第13話 呪霊少女③

「緋村さん、霊開を没収されたけど、戦える?」


「ん〜、緋村じゃなくて、普通に凛って呼んでよ」


「分かった」


「それで、霊開な事は大丈夫だよ。アタシの霊開は火炎操術。自由自在に炎を操る事なの。でも、アタシ自身には発火能力はない。この、赤霄剣から発火する炎を操る」


「へぇ、俺のと似てるな」


 霊宝とは、霊力や強力なモノには霊開が刻まれている武器。効果によって階級が存在する。


ナマクラ

 霊力すら刻まれていない。例え、斬れ味が良くてもナマクラ扱い。


業物わざもの

 霊力が刻まれている。


良業物よきわざもの

 相当な霊力が刻まれている。それか、霊力を流す事で霊開を展開できる。


大業物おおわざもの

 大量の霊力が刻まれていて、霊力を流さなくとも霊開を使える。例え霊力を持たない人間にでも、呪いを祓える。


最上大業物さいじょうおおわばもの

 一気に数十体の呪怪を祓えるほどの強力な霊開。中には霊力がないと扱えないモノもある。噂では呪怪などの魂が刻まれていると言われていて、神の力が宿っているモノもある。


 これはあくまで日本においての霊宝の階級。凛の様な中国などと、外国から生まれた霊宝を全て国外霊宝と言う階級と言われている。


「だから、炎を出す事なら出来る」


凛は剣に炎を纏わせる。

 先ほどの様に竜の様な炎を使えないが、霊力を流せば普通に炎を出す事が出来る。


「零夜は大丈夫なの?」


「大丈夫だろ。取られたのは霊力じゃなくて、操影術の霊開だからね」


「おお!綺麗!」


ビリリッ!


零夜が、凛は綺麗と呟いた。

 その頃、橘、黒恵、アイは合流するのだった。だが、3人の中にもう一体合流したモノがいる。それは呪霊教師。


「...うーん、危害加えませんね?こちらから攻撃しなければ呪いの効果は発動しない仕組みでしょうか?」


「じゃない?敵意ないの普通に感じとれるし。大体こう言うのに攻撃して呪いの効果を発動させた方が面倒っぽい」


 相手を見つけ次第攻撃をする零夜や凛ではなく、黒恵とアイは先に相手の特性を伺ってから攻撃をするタイプ。呪霊教師は、こっちから危害を加えない限り、呪いの効果を発動しないと、すぐに見極めたのだ。


「ブラッディフォールさん、神楽沙君と緋村さんを探しましょう。先に2人と合流した方が、お互いとも安全」


「...ブラッディフォールは長い。普通にアイって呼んで、こっちも黒恵って呼ぶから」


「分かりました。アイさん」


「それで、あの白髪の男って強いの?」


「神楽沙君の本当の力は、まだ知りませんけど...これだけは言えます。めちゃくちゃ強いです、上級陰陽師よりは上かと判断してます」


「ふーん」


「緋村さんはどうですか?」


「ボクもあんまり知らない。最近会ったばかりだから...でも、これだけは言える。初任務の時に見せた、あの女の力は...純粋な怪物。これが相応しい言葉」


「なるほど...」


「(実力は上級陰陽師以上の神楽沙君と上級陰陽師の緋村さんなら、大丈夫ですかね...)」


「...黒恵。美術室に行こう」


「え?」


アイは校庭から学校を眺める。

 呪霊が居たのは美術室と言われている。なら、見た目が学校の幻想領域も、本体は美術室にいるかも知れないと考えるのだ。その考えは、零夜も考えていた。


「一旦美術室見てみるか。多分、俺と同じ考えを、九條さん達も思いついただろ...凛?何してんの?」


凛はキョロキョロと学校を眺めていた。


「アタシね、学校行った事ないの。漫画でよく出てくる学校っていう存在に少し気になってて」


「...そうか」


「まぁ、いいや。美術室だっけ?行ってみよう!」


「おう」


2人は美術室に向かう。

 やはり美術室には本体がいるかも知れない考えは当たっていた様だった。美術室の扉だけ、無数の板が貼り付いていた。


「生徒達...ソコハ、立チ入リ禁止...校則違反ニナル」


 徘徊する様に学校内を動き回っていた呪霊教師は、何故か美術室だけ何かを守る様に入り口の前に立っていた。


「はぁ〜面倒だな。なら、これを没収できるならやってみろ」


 零夜は包帯を巻いている右腕で、霊力を込めずにドアをぶっ壊した。


「オ前...校舎破壊...右腕...没収...」


「ほれよ、これを没収できるなら、なおさらありがたい」


「没収...没収...ボッ、ボッ...ボボボボボ」


「より、強力な呪いの方が勝つって訳か」


 零夜の右腕を没収しようとした呪霊教師が壊れたロボットの様に壊れる。


「俺の刀、早く返してくんねぇかな?アレ意外と大切なんだよな」


 攻撃すると没収されるを分かってて、刀を奪われた事に、本当は心中で苛立ちを覚えていた。だが、右腕で攻撃しても没収されないと分かった途端、右腕で呪霊教師の頭を鷲掴みにして持ち上げる。


「フフフフ、お兄さん、君の刀はここだよ」


 声を聞こえる方は視線を移すと、机の横には零夜の刀が置かれていた。だが、そこに座っていた者もいる。


「...アンタは、呪霊少女か?」


 先ほど戦っていた呪霊少女が、人間な様な表情で、椅子に座っていた。目の前には絵の具で描かれていた黒い薔薇のキャンバス。


「アンタ、喋れたのか?」


「うーん?だって、私人間だよ?...あー、私の子達の事言ってるのかな?確か、貴方達の言葉で言うと、分霊わけみたまだったかしら?」


 分霊とは、本来は神社に複数の祭神が祀られる場合の事を示すが、もう一つの意味は呪霊などの魂を分けて、手下の様に動かす事も示す。


「彼も陰陽師だったの」


「は?」


 いきなり話し始めた呪霊少女は、黒薔薇の絵に筆を当てた。


「彼の好きな花は薔薇だったの...でも、何故か赤い薔薇が描けない」


すると呪霊少女は涙を流し始める。


「赤い絵の具がないから、黒い薔薇でしか描けない...だから、お願い。貴方の血を頂戴」

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