第27話 鬼武将③
「(霊力が膨れ上がった?いや、ワシの力を吸収し、ワシの呪力を霊力に変えたのか...)」
「どうした?来ないなら、俺から来るぞ」
音速の速さで零夜は飛び込む。
空狗のスピードと零夜の元からのスピード、そして稲妻を纏った状態でのスピードはとんでもないモノだった。普通の人間なら、自分のスピードに耐えきれなくなるが、スピード勝負が得意な零夜はすぐに適応するのだった。
お互いは超高速で激しい攻防を繰り広げる。
周りの木などがなぎたおされるのであった。
やっぱり、こいつは本気を出してない...いや、本気を出せてないのか...
鬼店とは、喰らった鬼の身体能力や特殊能力をコピーして自身に刻むこと。身体能力だけであれば、支払うの代償が低くなるのだが、空狗の様な化け物を100%コピーするのに、膨大なチャージを支払う必要がある。だが、零夜は10秒に1チャージと少ない代償で抑えられているのだ。それは空狗の5割程度の身体能力しかコピーしてなかったのだ。
俺の力と、こいつの半分の力を合わせても、やっとトントンって所か...いや、まだ俺の方が弱い
「断斬!!」
鬼の力を借りている時、相手の力を吸収する事は出来ない。
「
相手の攻撃をタイミングよく、数倍に弾き返す技。零夜は空狗の断斬を倍に返したのだ。だが、断斬の威力が強くて全て弾き返せなく、零夜の体に喰らったのだ。だが、空狗も同じく大きな傷が出来る。空狗の刀が零夜に当たる寸前に、零夜は刀を持つ手首を蹴り、思いっきり右手で空狗の顔面に向けて地面に殴り落とす。そして馬乗りの状態になり押さえつける。
「無刀琉
鋭い5つの指で、零夜の体を貫く。
「ガハッ!」
残り時間30秒。ここで零夜は引いてしまえば負ける事になる。例え指で体を貫かれようが、零夜は再び顔面に向かってパンチを飛ばした。そして、刃を空狗の首に走らせる。
「ガハッ!」
だが、空狗は零夜の首に目掛けて手刀を飛ばした。
2人は武士との戦いとより、獣同士の戦いに変わっていた。だが、2人の表情は楽しそうに笑っている。
空狗は零夜の手首を掴み、横に飛ばした。
「稲弾!!」
数発稲弾を飛ばすが、空狗は全て避けて零夜の間合いを詰める。2人は刀で攻防をしながら、間に体術まで挟む。この50秒間、2人は動く事を止めもしなかった。零夜に残された時間は10秒。それに気付いた空狗はピタリと止まり、刀を鞘の中にしまう。
「あ?なんの真似だ?...あー、そういう事ね」
そして、零夜も刀を鞘の中にしまった。
3秒間、2人は刀の柄を握り居合の構えをする。
「零夜!これで最後だ!!この一撃でワシの全てを打つける。奥義・
ビリリッ!
「ああ、楽しかったぜ。
2人は超音速で飛び込み居合を飛ばす。
零夜の刀にヒビが走る。
「...」
空狗の胴体に深く大きな刀の切り口が出来る。
だが、零夜も同じ事であった。零夜の体も斬られ、刀の刃が粉々になったと同時にその場で倒れるのだった。
「天晴れであった。よくぞワシの真髄を受け止めた!お主の勝ちじゃ」
「ふざけんな、倒れてるのは俺だぞ...」
零夜の勝ちとは言われても、その場で倒れたのは零夜だった。零夜は手を振るわせた状態で、タバコを取り火をつけて吸うのだった。
「結局アンタの本気を出せなかった」
「何を言う。最後の技は、ワシの全てを賭けたモノだ」
「弱っている状態での全てだろ。もし、アンタが100%の力だったら、俺はすぐに負けてただろ?」
「何を言う。お主は人間。もし、ワシも人間であれば、最後の攻撃は死んでいたぞ。今ギリギリに生きているのは、土地神である為だ。お主の勝ちだ!誇りに思え...お主はこの酒呑空狗を討ち取った人間ぜよ!」
そして空狗は限界だったのか、タバコを吸いながら倒れている零夜の頭の上に座る。
「満足か?」
「ああ、満足である。やはり、あやつの言う通り、ワシを殺してくれるのは、零夜であった!ありがとう!」
「...おい、なんの話だ?奴って誰だよ」
零夜の質問を答える事はなく、空狗は零夜の胸の上に、自分の刀を奥のだった。
「お主にこれをやろう。これは酒呑童子様からの貰い物である。これを受け継ぐのにはお主が相応しい。是非とも使ってやってくれ」
黒色に塗装されており鞘には金の桜の模様、刃は漆黒で、赤い炎の様な模様が刻まれている。
「こやつは霊力でしか扱えない代物。本来はワシには本当の力を発揮する事は出来なかった。だが、人間のお主ならこやつを充分に扱えるであろう...おい、聞いておるのか。零夜を森の外まで運んでやってくれ、それに仲間もだ」
森の中に誰かがいるのか、空狗はお願いをする。
空狗の身体が光だし、灰化が始まるのだった。祓われる時は灰となるが、光出して灰になる事は成仏の証。
「どうやら、時間の様だ。最後にお主から名前を聞きたい」
「神楽沙零夜...悪いな、本気で戦って死ぬ願いからかけ離れてるが、アンタとの戦いは楽しかった。俺はもっと強くなる」
「そうか、頑張りたまえ。本当にワシの我儘に付き合ってくれてありがとう。最後に余計かも知れぬが、あまり復讐に囚われるではないぞ。お主の目を見れば分かる、かつて人間であったワシと同じ目をしている...だから、ワシの様にならぬ様に、仲間を大切にするのだ」
「...言われなくとも分かってるよ」
「ふはは、そうか!では、達者でな!」
空狗は零夜に刀だけ残して消えていった。
鬼の力を借りた時は、その力に適応する為に無理やり身体を強化する。鬼の力を返品した時は、身体中強烈な筋肉痛と疲労が襲うのであった。ギリギリな零夜は視界が真っ暗となるのであった。
「友の願いを叶えさせて、ありがとうな」
最後に何者かが、喋りかけたが、零夜はそんな事気にせずに眠りにつくのだった。
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