第22話 土地神

「やぁ!」


「不法侵入...」


 次の日の夜、零夜はリビングで勉強していると、ベランダから音が聞こえ、カーテンを開けると豪木の姿がいた。一応ここは18階のはずだが、どうやって登ってきたのかと少し気になる。


「わぁ!豪木!どうしたの?遊びにきたの?」


 豪木の姿を見た凛は、手を挙げて両手でハイタッチをする。


「別に来るのは良いけど、普通に入ってくんね?誰かに見られたらどうするんだよ。呪怪を祓っている以外で私事で力を使ってる所を見られたら、相当重い罰があるんだろ?」


「お?陰陽天道の十二ケ条件の其の二のことをかい?ちゃんと勉強してるのね、関心関心」


 陰陽師になる時、沢山の守らなくちゃいけないルールがあるが、特に守るべきな12のルールがある。其の二は、特別な理由以外、自己都合で霊力を行使してはならぬっと言うわけだ。もし、これを破れば重い罰や最悪犯罪者扱いとして陰陽師協会に追われる事になる。


「でも、僕は凄いからバレる事はないよ〜そこん所ちゃんとしたるからね」


 ちゃんとしてる言葉に程遠い豪木にあまり説得力ないと、結構不安を覚えるのだった。


「そんな事より何しに来たんだよ?」


「昨日に言っただろ?君に嬉しいプレゼントをするって」


「そんな事言ってたっけ?」


 あまり覚えてない零夜は、一体何をくれるのかと不安が襲う。


「今日は2人で任務に行ってもらう」


「えぇー、俺試験あるんだけど...」


「知ってるよ。本来はアイちゃんと九條ちゃんにも誘おうと思ったけど、アイちゃんと九條ちゃんも学校の試験があって断られたんだ」


 学校は違えど、どうやらアイが通っている学校も期末試験の期間の様だった。


「だから、俺も...」


「どうせ、君は勉強する柄じゃないでしょ?それに、僕知ってるから、君戦う事に楽しさを覚える、戦闘民族タイプな人間って」


「なんだ、そのタイプは...別に俺はそう言うのじゃねぇ」


「またまた〜まぁ、今回君に受けてもらうのは、天災級の呪怪だよ」


「ふざけるな。殺されるじゃねぇか」


 上級でさえも手も足も出なかったので、更に上の上の上である天災が相手だと、瞬殺する恐れがある。


「君には早く経験を積ませたいからね。大丈夫、僕がサポートするから、天災を体験してみない?」


「...そんな天災を払う事を遊園地感覚の奴からのサポートがあんまり信用出来ないけどな...まぁ、経験も大切だし、行っても構わない。どうしてもってならな」


「はいはい、ツンツンデレデレですね」


ピキッ!


「んじゃ、準備よろしく!下で待ってるから」


「おい!」


豪木は18階からのベランダから降りるのであった。

 零夜と凛は急いで支度をして、マンションの入り口前に待っている豪木の車の中に入る。


「やぁやぁ!待ったよ」


「悪い。少し遅くなっちまった」


「いいよいいよ!言うて20分ぐらいしか待ってないし」


 零夜は竹刀袋と2丁拳銃が入っているケースを持っていた。凛はギターケースの中に赤霄剣をしまっていた。


「その装備で大丈夫?僕の家からもっと質の良い刀を貸すよ?」


「いや、これで良い。特に能力とかはないけど、今の俺には丁度良いからな」


 不滅刀ふめつとう。良業物認定されいている貰い物の霊宝。霊力が宿ってあり、零夜の霊力を流し続けていら間、切れ味が良くなり壊れる事も錆びる事もない。力加減が苦手な零夜にとってうってつけの刀。


「未熟者の俺に、師匠から貰ったものなんだ」


零夜は大切そうに抱えるのであった。


「それで、これからどこに行くんだ?」


「神楽沙君。何故、この街に呪怪が少ないと思う?」


「さぁ?」


確かに陰陽師になる前からでも、ちょくちょく見かけて倒してたけど...1ヶ月に一回程度。それに1番高い階級でも中級。


「それは土地神が居るんだよ」


 土地神とは災害や戦乱から住民を保護する街や土地の守護神。


「なら、逆に祓ったらダメだろ?」


「それもそうだけど。土地神はね、人間の負の感情を吸収してしまうんだ。この街はそんな悪人は居ないかな、300年以上も守っている。ほんの少しの負の感情が少しずつ蓄積され、悪神と成り代わる。悪神は災害や疫病などを齎す最悪な神。この街にいる悪神は、あと数ヶ月で成り代わる可能性がある。数十年生きたい土地神なら兎も角、この街には300年だ。天災級以上はある。土地神そして、悪神に成り代わろうとしている、弱っている状態を祓うのがベストだ」


今回祓う呪いは、300年生きた天災級の呪怪。

 この戦いこそが、零夜と凛の人生の歯車が動こうとするのであった。

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