第29話
部屋に入ってきたのはラダン様だった。
「ラダン様、お帰りなさい。お仕事が早く終わったのですね。お出迎え出来ず申し訳ありません」
「いや、いいんだ。私がシャロアに会いたくて早く帰ってきただけだから。それにしても、その姿……」
ラダン様の言葉に私はドキリとする。似合っていないかしら、と。少しの不安を覚えながら聞いてみた。
「……美しい。すぐにでも結婚したい。マダムジョルジーヌ良い仕事をしてくれてありがとう」
「あらー甘いわー。シャロア嬢はダイアの原石よー。磨けばもっと光輝くわー。大切にしないといけないわー」
「そうですね。生涯大切にすると決めているから」
そう言って抱きしめようとしたところでマダムに止められた。
「ハグは後でしてちょうだいねー。お熱いのはいいのだけれど、まだドレスは完成していないのよー?」
「あぁ、そうだった。あまりに美しくて忘れていた。母上、試着が終わったらすぐにシャロアを温室へ」
「あらあら。分かったわよ。せっかちね」
私はグレイス夫人とマダムに笑われながらもドレスの細かな箇所の修正してから急いで温室へと向かった。
「お待たせしました」
「早かったね」
私は温室に用意されていた椅子に座った。もちろん隣にはラダン様がいるわ。侯爵家の温室はグレイス夫人が大切にしている花達が育てられている。花の名なんて疎い私でも植物が大切にされていることがよくわかる。
「シャロア、先ほどのドレス姿、とても綺麗だった。結婚式が待ち遠しいよ」
「マダムのおかげですね。私も楽しみです。そういえば第一騎士団の方はどうでしたか?」
「あぁ、義父上にこってり絞られそうだったから今日は早めに帰ってきた。どうやら私は今度の誕生祭の警備、エリアーナ王女の護衛になるらしい」
「まぁっ。王女様はとても可愛い人ですからラダン様が余所見をしないか心配です」
「それは大丈夫だ。私は君にしか興味はないから」
「そうでしたね。数多の令嬢が熱い視線を送っていてもラダン様は応えることはしなかったし」
「でも妬いている君も可愛い。まぁ、元婚約者のように嫉妬して欲しいから王女を構うなんて幼稚なことはしないから安心して欲しい」
「……嬉しい」
ラダン様は私の欲しい言葉をくれる。不安に思うことを口に出してもその気持ちに寄り添ってくれる。幸せ者ね。その後、少し話をした後、私は家に帰った。
翌日からも午前中は王宮で仕事、午後から婦人教育と慌ただしく過ごしていった。
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