第2話

ある日のこと。

山から二つの角を持つ鬼がやってきました。


「おや。此処には神が棲んでいるのか」


 人によく似た姿の鬼は、神様を見るとそう言いました。


「貴方は誰ですか?」


 神様は鬼に問い掛けました。


「私は朱天(しゅてん)。見ての通り、二つ角の鬼だ」


 鬼の朱天はそう答えました。


 鬼と名乗った朱天に神様は少しだけ警戒しました。

 鬼は悪いものだと、村の皆が言っていたからです。


「この村に何かご用ですか?」

「警戒しないでくれ。私はこの後ろの山に用事があるだけだ」


 朱天は苦笑しながらそう言いました。


「この山には良い薬草が多くある。それを摘みに来たついでに歩いていたら此処に着いたんだ」



 そう説明しながら、朱天は背中に背負った籠を見せました。神様には分かりませんが様々な薬草がたくさん入っていました。


「そうでしたか。疑ってしまってすみません」


 神様は悪い鬼ではないと分かると、すぐに頭を下げました。


「気にしていないさ。それよりも、私はしばらくこの山にいるつもりだ。もし良ければ、話し相手になってはもらえないか?」


 鬼がそうお願いをしてきました。

 断る理由もなく、神様はそのお願いを引き受けました。

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