【閑話1】


双葉明里視点。


「おい1人足りないぞ。合計で22人しかいない。」


騎士の人達が騒いでいるのは、今日が誕生祭で私達が勇者として国民に紹介される日、なのに由香さんがいないのです。

どうしたのでしょうか。あの時、由香さんがあの武藤君に対戦を申し込まなかったら、私の大切な両親の形見であるキーホルダーは取られたままだったでしょう。


だからもう1度お礼を言いたかったのですが消えてしまったとなると、この城から逃亡ということでしょうか。

由香さんは強い、鑑定妨害を持っているのでしょう。1度もステータスを見ることはできませんでした。多分クラスメイトの中で1番強い。

みんなは武藤君に勝てたのは偶然だと言っていますが絶対そんなはずありません。


勇者として紹介されるのは恥ずかしいですが、それだけのために逃げるのはリスクが高すぎます。逃げることはできるとは思いますが、なにかあったのは確かなこと。


助けてくれた由香さんの力になりたいのですが、私は弱すぎて足手まといになるだけ。気づいている人は少ないかもしれませんが王国が段々と私達を粗末に扱っていると思います。


この前は、王国の命令に逆らった、水口美玲みずぐちみれいさんが騎士の人に暴力を振るわれて、その後牢獄に入れられたとか。

でも、あの命令はすごく理不尽でした。くじで選ばれた5人の人達が危険なダンジョンに行く、それは誰でも嫌です。

そして全員重症で帰ってきました。


のんきな男子達はその5人が弱いからだとか言ってましたけど、それだからってあんな危険なダンジョンに行かせるなど人間ではありません。


由香さんはどこに行ってしまったんでしょうか。


「もういい、とりあえず勇者は22人だと国民に紹介しろ。」


そう言ったのはイリスクラースト王国第1王子、ハイツ・ブルー・イリスクラースト王子です。この人は漫画に出てくるような金髪王子。あと1つ言うとしたら婚約者を国外追放させるような嫌な王子っぽいイメージがあります。

あくまでもイメージですが。


しかし大丈夫なのでしょうか、22人と紹介しても。


「はい、分かりました。」


騎士の人が返事をし、私達はステージに上がる。

国王から挨拶があるみたいだ。


「この度、異世界から来た22人の勇者達だ。魔王を倒せるような素晴らしい力を持っている。」


「あと3ヶ月したら勇者達が魔王が支配している領地に行き、魔王を倒してもらう。」


「安心するがいい、新たな時代の勇者たちだ。」


国民の人達の盛り上がりはすごいです。この国王3ヶ月ってどれだけ難しいことか分かってますか、これは危険です。

私はこの王国はやばい国だと思います。由香さんが逃げる理由が分かります。

でも私には力がない。このままではみんな死んでしまいます。

死にたくありません。


「強い意思を確認しました、職業の転生を行います。」


声が聞こえ、すると力がみなぎってくるような感覚になります。


名前 「双葉明里」 「14歳」 種族「異世界人」 職業「天使」


Lv34 HP 99999/99999 MP 1800/1890 経験値479/3400


潜在能力「エンジェルハート」

効果「HPが減ることがない」


固有スキル「エンジェルオーラ」

効果「一時的に天使族になることができる」


獲得スキル

「異常状態&自然回復」「鑑定、鑑定妨害」「攻撃魔法(闇、光、氷、雷、風)」

「空間収納」「痛覚軽減」「気配感知、気配妨害」


称号

「天使の能力を持つ異世界人」


ステータス画面が開かれました。前は「魔女見習い」だったのですが「天使」に変わりました。スキルも沢山増えてますし、かなり強くなった気がします。

これなら由香さんにも迷惑をかけることがないかもしれません。


私もこの悪魔になりかけているお城から逃亡します!




朝比奈香織視点。


私達、3年A組が異世界召喚されて、約1ヶ月が経った。

最初異世界召喚されたときはすごく動揺した、けれど私は生徒会長。

みんなをまとめようと努力した。


だから双葉さんのキーホルダーが奪われたときも自分1人でなんとかするしかないと思った。でもあの時、文化系女子という印象が強い垢月さんが出てきて、武藤に対戦を挑んだときは終わったって思った。


武藤は腐っても強い、だから垢月さんが勝てるわけないと思っていた。

でもそれは違った。結界魔法を使い武藤が動揺している時を狙い、雷魔法で倒した。

私は垢月さんを侮辱していたんだと気づいた。見た目だけで判断してこれじゃあ生徒会長なんてすることができない。


だから垢月さんが逃亡したと聞いたときは驚いた。

垢月さんにまだ謝ってもいないのに、だから私は垢月さんを追う。




武藤翼視点。


垢月が逃亡したと伝えられて、俺は憤った。

あいつ俺をあの時バカにしたこと忘れてるんじゃねーだろうな。

雷で俺を焼いたこと、許せない。あいつだけは俺が殺す。

そのために俺は強くなる、魔王なんて関係ない。

俺はあいつを殺す。



(あとがき)


クラスメイト3人の視点でした。

双葉さんだけの予定でしたが、3人のほうがいいと判断しました。

3人とも由香を追いかけると決めています。1人過剰な人がいますけど。

双葉さんはかなり強くなりました。由香に追いつける日も近いかもしれません。

次からは第2章です。どうぞよろしくお願いいたします。

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