第3話

 それから、朱天は村の皆が来ない夜中に神様に会いに来ました。


 朱天は様々な話を神様にしました。

 都という、村よりも遥かに大きな住居が立ち並ぶ場所。

 そこで行われる人間のやりとり。華やかな宴。


 神様には想像もできない夢のような現実のお話。

 村しか知らない神様にはとても新鮮で、とても嬉しそうに聞いていました。


 朱天も、幼い子どものように目を輝かせて話を聞く姿に嬉しくなりました。


 毎夜毎夜と二人は話をしていました。


 そんな楽しい日々に、いつしか朱天は神様のことが好きになりました。


 しかし、朱天は鬼で神様とは何から何まで違っていました。


 何よりも。

 神様は村が一番大切でした。

 祈りから生まれた神様に、村の平穏以外の願いがあるはずなどないのです。


 朱天は淡い思いを抱きながら、山を降りることにしました。

 叶わない恋に身を焦がして、何かをしてしまってはいけないと考えたからです。

 目的の薬草も今では十二分に集まっていました。


 朱天は山を離れることを神様に話しました。


「そうですか。寂しくなりますね」


 そう寂しげに言いました。


「どうかお元気で」


 そして、神様は優しい微笑みを浮かべて朱天を見送りました。

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