第10話 悪魔祓師

「やぁやぁ!今日はちゃんと持ってきたかな?」


 あれから3日が経った。わざわざ学校を休んでまで豪木の会うのであった。優等生である黒恵が、休みが多い理由は陰陽師の任務に行っていた事が分かる。


「ああ、言われた通り持ってきた」


「はい」


 普段呪怪を祓う時に使っている黒恵の籠手と脛当て、一般人として暮らしていた零夜には、対呪霊用の武器がないと豪木から思われていたが、零夜の師匠から譲り受けた日本刀があるそうだ。竹刀袋の中に入れて持っている。


「ちゃんと管理するんだよ。特に神楽沙君はね」


 本物の日本刀に拳銃を隠し持っている事から、もし見つかれば大ごとになってしまう。


「まぁ、もし見つかっても、本部がなんとかしてくれるからね」


 一応政府公認な為、もし銃刀法違反で捕まっても、最終的に釈放される。だが、捕まってしまった陰陽師には始末書を書かされ、違反切手を渡される。違反切手が溜まるほど、階級を下げられる事もあり、最悪陰陽証を剥奪される。


「だから、気をつけてね」


「車の免許みたいだな」


「あっははは、言えてる」


「それで、今日はどの様な要件なんですか?武器だけ持って来てっだけのメールじゃ、分かりませんよ」


「今日はね、一回ある所に行ってもらう。そこで一緒に上級案件の依頼を受けてもらうよ」


「上級案件って...一応私達初級と下級の階級なんですよ?」


 上級の呪怪を祓う依頼には、最低でも中級陰陽師4人以上必要となる。上級を祓った経験はあるとは言え、初級の零夜と下級の黒恵にとって、依頼を受けるのに条件は揃っていない。


「大丈夫、大丈夫。僕が現場監督として同行するから、特例として任務を行えるさ。この天極級の僕が居るから、上級だろうが災害級だろうが、無問題モウマンタイさぁ」


 なんで、いきなり中国語?と2人は心の中でツッコむが、敢えて大人のノリを無視して、銀座にあるカフェ店に向かう。


「ちょっと、待っててね。すぐに来るらしいから、好きなの頼んで良いよ、僕持ちだから、遠慮なく」


「...」


零夜はメニュー表の値段を見て絶句していた。

 コーヒーだけでも1200円、よく見る苺のショートケーキですら2100円となっていた。ホールではなく、1人で食うカットサイズ。


「私はカフェマキアートでお願いします」


「おっけ〜...神楽沙君は?」


「...お、俺はコーヒーで」


「えー?足りるの?何か軽く食べて来なよ」


「...蜂蜜入りのパンケーキをお願いします」


「おっけー」


 あまりも高い値段から、零夜は比較的安い物を注文する。


「お?来た来た、おーい!ここだよ〜」


 他の人が居るのにも関わらず、大声で待ち人を呼んだ。注目を浴びた事に、恥ずかしそうに黒恵は頭を抱えるのだった。待っていたのは3人組の女性だった。 緑色のポニテはサングラスを外して、豪木を睨みつける。


「やぁやぁ、橘ちゃん」


「ちゃん付けは辞めろって言ってるだろ!同年代でも、陰陽師として私の方が先輩だぞ」


「でも、階級は僕の方が上だよ?」


「死ね」


「えーー」


 死ねと言われた豪木はショックを受けるのだった。そして橘と呼ばれた女性は、先ほど嘘かな様な、優しい笑顔と変わる。


「待たせてすまなかったね。私は上級陰陽師のたちばな里佳子りかこだ」


「私は下級陰陽師の九條黒恵です」


「初級陰陽師。神楽沙零夜です」


「話は聞いてるよ。あの男の一番弟子である九條黒恵ちゃんと、あのバカからの推薦の神楽沙零夜君だね」


「バカって...」


 黒恵からの紹介で書類上、零夜を陰陽師として推薦したのは豪木となっている。バカ呼ばわりされた豪木はアハハっと笑うのだった。


「今回はこの子達と任務を受けてもらう。君達、自己紹介をしてくれ」


「ボクは下級陰陽師...アイ=ブラッディフォール」


 黒髪ボブで右サイドにで青のワンポイントメッシュが入っている琥珀色の瞳をしている。そして、目の模様が琥珀色の瞳に赤い十字架の様なバッテンの模様があった。


名前は外国人っぽいが...日本人だよな?


「彼女は陰陽師と悪魔祓師エクソシストとの間で産まれた子だ」


「「エクソシスト??」」


「簡単に言うと、外国版の陰陽師だよ」


 豪木が代わりに答える。陰陽師とは、日本で呪怪を祓う者達。だが、外国では呪怪を悪魔デビルと呼ばれていて、陰陽師は悪魔祓師エクソシストと呼ばれている。


「んで、こっちは」


「アタシ、凛!!緋村ひむらりんって言うの」


「この子は私と同じ上級陰陽師よ。多分陰陽師になったのは、神楽沙君より2週間ぐらい速いのかな」


「え?陰陽師となったばかりなのに、上級陰陽師なのですか?」


「彼女は特例なのよ。彼女が引く血は特別なモノだからね」


 赤髪のサイドテールに、赤い瞳の中に黄金色に輝く星型の模様。子供の様に元気溢れる少女の様だ。


「...ねぇ」


「ん?」


凛は目をキラキラしながら、零夜に近づく。


「どこか、会った事ある?」


「...ないと思うが」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る