

 

 実は、お母さんが入院しているんです。

 あ、安心してくださいね。

 お母さんが入院しているのは、お腹に赤ちゃんがいるからです。


ゆう、これからお兄ちゃんになるんだぞ」

「おにーちゃ?」


 そうです。今日はお母さんの出産予定日。

 ユウ君、お兄ちゃんになるんです。


 甘えん坊のユウ君は、お母さんにべったりだったので、入院の時はすごく大変でした。お父さんがお仕事に行っている間、近所に住んでるおばあちゃんに面倒を見てもらってましたが、お母さん、お母さんってずっと泣いていました。


 今日はお母さんに会えると聞いていたので、ウキウキしています。


 でも、朝が早かったせいか、ユウ君はおねむです。

 目をごしごしして、足元もふらふら。

 

 結局、病院に着いたらすぐに寝ちゃいました。



 ユウ君が目を覚ましました。

 もうお昼過ぎです。


 まだ半分寝ぼけたまま、お父さんに手を引かれて、抱っこしてもらって、ガラス越しに部屋の中を見せてもらいます。

 ガラス越しに、たくさん並んだ保育器、その中のひとつを、お父さんが指差します。


「あの子が、ゆうの妹だぞ」


 お父さんが、ユウ君に、生まれたばかりの妹を教えてくれます。


 名前は『奈緒』ちゃんです。

 『実りの多い人生を送ってほしい』『いろんな人を繋ぐ人になるように』

 そんな意味を込めた名前です。


 ユウ君には、生まれたばかりの赤ちゃんはおサルさんみたいに見えましたが、それはナイショです。ユウ君だって、生まれたときはおサルさんみたいだったんだよ?


ゆうはお兄ちゃんなんだから、妹のこと守ってあげるんだぞ」


 お父さんはユウ君に言って聞かせます。


「うん」


 ユウ君、頷いてるけど、ちゃんとわかってるのかな?

 

 でも、大丈夫だよね?


 これからお兄ちゃんとして、妹を守ってあげるんだもんね。

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