第26話 鬼武将②

「もっと速く、もっと強く!!」


 凛は連撃を繰り返す度に、遅くなるどころか、スピードや攻撃の重みが増していく。ユリウスは剣を横に薙ぎ払うと、凛は体勢を低くして避けた。


「良いね。その攻撃!」


 凛の身体が柔らかい事により、低い体勢からでも強力な蹴りをユリウスの腹に当てる。


「影纏い・円廻えんかい


 ユリウスの剣が影を纏い、剣を高速で円を描く様に、竜巻の斬撃を飛ばした。竜巻に飲み込まれた凛は無数の斬撃が襲うのだ。


「ガハッ」


 倒れていく凛は、もう終わったとユリウスは戦闘態勢を解いた、その瞬間に凛はユリウスの近くで技を放つのだ。


火童螺ひどら...」


 炎で作った竜の頭が、無数の大中小の威力の斬撃を前方に空間を埋め尽くすようにユリウスに飛ばす。近距離な為に、全ての攻撃を打ち返せなかったユリウスは数発喰らったのだ。


「...ふふっ、楽しかったぞ。凛」


「...嘘でしょ」


 ユリウスは片手印を結び、凛の視線の真正面に向けて人差し指と中指を負ける。


「霊開・獄骨【牙】」


「...」


凛の視線の先に黒い影が襲うのだった。

 その頃、零夜と空狗は激しい攻防を繰り広げていた。


「断斬!」


「もう、見飽きたんだよ!!アンタの技のレパートリーはそれだけか!!」


 飛ばさせる居合の斬撃を右手で吸収して、3チャージ分の威力が放たれる事に舵輪が3回分左回転に動いたのだ。放たれた威力は大地を切り裂く程であった。

モロに直撃した空狗は、その場で立っていた。


「化け物が」


「褒め言葉かい?もう一ギア上げてみようか。空斬くうざん!」


見えない音速の居合が、零夜の右腕を斬り飛ばした。

 零夜自信も何をされたのか、何も気付けなかったのだ。


「ちっ」


零夜は斬られた箇所に陽公を集中させる。

 すぐに斬られたのであれば、すぐに回復させれば問題はない。それに右腕には膨大な呪力が溜まっているため、回復と再生が尋常じゃない程速い。斬られた腕から神経が伸びくっつくのであった。普通の攻撃の話であれば。


「...なんだこれ?」


 右腕が上手く機能しないのだった。何か自分の腕ではない様な感覚がして、上手く動かせないのである。


「空斬は断斬と違って、空間ごと斬る技である。例え卓越した回復能力を持とうが、すぐに回復する事は難しい。その腕は少々厄介だ。封じさせてもらうぞ」


「死にたいなら、甘くしてくれよ。これじゃ、満足に殺せねぇよ」


「すまないな。ワシは本気で戦って死にたい身であるからな。ワシの我儘に付き合わせて貰っているが、侍に手を抜く行為は侮辱に値するものだ」


「そう。なら、こっちも本気で行くしかねぇな。身体が温まってきてぞ!反転」


零夜は霊力を反転させ、紫色の稲妻を纏うのである。

 

「ほーう、まだ上がるか。なら、見せてみせろ。その力を!!断斬!!」


飛ばさせる斬撃を零夜は吸収する。 

 1チャージ舵輪は右に回る。零夜は稲妻を纏った事により数段階スピードが上がったのだ。


「断斬四連撃!!」


 四つの斬撃を全て吸収し、零夜は稲妻の斬撃を飛ばすのだ。


長月ながつき万円無間弄月まんえんむげんろうげつ


 相当な破壊力を持った無数の斬撃を飛ばした。全ての斬撃を弾き返すが、雷が纏っている事に放電するのであった。

 

「そのまま逝ね」


零夜は数発の稲弾を、放電している空狗に放つ。

 爆発の煙の中から、空狗の腕が飛び出し、零夜の首を鷲掴みにする。


「やるではないか...ガハッ」


血反吐を吐く空狗は零夜を持ち上げる。

 零夜は見下しながら、ニヤリと笑うのだった。


「キツそうじゃん。大丈夫?」


「たわけが。これ如きでワシは死ななん」


「(このワシに傷を与えられる程急成長するとはな...やはり、あの男の息子だ。追い詰められる程強くなる...あの憎き男の顔を思い出すぞ...あれ?こやつの刀はどうした?)」


零夜の左手には刀が無くなっていた。

 零夜はベロを出して、煽るのであった。


「あれ?もう、バレちゃった」


ビリリッ!


 右手の平を空狗に向けると、手の平の口から、刀の刃が飛び出していく。空狗の右目を貫いた事に、鷲掴みされた手から解放し、空狗に貫かれた刀を引き取り、首を切り飛ばそうとした。


「ちっ、今の避けるのかよ。てか、まだ生きてるのかよ」


 放電してまで脳までも貫かれたのに、空狗は咄嗟にバックステップで避けて、首ではなく右腕を斬り飛ばしたのだ。


「今のは危なかったぞ。もし、ワシが人間であるのなら、死んでいたぞ!空斬!!!!」


「やべっ!!」


 真正面で空斬を放たれた事に、零夜は右手で斬撃を吸収しようとするが、そのまま後ろに吹き飛ばせるのだ。


「はぁ〜」


今の一撃で一気に3チャージはしたぞ。エグいな


 少し体力と霊力に限界な零夜は呼吸を整えるのである。斬り飛ばした空狗の腕を持ち上げるのだった。


「ワシの腕をどうする気だ?」


「そう言えばアンタ、邪鬼おにだったよな?アンタの腕を切り落とした記念として貰うぞ」


 零夜は右手の平の口で、空狗の腕を捕食するのだった。


1チャージで10秒か...


「契約の共に『鬼店きてん』よ開店かいてんせよ。鬼品きひんは【酒呑空狗】。全ての財を支払う」


 零夜は自分の首に手の平の口を当てて、血を吸わせるのだった。6チャージ分の舵輪は、左に回転かいてんするのであった。すると、零夜の見た目が変わり、空狗の様な籠手が両手に、左肩には大袖、そして顔には面頬が装着している。


「ほーう、それはなんだ?」


「1分だ。これから1分以内でアンタを祓う。本気で死にたいのなら本気で来い。自分自身に殺させる事なんてないだろ?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る