第24話 鬼門と竜語

「炎竜!!」


「なんだそれは?火遊びに付き合う気はないぞ」


 凛の炎竜を手で薙ぎ払うだけで、消し飛ばした。凛でさえも相手がヤバいと、汗を垂らすのだった。

 ユリウスは剣を天に立てる。そして、そのまま振り下ろすと強力な斬撃が凛を襲った。だが、その斬撃が当たる前に零夜の刀が受け止めるのだ。


「ほーう、今の止められたか」


「ご、ごめん。零夜」


「ああ、まずはここから逃げる事前提で動くぞ」


「うん」


これは冗談抜きでヤバい。こいつを出し惜しみしていたら、普通に死ぬ


 だが、隣には凛がいる。あまり右腕を人前には見せたくないと隣の方を見るが、凛も何か恐れてる様な表情で零夜を見る。


「零夜。もしも、アタシが本気を出しても嫌ったりはしない?」


「たった、数日の付き合いだが。何がどうなろうがアンタを決して嫌ったりはしない。だから、俺を恐れる事はしないよな?」


「しない。アタシは零夜を信じてる」


「それは良かった」


零夜は右腕の包帯を掴み、凛は目を瞑る。


「鬼門開門」

「竜語開放」


 零夜は右腕の包帯を全て取ると、それは赤き肌に黒い模様の様なモノがあった。だが、手のひらには口の様なモノがあり、肩には大きな瞳があった。そして肩には歯車が浮いていて、頭に一本の角が生えている。

 凛は、全身に赤い線の模様が現れる。その模様からほんのわずかな炎が燃え上がっていた。そして背中には炎の翼と尻尾が生えていた。

 2人は開門と開放したことに、身体能力が上昇するのであった。


「ほーう、面白そうだな。かかってこい」


「ユリウス、ズルいではないか!我にもやらせろ」


「ふざけるなよ。君の相手は僕だ。寂しいじゃないか」


アレスも参戦しようとした時、横から豪木が現れる。

  零夜片手印を結んだ。そして、地面に二本指を向けるのであった。


「霊開・極骨【餓車髑髏がしゃどくろ】」


「それは...


零夜の背後に影で使った巨大な骸骨が現れる。

 巨大な骸骨は、潰す様にユリウスに手を振り下ろす。


「蘆屋の人間なら、面白い!お前から倒させてもらうぞ!」


 ユリウスは零夜の方は見て、剣を抜いた。先に仕掛けたのは、零夜と凛。2人同時にユリウスに向かって剣を飛ばした。


「若いな!喝っ!」


2人同時に剣を弾き返して、喝で2人を飛ばした。

 そして影を操り零夜を貫こうとするが、凛が零夜を蹴り飛ばして、攻撃から免れるのだった。


「ちっ、ありがとう凛」


零夜は銃を取り出して、数発ユリウスに発砲する。

 だが、全ての銃弾を剣で弾き飛ばしたのだ。


「そんな、飛び道具で私を倒せると思うなよ」


「燃えろ!!」


凛は炎の渦を作り、ユリウスを飲み込んだ。

 本来、凛の霊開は炎を操る事だが、発火能力はない。だが、竜語開放した事で霊力が自動的に炎の性質に変換し、本当の意味で自由自在に操る事が出来るのだ。渦に飲み込まれた、その隙に零夜は飛び込み刀で渦ごとぶった切る。


睦月むつき月影牙華げつえいげっか


 残像すら置き去りにする程の一瞬の間で放たれる一太刀。だが、ユリウスを切れるだからか、岩に当たる様な感覚がする。 


「良い剣だ。だが、まだ未熟」


「マジかよ。力いっぱいで斬ったつもりだが...」


「お前、名前は?」


「神楽沙零夜だ」


「そうか。零夜!お前、私の...」


『連れてきてくれ...』


「...ちっ、まぁしょうがない。零夜、奥に向かえ、そこに寺があるから、そこで待っている奴と話してこい」


「あ?何言ってんだ」


「悪い話ではない。ここにいる人間を殺さないと誓おう。いや、お前ら人間で言えば縛りをしてやる。だが、通れるのはお前1人だがな。そこの小娘はここで待ってもらう」


零夜はチラリの凛の方は見る。

 凛も目が合い、凛はうんと頷くのだ。


「零夜、アタシは大丈夫。こいつの言うとおりにしたほうが良い」


「分かった...信じるぞ」


「ああ」


 零夜はユリウスの言葉通りに、ユリウスが親指で指した方向へ向かう。取り残されたユリウスと凛は黙ってお互いを見る。


「ねぇ、お前らの目的は何?」


「ある男からの最初で最後の我儘を聞いているんだ。私達はアイツに礼があるからな。だから、アイツが求めている人間を探していた...それがあの男かも知れない」


「...死なないよね?」


凛は零夜が殺されないかと心配になる。


「死にはせん。さっき殺すとかは言ったが、それは単なる本気で来させるためだ。本当に殺す事はせん...相手から敵意を向けなければな」


「そう...ねぇ、アタシともっと戦ってよ」


「何?」


凛は笑みをこぼし、ユリウスに向かって剣を向ける。


「このままじゃ、零夜の横に立つ資格がない。だから、もっと強くなりたい。お前と戦っていたら、強くなれる気がする」


「...ふははっ!戦闘狂め。良いだろう!名を聞こう」


「アタシは凛」


「そうか!退屈凌ぎとして、遊んでやろう!凛!」


2人の剣がぶつかり合う音が、森の中を響くのだった。

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