第15話 呪霊少女⑥
「あの、馬鹿!!資料と違う内容じゃねぇか!神楽沙君の霊開は影を操る操影術じゃないのか!」
零夜達の後ろで、ずっと観覧していた橘は、豪木が書いた資料に、零夜の情報が全然違っていた事に、適当な仕事をしていると怒りが込み上げていく。だが、橘の不満を聞こえた黒恵は喋りかける。
「橘さん。土御門さんから貰った資料の情報は合っていると思います。私も彼が操影術を扱っていたのを、この目で見ました」
「なら、あれはなんだ?影を操るのに、あまりにも掛け離れない能力じゃないか!もしかして、霊開を2つ使えるって言うわけ?」
「歴史上、霊開を2つ持つ人間は存在しないと分かっています...例え、あれが2つの性質を持った一つの霊開と考えても...あまりにも、2つとも強力すぎる」
アイの様に2つの霊開の性質を受け継ぐ事はあるが、完全に受け継げる事は出来ない。どちらも劣化版として受け継がれる。半分ずつの力や、4:6などと受け継がれる。だが、明らかに零夜の影と雷はどちらも100%の力を発揮していた。
「もし、本当に霊開を2つ持ってるのなら...これは、上にどう報告すれば良いのやら」
霊開を2つ刻まれている事は前代未聞である。上層部はそれを見逃す訳もなく、下手をしたら奴隷や実験体の様に扱われる可能性も大きい。
そんな事なんて気にせずに、零夜は大量の雷を纏わせて、見えないスピードで次々と薙ぎ倒していた。
やっぱり、こっちの方が合うね。操影術は応用も効くし、色々と楽なバランス型。だが、俺はスピード勝負を得意戦い方をする。スピード特化と高い火力を出す茈雷術は霊力の消耗は激しいが、強力な呪いを祓うのにうってつけだ。
「陰陽師なら、こんな分霊より、アンタ自身で来い」
「後輩な癖に生意気ね。でも、嫌いじゃない。結界術【
砲撃の様に飛ばした雷の塊を、結界によって分解させた。呪霊少女が雷の塊に意識を向けていたほんの一瞬に、零夜は回り込み強力な雷が纏った蹴りを飛ばす。
「結界術【
防御結界を生み出し、零夜の攻撃をバリアの様なモノで防いだ。
「結界術【
結界のドームを手の平サイズに擬縮させて、零夜に放った。その戦いを見た橘は目を大きくして驚くのだった。
「呪霊なのに、結界術の解、硬、発を使っている?一体なんなのよ」
【
結界で霊開や霊力を包み、分解させる結界術。
【
盾の様な結界を作り身を守る結界術。
【
結界を凝縮させて、貫通力が高い鉄砲の様に放つ結界術。
法術師である橘は、すぐに結界を組み替えて、違う結界術を展開させる事は、法術師の中でも凄技だと分かる。
「あれ、確か生前は最上級陰陽師って言っていた」
「最上級陰陽師?!」
最上級陰陽師とは、才能が無ければ辿り着けない天才の領域。努力だけで登り詰められるのは上級陰陽師まで。最上級まで行けば、その強さは別格と言われている。
「お兄さん、このままじゃ、平将門には勝てない。あの強さは理不尽すぎる。霊開を奪われたからって、刀を奪われたからって、そんな理不尽は通用しない相手。結界術【
「なっ?!」
呪霊少女に飛び込もうとした途端、零夜の手足に結界が貼り付けられ、その物凄く重い重りに地面に落ちていくのだった。
「強さは完璧なのに、陰陽師としては未熟」
「...」
「私、言ったよね?全員で来い。陰陽師は辿ればただの人間。人間は呪いに勝てない。だから、仲間と共に戦う。それが人間。たとえ強くても、1人じゃ限界が来る。全員で来い」
ずっと優しかった表情から、零夜を見下す様に睨みつける。呪霊少女が結界を飛ばそうとした時、黒恵がサッカーボールの様に蹴り飛ばす。零夜の前に、黒恵と凛とアイが守る様に飛び込む。
「あっははは!零夜、ボコボコにやられてるんじゃん!」
「緋村さん!笑い事ではありませんよ!」
「...聞いてた話より、思ったより弱い」
「4人組...その時代でも基本である
四天組とは、4人一組の事を示す。陰陽師は1人で活動する者や2人で活動する者がいるが、基本的に多いのは4人組とされている。
「悪い、次はちゃんとやる」
「うーん、霊力の流れ的に陰陽師になってから、そんな経ってないのかしら?良いよ、教育してあげる。先輩としてね...結界術【
無数の小さな結界玉が、機関銃の様に連発する。全ての【弾】を、凛は剣で弾き返す。
「おっらぁ!!」
炎の斬撃を呪霊少女に飛ばす。だが、【硬】で防ぎられる。その隙にアイと黒恵は両側から攻めてくる。
「なっ?!結界の二重発動?!」
黒恵とアイの攻撃を、両手から2つの【硬】を作り上げて防いだ。
「ナイスタイミングだ!」
両手は黒恵とアイに向けていた事に、ど真ん中に隙が出来る。零夜はその隙に、右腕を呪霊少女に伸ばし、親指を地面に向けて、人差し指と中指と小指を立てる。
「2人とも、離れろ!!...貫け」
左腕で右手の甲に触れて、弓の様に引くと、雷の矢が現れるのだった。
「
2人が離れようとした時、呪霊少女は零夜の攻撃を防ごうと【硬】を展開しようとしたが、それは間に合えずに、普通の矢とは思えない速度で、呪霊少女に激突し、爆発したのだった。
「あっはは!それはびっくりしたよ。生前だったら、今のでやられてたね。なら、私も見せないと、先輩としての威厳を...」
呪霊少女は印相を結んだ。
「
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます