第16話 呪霊少女⑦
「は?」
呪霊少女の背後に大きな木が生えてきた。その木か雪の様な白い何かが降ってくる。
「スギの木?...?!」
「んぐっ!」
白い粒の正体はスギ花粉。
零夜と黒恵とアイは、吸ってはい行けないとすぐに気付いた。3人は手で自分の口と鼻を隠し、零夜は凛の口と鼻を抑える。
「無理だよ。花粉は手では防げない。さぁ、眠りなさい。良い夢を...おやすみ」
やべっ
零夜の視界は真っ暗になる。
次に目が覚めた時は、屋敷の中だった。
「ここって...実家じゃねぇか」
その景色は零夜の実家であった。
「零夜様?」
「...は?なんで居るんだよ...
それに、あの時より成長してる?まるで、俺と同年代...
爽やかな水色の髪色に、肩まで伸びて髪を後頭部で一つにまとめて垂らしていた。着物姿の少女の名前は
「なんでって言いましても...今日は零夜様からのお誘いで来たのですが?」
零夜になんでいるの?と言われ、少し戸惑った様子で首を傾げる。
...これは、幻想領域と同じ原理か?でも、なぜあの呪霊が、奏の事を知っている?...俺の記憶から読み取り自動的に作り上げたのか?...本当、最悪な気分になりそうだ...死んだ人に会わせるなんて...
岩倉奏はそれは神楽沙零夜の婚約者であり。昔、零夜があの事件から後悔している、守りきれなかった6人の1人。
「零夜様?」
「...偽物と分かってるのに」
「え?え?ど、どうしましたか?」
零夜は強く抱きしめる。
いきなりの出来事に、奏は戸惑っていた。
そして、零夜は少し恥ずかしそうに、頬を掻く。
「...」
「零夜様?」
「えっと、少し歩こうか」
零夜達は屋敷を出て、河辺の近くを歩く。
「...」
偽物とは言え、久しぶりの婚約者と散歩する事に、零夜はどう話せば良いのか分からなかった。
てか、その前に、ここからどう出れば良いんだろうか。まさか、本体がどこかに居るって事だよな?
零夜はこの世界からどう出れば良いのかと、考えてると、零夜は奏の方へ見る。
「奏は、最近元気してるか?」
「なんですか、その久しぶりに会った様な会話は?昨夜も一緒に居たんじゃないです。今日の零夜様はおかしいですよ?...本当に、あの時からずっとおかしいです」
「...あの時から?」
「覚えていませんか?あの赤い夜空の日を」
すると、奏は不気味な笑みを溢す。
それに、あんなに青かった空が夜となり、周りから炎が燃え上がってくる。まるでこれは、10年前の景色と同じ風景だった。
なるほど、自分にとってのトラウマだった出来事を悪夢として見せるのか...
「熱い...熱い...あの時、なんで助けてくれなかったの?熱いよ」
「それはすまないと思っている。あの時は俺に力がなかった」
そして奏は燃え上がり、10年前の時と本来の姿に戻る。零夜はこの悪夢から覚める為に、目の前にいる奏の首を、霊力の刃で落とそうとした、だがその刃は首に当たる寸前に止まる。
「...偽物と分かっていても、こりゃ辛いな」
「なんで?なんで?私を殺そうとしてるのですか?やはり、私の事なんでどうでも良かったのですね...病気の私なんて、いりませんよね?」
「っ...」
奏は霊動脈病と言う不治の病に侵されていた。
それは待機中にある、陰公と陽公を必要以上に摂取してしまい、意識していないのに関わらず、勝手に霊開が展開してしまう病気。自分でコントロールも出来ないため、下手をすると、全ての陰公と陽公使い切って、命を消費する
「分かっていますよ。私は病人、病人な私との婚約なんて面倒ですよね?だから、あの時助ける事を辞めて、私を見殺しにしたのですよね?」
大丈夫...こいつは偽物だ。
「な訳ねぇだろ。あの時は俺が弱かった。もっと、あの時から強くなろうとしていたら、あの時間を防ぎられた...守れなくて、ごめん」
「死んでごめんはないですよね?私の死ぬ前に、幸せに生きて下さいと言いましたよね?本当は、早く死ねって言いたかったです。貴方も炎に包まれて死ぬ痛みを感じてさせたい!なんで、私だけが!」
すると炎の勢いは強くなり、零夜までも飲み込む。
幻覚...でも、熱い...
「貴方だけが生き残るなんてズルい。死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね...」
奏は壊れたか様に、同じ単語を繰り返す。
「なんで、私は病気にかかって、貴方は健康な体で生まれたのですか?夫婦は痛みを分かち合うべきです...本当、昔から貴方の様な自分勝手な性格が大っ嫌いです」
「...やっぱり、偽物だな」
零夜は最後の言葉に、優しく微笑むのだった。
もしかしたら、もしかしたら本物かも知れないと頭の中によぎったが、最後の言葉によって偽物と分かった。
「確かに俺はガキの頃は自分勝手な所はあった。だから、あの事件をいち早く気づけなく、色んな人を亡くした。もしかしたら、奏は俺の事を憎んでるかも知れない...でも、アイツが俺を嫌いって思う事はない。アイツの顔でアイツが言いたくない事を言うんじゃねぇ!」
零夜は霊力の刃で、奏の首を切り落とした。
「なんで?...なんで!なんで!なんで!なんで!なんで!なんで!なんで!なんで!なんで!」
首を落とされても、零夜の方は恨みがこもった目で睨みつけてくる。
「なんで、貴方がそれを断言できるの?貴方は奏ではない、なんでそう言い切れるの?私は貴方が嫌い、これは私の気持ち!分かるわけがない!」
「うーん...昔から一緒に居た家族みたいな存在だ。分かる理由は、家族だからだ。それで良い?」
「...ふっ、ふふ...お兄さん、凄いね。おめでとう、私の霊閉を見破るなんて」
「花粉を吸わされた時、何かをすると気づいたからな。だから、相手が幻覚を見せてるって分かってた。もし、不意打ちとかでこの術に掛かっていたら、結果は違ったかも知れないな」
「へぇ〜、勉強になる」
首だけだった奏は消滅し、空間も真っ白な空間に変わる。そして目の前に、呪霊少女が現れるのだった。
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