第11話 呪霊少女

「さて、今回の任務は、ある学校に潜む上級呪怪を祓ってもらう」


「学校?なら、今夜実行か?」


 生徒や教師がいる中、呪怪と戦うのは他の一般人は危険となる。なら、誰もいない夜中に祓うのだろうかと考える零夜。


「だと楽だったのにね。その呪怪は少し特殊でね、昼の12時から1時の1時間だけしか現れない。それに平日限定ね」


「それでしたら、どう接触すれば良いのですか?流石に堂々と入るのも大事おおごとになりますし」


「ここで僕の良い作戦を伝えよう」


「まともだと良いですね」


豪木の作戦とやらに、あまり期待していない橘。

 豪木はルービックキューブサイズの真っ黒な四角いモノを取り出した。


「神楽沙君と僕が消防設備点検と装って、橘ちゃん達は、この僕が作った結界領域の中に入って貰う。そして、僕がなんとか時間を稼ぐから、神楽沙君は、呪怪が居ると言われてる部屋に向かい、その呪怪を神楽沙君と一緒に入り込み、みんなで祓ってもらう」


 結界領域とは、術者の霊力量によって、四次元の世界を作り上げる。別の次元を作り出し、大きな呪怪や強力な呪怪などを封じ込めて、封印したり、その中で祓ったりする道具。


「東京ドーム並みの大きさはあるから、暴れても大丈夫!」


「お前が考えた作戦の割には常識があるじゃん...まぁ、誰でも思いつきそうな作戦だけど」


「...泣こうかな」


 それから6人は呪怪が居ると言われている、中学校に向かう。零夜と豪木は作業服に着替える。


「わぁ〜神楽沙君似合ってます!」


「そう?ありがとう」


「僕は?僕は?」


「神楽沙君、似合ってるじゃないか」


「あ、ありがとうございます」


「ねぇ、僕は?」


「さて、神楽沙君以外は、結界領域に入って貰おう。このお札を持っていれば、結界の中を出入り出来るから、無くさない様にね。まぁ、もし閉じ込められても大丈夫だけど」


「ねぇねぇ、なんで誰も褒めてくれないの?」


「私はあくまで現場監督なので、本当に危ない時以外は私達は手伝えないからね」


「「「「はい」」」」


「あれ?みんな無視?俺一応天極級なんだけど...」


 無視される豪木は本当に泣きそうな表情を浮かべる。そして橘達は結界領域の中に吸い込まれる。


「すげぇ」


「でしょ?君も鍛えれば、これを作れる様になるよ」


「へぇ。時間があれば教わろうかな」


「あはは、僕が教えてあげるよ」


 それから2人は学校の中に入り、校長だと思われる老人と話し、学校の中にある火災報知器を点検するフリをする。


「12時になるまで、あと20分ある。僕が良いタイミングの時に美術室に行って貰う」


「了解...ん?」


「それにしても点検ってどこ見ればいいんだろう?えっと、資料では...ふんふん、ここをこうして。あはは、これって面倒だな。ポチポチっと、これで良いのかな?神楽沙君、この資料を見てやってみてよ...ん?あれ?」


 隣に居たはずの零夜が消えた事に、周りをキョロキョロしていると、数十人の女子中学生に囲まれていた零夜がいた。


「あの、お名前はなんですか!」

「わぁ、イケメン!!」

「何のこの腕の筋肉!!触らせて!!」

「ライムやってますか?!交換しません」

「きゃーー!!イケメンすぎ!!握手して!!」

「ちょっと、まだ授業中なんだし、お兄さんは仕事中だから邪魔しないの!」

「「「「「はーい、先生〜」」」」」


「...イケメンは死ね」


 女子囲まれモテモテな零夜に対して、困った表情を浮かべても、豪木は無視をするのだった。

それから時間になったら、零夜は結界領域を持って美術室に向かった。


「やべぇな」


 まだ、部屋に入っていないのにも関わらず、美術室の中から感じ取れる第六感と言える危険信号が鳴り響く。恐る恐るドアを開けると、制服姿の女性が立っていた。この学校の人間なのかと考えるが、先程の女子中学生の制服はブレザーだった、だが目の前にいるのはセーラー姿。窓の外を眺めながら、風で靡く黒いサラサラした黒髪。


「違う。この感じ呪霊か!」


 呪霊とは、呪怪は人々の呪いから出来たモノに対して、呪霊はその人間が死に、その者の憎しみや怒りによって現世に残った人の呪い。簡単に言えば怨霊。


 六道眼で見ると、黒いオーラを纏っている事から、呪霊だと分かる。零夜の存在に気づいた、呪霊はニッコリと笑うのだった。

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