第22話
そうして私は二十歳になった。相変わらず男っ気のない私に父も母も心配するようになっていた。
そうそう、私はこの間騎士爵を取ったのよ!積極的に討伐等の危険な任務に参加していた事が評価されたみたい。
もちろん騎士爵は他者からの評価と実力、頭脳も必要なの。他者からの推薦と試験を受けて見事合格というところね。騎士爵は本当に狭き門なのよ?コネは少しは入っているかもしれないけれど、そこは気にしてはいけないわ。
これからは一人で生きていくのよ!と息まいていた矢先。
「シャロア、お前、お見合いする気はないか?」
兄クレートがそんな事を言ってきた。
「クレート兄様、突然何ですか?お見合いに興味はないのですが?」
「行き遅れの妹を心配している兄の身にもなってくれ。というか相手からの要望だ。俺にも付き合いがあるし、受けて欲しいんだが?」
「その話はお父様達は知っているのですか?」
「もちろんだ。父上も母上も大喜びだからな!」
兄の言葉に不安しかない私。
「相手は誰なのですか?」
「会えば分かるさ! じゃぁ、決まったら日時と場所を知らせるから待っていてくれ。我が妹よ」
兄は上機嫌に私が了承したとばかりに去っていった。相変わらずだ。でも、一体誰なのかしら?こんな行き遅れの私に興味を持ってくれる人なんて。
後妻目当てなのかしら?私は疑問に思ったけれど、まぁいいか。どうにかなるわと考えを早々に放棄した。
そして兄が聞いてきた翌日、夕食後に父から執務室に来なさいと呼ばれた私。
忙し父が食事時ではなく、時間を取るということは昨日の兄の話についてだろう。結局誰なのかも分からず考えを放棄した私を父は現実に引き戻すようだ。
「お父様、お呼びでしょうか?」
執務室で仕事をしていた父は待っていたと言わんばかりに仕事の手を止めて笑顔で話し掛けてきた。
「シャロア、喜べ!見合いの日が決まったぞ!」
え?
昨日の打診でもう日にちが決定?早すぎやしないかしら?
「お父様、本当ですか?」
「あぁ。クレートがすぐに使いを出して返事を貰ったからな。私達も心配していたんだが、良かった良かった」
「で、相手はどこの誰なのですか? お兄様は私に教えずに仕事に行ってしまったのですよ?」
「あぁ、相手か。まぁ、今知れば気を使うだろうから伏せたのかもしれないな」
「で、誰なのです?」
私は父に詰め寄るけれど、父は笑顔のまま教えてくれそうにない。
「誰かは教えてくれないのですね。その人とはいつ会うのですか?」
「シャロアの今度の休日に我が家にやってくるそうだ。中庭でお茶が飲めるように用意しておくか」
「お父様、我が家の中庭はほぼ訓練場でお茶を楽しむような赴きはありませんわ。サロンでしょうね」
「そうだな。彼はあまりこだわりは無さそうだが、シャロンがそう言うのならサロンに案内するとしよう」
「でも、急ですね。私の休みは明後日ですが?相手は大丈夫なのですか?」
「あぁ、大丈夫だ。私からも職場で話をしているからな」
「……という事は相手の方は騎士なのですね」
父はしまったという顔をしている。いや、そういう顔をしながら情報を小出しにして楽しんでいるに違いない。
相手は騎士か。
だとしたらお互い顔見知りという事よね。兄の話では相手からのお見合い話だと言っていたわ。男らしい活躍する私を見てそれでも嫁に欲しいと思ってくれる人。随分と貴重な方だ。兄は是が非でも会っておけというのも間違いないのかもしれない。
時間が経っているとはいえ、本当はまだ少し恋愛に対して臆病な自分がいる。また人を好きになるのが怖いの。また裏切られてしまうのではないかと。でもいつまでも怯えている訳にもいかないのは世の常。
私だって一応は伯爵令嬢。親から嫁げと言われたらそれに従うわ。ただ我が家は強要するような家ではないから出会いがなければ生涯独身でもいいかなと思っている部分もある。ここにきてお見合いをする事になるなんてね。
一体どんな人なのかしら?
「まぁ、とにかく、心配せずに会うといい」
「分かりました」
父は笑顔で言う事は言ったとばかりに執務を始め、私は部屋に戻った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます