SS「異世界でのお正月」



・PV500達成記念のSSです。

・お正月は過ぎましたけど時期的にお正月になっています。

・本編とは関係ありません。

・本論の最初の時期は6月後半です。時期が合いませんのでSSとなります。



そういえばもうすぐ異世界でのお正月だ。

今日は日本では大晦日と呼ばれる日。


「ねえクロ。異世界にもお正月ってあるの?」


「ん?オショウガツか。前の勇者が伝えたニホンの文化のことだったら知っているぞ。」


「確かオゾウニやオセチ、タコアゲ、カドマツと呼ばれていたな。」


前の勇者ってそこまで日本の文化を伝えていたんだ。大学生なのにすごいな。

お雑煮やおせちが食べたくなってきた。でも年越しそば、うどんも捨てがたい。


「オショウガツに似た文化ならここにもある。年を跨ぐ時にご馳走を食べてお祝いしたり、家族や親戚、友人などで集まって深夜まで起きて鐘の音を聞いたりする。」


日本と同じようにあるんだな。

そういえばクリスマス、大晦日、お正月を楽しんでいない。

お年玉を貰って本屋に直行していたな。


1月になるんだ。うん?受験生なのにこんなことしていていいのかな。

もうすぐ受験を控えているのに。


来年、私は高校に行くつもりだ。志望校は偏差値が高い学校。

どこでもよかったんだけど学校図書館の本の冊数が多いところを選んだらそうなってしまった。あと国語に力を入れている学校だからってことだ。

将来、司書を目指している人にとっては国語はかなり重要だ。

司書の試験の時、作文を書かないといけないと言っていた。誰だか忘れたけど。

まあ国語は司書じゃなくても就職には役に立つ。


そういえば私の職業は「司書」だけど全然「司書」らしいことをしていない。


とにかくいつ帰ってもいいように受験勉強をしなければ。というか授業を受けれていない分を取り返さないと受験に落ちる。


もしかして戻れなかったら留年扱いになる?ダメだね。絶対留年は嫌だ。

中学校は普通留年はあり得ないとは思うけど、この場合は分からない。

正直異世界召喚なんて誰も信じないだろう。まあクラスメイト23人が一度に消えたので信じてもらえる可能性はあるだろうけど。

特別措置があるかな。卒業式だってあるし。


とにかく今から宿に戻って勉強しなければ!


ノートと教科書、受験対策書を出す。

そして勉強を始めようとしたがあることに気づく。

シャーペンや鉛筆、消しゴムがないと勉強できない。

ここにそんなものあるのかな。


「あるぞ。店にいけばいくらでもある。」


クロが教えてくれた。黒竜なのに意外と人間のことを結構知っている。


「数百年間生きていたら暇になったからな。人間のことも調べてみたわけだよ。」


数百年って。一体クロって何歳。


「乙女に年齢を聞くんじゃないよ。」


クロって女の子なの。てっきり我がとか言葉遣いしてるから男の子だと。


「さてどっちでしょう。」


もういいや。暗いけど急いで店に行こう。



寒い。こっちも冬なんだ。

そして本当に全て売っていた。シャーペンも消しゴムもシャー芯まで。

勇者が伝えてくれたってどこまで話しているんですか、前の勇者は。

これで勉強ができる。


ゴーン、ゴーン、ゴーン。


鐘が鳴っている。この時間には鐘は鳴らないはず。


「これがジョヤノカネらしい。108回鳴らして、来年の幸せを願うものだと聞いた。


京都の文化。私は京都生まれじゃないので除夜の鐘を聞いたことがなかったけど。

日本の文化っていいなって改めて思えた。


「じゃあクロ。新年明けましておめでとうございます。」


「アケマシテオメデトウゴザイマス。」


「カタカナ過ぎないですか。」


「ニホンゴは難しいから無理だ。」


それはそう。とにかく受験勉強です。

ここはこの公式を使って、この問題は確か...。


「おい!起きろ!」


えっ。さっきの出来事は夢?

受験勉強をしていた時に寝てしまったのだろう。

夢の中まで勉強するとか嫌だ。夢の中では幸せな夢を...。


「あれ?それは...。」


「これがカガミモチだ。新年に飾るものだと聞いていたが。」


あの出来事は夢じゃなかったのかもしれない。

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