第14話 呪霊少女④

「だから、お願い貴方の血を頂戴」


「どのくらいだ?」


「ふふ、話が分かる人で良かったわ。貴方の血をくれるなら、全て没収したのを返すから、代わりに貴方の血を頂戴。この薔薇が赤く染まり上がるまで...だから、私の結界内にいる5人じゃ足りない。少なくとも100人は欲しい」


 零夜は六道眼から、普通の状態では勝てないと分かっていた。だから、戦って祓うより、未練を叶えて成仏した方が安全で効率が良いと考える。だが、呪霊少女からの答えは戦う事は避けられなくなってしまった。


「それは聞けない相談だ。それを塗るのに、そんなには必要ないだろ?」


「いるよ。いっぱいね。ある呪怪を殺すのに、100人の人間の魂が必要。だから、お兄さん。頂戴?」


「はぁ〜」


 呪いにとって、復讐の負の感情は強力で相性が良い。この呪霊少女の未練は復讐だからこそ、ここまで強力な呪いを待つ事になった。


「なら、俺が代わりにそいつを祓ってやる」


「アッハハ、お兄さん。かっこいい!...でも、無理だよ。今のお兄さんには勝てない。あ、それを解放すれば、牙が届くかもしれないね?すごいね、それ」


呪霊少女は零夜の右腕に指を指す。


「アンタ、色々と詳しいな。生前は普通の人間じゃないだろ?」


「うん。私も君達と同じく陰陽師だったよ。昭和の陰陽師だった...あの、平将門を殺したくて殺したくて」


「はぁ?平将門は700年前以上前に大手町で封印されたんだぞ?」


「うん。されたよ。でも、移転をしようとした、どこかのバカの人間どものせいで、封印がほんの少し解かれてしまってね。私と彼を含めた10人の陰陽師の命に引き換えに再封印に成功した。だから、許さない。彼をあんなな事したアイツを!!」


「...なら、俺が代わりに祓ってやる」


「無理って言ってるでしょ?」


「アンタを倒せば良いんだよな?」


「...舐めてるの?私はこれでも元最上級陰陽師よ?」


零夜が倒すと宣言した途端、呪霊少女は顔色を変える。


「やってみねぇと分かんねぇだろ?このまま100人犠牲にされるより、俺らで祓った方が効率良い」


「はぁ、良いわよ。なら、私に勝ってみなさい。貴方達全員で掛かってこい」


ん?


「ちょっ、待てよ!せめて、刀の霊開を返してから...!!」


 呪霊少女は手を強く叩くと、学校の形が変わる。いや、正確には元の空間に戻った。豪木から聞いた、結界領域の本来の姿に戻ったのだ。


「神楽沙君!!」


 それによって、黒恵達とすぐに合流出来た。だが、再会した事に喜ぶ時間すら与えてくれない。数百超える呪霊少女を生み出し、ゾンビの様に零夜達に向かう。


「九條さん!俺らは霊開を奪われている。それに俺は刀まで奪われたままだ」


「分かりました。天武強式・羅生門らしょうもん!!」


 体温が急上昇し、 全身が赤くなり体から蒸気が上がる。そして黒恵の毛先は赤く染まる。羅生門は霊力で血流を加速させ、細胞一つ一つ強化し、爆発的に運動能力を上げる。以前は2秒で限界だった黒恵は、本来の霊力量が戻って来た事により、数分間は扱える様になった。


「天武四式・羅羅つららりゅ流星界群うせいかいぐん


数十体の呪霊少女に両腕で大量のパンチを放つ。

 凛も大量な霊力を剣に流し、燃え上がる炎を数体の呪霊少女を飲み込む。


「霊開が使えるなら、もっと行けた」


「なら、大人しくしてて。ボクが片付ける」


 右腕には大鎌、左腕には大鋏を持つアイ。大鋏を広げた状態で、ブーメランの様に飛ばした。左手の指を機械に用に動かすと、ブーメランでもない形をしているのに、大鋏はアイの方へ戻ってくる。


「すげぇ!それ、どうやるの?」


「ボクの霊開...毒屍血操術どくばねけっそうじゅつ。ママの血を操る力とパパの毒を生み出す、2つの力の性質を持った力」


 霊開はほとんど遺伝からによるもの。稀に自分オリジナルな霊開を刻まれて生まれる人間もいるが、更に稀に2つの霊開の性質を持った能力を刻まれて生まれる人間もいる。


「ボクの血や相手の血を操り、ボクの血に毒の成分を含ませれば強い!」


血の糸で大鋏を操作していた。

 

「フヒヒヒヒッ!」


「そろそろ、俺も活躍しないとな」


どうせ、操影術を奪われたままだ。俺の霊力の性質を


ビリリッ


「え?」


「...」


「は?」


 黒恵、橘、アイは、零夜の腕に走る紫色の光を見て驚いていた。霊開は、1人につき一つしか刻まれない。二つ持つ事は、伝説の陰陽師安倍晴明あべのせいめいでさえも一つしか刻まれていなかった。零夜の霊開は影を自由自在に操る操影術の筈。だが、零夜の腕には紫色の稲妻が走っていた。


「ふぅ、やっぱりこっちも良いね」


 茈雷術じゅらいじゅつ。霊力を紫色の雷に変換させて、自由自在に操る霊開。零夜は、霊力を反転する事に茈雷術と操影術を使い分ける事が出来る。だが、2つ霊開を持っているが同時に操る事は出来ない。


「全員、殴殺だ」

 


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