第2話 呪怪
「神楽沙君って何者?!」
「まずは治療からしようか。委員長が嫌じゃなかったら、ウチ来る?近くだから」
「...うん」
黒恵はコクリと頷く。
零夜の案内に辿り着いたのは、少し大きめのマンションだった。18階にエレベーターに向かい、零夜の家の中にお邪魔する。
「お、お邪魔します」
「適当にくつろいでて良いよ。あ、先に治療からしないと、委員長は自身で治療できる?ごめんね、俺は他人を治療するの得意じゃないんだ」
「あ、
「そう。なら、良かった。お茶出すから待ってて」
「はい」
零夜は台所に向かった。
黒恵はリビングを見渡すと、一人暮らしとしてあまりにも広く、綺麗に掃除されている。家族と一緒に暮らしているのかと考えるが、前にクラスで1人暮らしだと聞いたのだ。
も、もしかして彼女さんと、同棲している?
「委員長、お待たせ」
「あ、ありがとうございます...って、そんな事より、なんで霊力を扱えるのですか?!」
黒恵は本来の目的を思い出すのだった。
霊力とは人間の生命エネルギーを霊力と言った神秘的な力に変換させた秘法。
「うーん、まぁ俺の親が陰陽師だったからかな?生まれつき霊力を浴びてるって言ってたし」
「え?」
霊力を開花させるには、霊力を持つ人間から体内に霊力を流し込まないと行けない。だが、稀に生まれた時から霊力を持つ人間もいる。大体、その者は才能の塊と言われている。
「なら、神楽沙君って陰陽師って事ですか?」
「俺は陰陽師じゃないよ。俺は霊人だ」
陰陽師とは、世間に公にされていない政府公認の組織の職業。それに属しない、霊力を持った一般人として過ごす人間の事を
「霊人で、中級の呪怪を一撃で倒すなんて...」
呪怪とは世界にいる人間の負の感情エネルギーが具現し意思をもった異形の存在。呪怪には呪力と言った、霊力の様なモノを使う。
そして、呪怪には4種に分けられており
呪怪には階級も存在し、下から下級、中級、上級、最上級、特級、天災級と振り分けられている。
神楽沙君は、中級の呪怪を一撃で祓った事に、最低でも上級陰陽師。もしくはそれ以上の可能性も...
陰陽師にも階級が存在し、下から初級、下級、中級、上級、最上級、師範級、天極級となっている。中級の呪怪を祓うには、中級陰陽師が3人分の実力が必要。
「すごいですね。中級を簡単に祓えるなんて、羨ましい限りです」
「委員長も出来ると思うよ」
「私は出来ませんよ。霊力量が少ないから...私には才能がないのです」
「霊力が少ない?...もしかして、式神の事認知してない感じ?」
「式神ですか?私には式神は居ません。正確には私の霊力量的に契約できる式神は居ませんでした」
「俺の目はね、少し特殊で。霊力の流れを良く見えるようになってるんだ。委員長の霊力は全て心臓部分に流れて消費してる感じなんだよ」
「え?どういう事ですか?」
「多分、式神が勝手に術者の霊力を吸ってるんだ。委員長は別に霊力量が少ない訳ではなく、常に霊力を吸われて続けてる状態なんだ。まぁ、俺の目以外じゃ誰も気付けないと思うけど。あ、勝手に霊力の流れを見てごめんね?普段は見えないようにしてるけど...なんか反応しちゃったんだよ」
零夜の言葉に信じられない表情を浮かべる。
何故なら、自分に式神と契約している事に気付けて居なかった。名家と言われている家族でさえも、誰も気付けなかったのだ。
「その式神をなんとかすれば、私は中級の呪怪を祓う事は出来ますか?」
「うーん、それは委員長次第だけど。俺の目からすれば、簡単だよ。さっき才能がないって言ってたけど、俺はそうは思わないよ。それにさっき少ない霊力量なのに、精度が高くて驚いたんだ。相当努力したんだね」
「...ありがとうございます」
いくら努力しても、周りの人間からは才能がない、無能と呼ばれる続ける。だが、零夜にだけ努力した自分を初めて見てくれた事に、心から嬉しい気持ちが溢れるのであった。
「原因が分かれば、あとは解決するだけ。助けて頂いたのに、私の霊力量が少ない原因を教えて頂き本当にありがとうございます。このご恩は必ずお返しします」
「なら、今解決させようか?」
「え?出来るのですか?」
「正確には一時的にだけど。今、委員長の中にいる式神達は契約を結んでいる状態じゃなく、取り憑いている状態なんだ。だから、勝手に霊力を吸ってるんだ。その状態を俺が肩代わりにすれば、本来の委員長の霊力をフルに活用する事が出来る」
「それだと、神楽沙君の霊力が...」
「俺は無駄に多いし、回復速度も速いから大丈夫だよ。だから、その間。霊力量の増やして、その式神と契約するんだ。俺から見るから、その式神はめちゃくちゃ強いぞ」
「...なんで、そこまで良くしてくれるのですか?」
ただのクラスメイトなのに、何故こんなに優しくしてくれるのか疑問を抱くのだった。零夜は少し考える素振りを見せるが、自分の答えをすぐに答えてくれる。
「友達を助けるのに、理由は必要?」
「友達...」
「え?友達じゃなかった?俺はてっきり委員長とは友達だと思ってたけど...」
「...ふふ、そうですね。友達です。なら、友達なら委員長ではなく、名前で呼んでください」
「九條さん」
「九条ではなく...まぁ、今はそれで良いです。本当にありがとうございます。神楽沙君!」
「おう!」
やっぱり、私は彼の事が大好きな様ですね。
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