第5話

 行く年迎えたでしょうか。

 朱天が神様に会いにきました。


「お久しぶりです」


 神様はそう言いました。

 けれど、朱天は驚いた顔をして言葉を返してはくれません。


「どうかなさいましたか?」

「どうかって……お前こそどうしたんだ!そんな姿で!」


 朱天は声を荒げ、神様の肩を掴みました。

 そこはひどく薄く骨張っていました。


「こんなに痩せ細って。村の人間はお前を信仰していないのか!?」


 神様は骨と皮だけのような痩せ細った身体になっていました。

 ぼろぼろの衣がそれを隠すようにあるだけでした。

 神様は不思議そうに朱天を見ました。


「私は村の皆の祈り。必要でなくなっただけです」


 あっさりと神様は言いました。


 神様は知っていました。

 祈りを得られない存在に。

 村から求められない存在に、いつの間にかなっていたことに。


「村の皆は私ではない者に祈りを捧げました。それが皆の意志なのです」

「それを受け入れるというのか!?あれは異国からの、いいように改竄された中身のない信仰だ」


 朱天は知っていました。

 ある時から増えた異国の宗教が都に蔓延していることを。それが人間の政によって都合よく変えられた空っぽなものだと。

 

それを聞いても、神様は微笑みました。


「祈られない神に、何の価値があるのですか?」


 優しげに。哀しげに。

 神様は朱天に微笑みかけました。

 その身体が霞のように消えていきます。


「待て!私が、私が祈ろう!」


 朱天は手を伸ばし、腕を掴もうとします。

 しかし、その手は擦り抜けてしまいました。


「ありがとうございます。朱天。貴方に出会えてよかった」


 神様はそう笑いかけて消えてしまいました。

 何一つ残すこともなく、消えてしまいました。


 それは村の信仰が完全になくなったことを示していました。


 人間が望んだ存在にも関わらず、人間は神様を捨ててしまいました。

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