襲撃

 アムールを先頭に、四人は縦に並んで歩いていた。招かれざる客であるため、ギュスターブの部下に襲撃される恐れがある。フロンティア家の屋敷に続く石畳は、水路に挟まれているためか、どことなく冷気を帯びている。

 緊張した雰囲気が漂っている。

 そんな中で、アムールとダリアの間を歩くジャンは呑気に辺りを見渡していた。

「水路も噴水も芝生も素敵だなぁ」

 フロンティア家の庭を何も知らずに見れば、ジャンが褒め称えるのも頷ける。

 しかし、最後尾を歩くカルマの表情は険しい。

「いつ襲われるか分からねぇんだ。もっと警戒した方がいいぜ」

「でも、庭が素敵なのは本当だよ。見晴らしがいいんだし、誰か来たらすぐに分かると思うよ」

 ジャンが反論すると、カルマは苦笑した。


「気持ちは分かるが、敵は何でもありだぜ。そこの水路から出てくるかもしれねぇし」


「え!?」


 ジャンの声は裏返り、両目は丸くなっていた。左右の水路を交互に見ながら歩き出す。

「怖いなぁ」

「最初から怖がるべきものだぜ。襲撃者は命を奪いに来るんだからな」

 カルマが諭すように言うと、ジャンの顔が青ざめた。

「命だけは取らないでよぉ」

「ちょっとカルマ、ジャンをいじめるのはその辺にしてくださる!?」

 ダリアが非難すると、カルマは首を横に振った。

「俺はぜってぇ間違っていないぜ」

「絶対を付ける人間ほど信用のおけない人間はいませんわ。ジャンは何があっても絶対に守るくらい言ってほしいものですわ」

「速攻で矛盾しているよな!? 絶対はないはずなんだよな!?」

 カルマが両目を白黒させると、ダリアは鼻で笑う。

「そこは雰囲気で感じ取るものですわ」

「都合が良すぎるだろ……!」

 ダリアに反論している間に、カルマの背筋に悪寒が走る。


「――伏せろ!」


 カルマは咄嗟に口にして、背中の大剣を抜き放った。

 ダリアは伏せながら魔術を放つ。

「暗き祈りよ我に力を、タイムストップ」

 空から白銀の息が掛けられる所だった。間一髪でダリアの魔術が、白銀の息の動きを止めた。

 事態はそれだけでは終わらない。

 水路から黒ずくめの人間が這い出てきて、ダリアたちに刃を向けて突進してきたのだ。

 白銀の息を止めているダリアの魔術は間に合わない。

 カルマが大剣を薙いだ。


「暗き祈りよ我に力を、ファイアーライン」


 炎の一線が黒ずくめたちに命中する。黒ずくめたちがひるんだのを見計らって、カルマとアムールが各々の武器で叩き伏せる。カルマの剣術とアムールの槍術は卓越していた。

 そんな様子を神龍に乗って、空から眺めるセラは拍手をしていた。

「すごいすごい! でも、まだまだ攻撃は終わらないんだよね」

 セラは不敵な笑みを浮かべていた。

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