鬼に呪われた陰陽師〜一度全てを失った少年の物語
@chan-yuu
触れられない君に、呪われた花束に愛を込めて
第1話 陰陽師
2025年5月19日 21:56
東京都新宿区にて、4人の男性が死体として発見された。外傷は見当たらなく司法解剖の結果、全員共通して、心臓を引き抜かれており死亡したと見られる。原因不明の変死と判断され、警察は1週間も経たない内に調査する事を中断した。
突然の中断に、納得が行かない者がいたが、これ以上被害を広げない為に階級が高い者にしか知られていない、この不可解な事件を専門として調査する者達に依頼を持ちかける。
「どうでしょうか?」
「うん、これは十中八九呪怪だね」
変死の原因を解決出来るのは国家上層部、公にされていない政府公認の特殊組織呪法捜査局陰陽協会、陰陽師だった。
「九條さん、おはよう!」
「委員長、おっはー!」
「皆様、おはようございます」
名前は
ハーフアップの腰まで伸びている黒髪のストレートロング。頭が良くスポーツも出来る文武両道に優れた学校の人気者。その美しい容姿から完璧と言われ、異性からの告白は人生において100を超えると言われている。
「神楽沙君、おはようございます」
「お?委員長。おはよう〜」
彼女は自分から、楽しく団欒をしているある男子生徒に向かい挨拶をする。彼女の挨拶を、ニッコリと返してくれた事に、嬉しい気持ちが溢れる。
彼の名前は
後ろを刈り上げた汚れ一つない白髪の短髪。本来は学校の規定で髪を染める事は禁止されているが、彼はそれが地毛だという事に許されている。
そして、その鋭い瞳の中で輝く渦の様な同心円系の様な模様は子供の時からの病気だそうで、右耳には二つの金色のリングを付けていた。最後に彼の右腕には包帯をグルグルと巻いて、その上から手袋を付けている。子供の時からの大火傷で、あまり人に見せたくないと隠していると語っていた。
彼は一応問題児として認識されているが、彼の明るい性格や子供の様な仕草が、みんなから慕われている。彼の整った顔は女子から人気が高く、告白したい女子が沢山いると言われている。
そして、その中に私も入っている...
「ん?クンクン...神楽沙君!臭いますよ!」
「え?...」
黒恵は他の生徒達に聞こえないように、彼がタバコ臭いと指摘する。
「私からとやかく言う権利はないのですが、未成年なんですから少しは自重して下さい。今回は見なかった事にしますので、私の香水を使ってください」
「サンキュー!委員長!助かる」
「はぁ〜」
「委員長さんよ、ちょっと零夜には甘すぎないか?僕の時は没収して処分しようとしていたのに...特別扱いしすぎじゃないすか?」
零夜の隣に座る、ニヤニヤと笑う男は
「と、特別扱いなんて!」
「あはは、本当分かりやすい〜。ちゃんと、言わないと、この馬鹿には気づきませんよ」
黒恵は零夜に対しての想いは、北斗にバレている。
「何?なんの話?」
「それは本人に聞くべきだ」
「?」
「おいおい、そんなにいじめるなよ。可哀想だろ?」
「本当に思ってるのですか?君もニヤついてますよ?」
「ハハっ、青春だねぇ。見てて胃もたれしそうだ。ヒューヒュー」
腕組みをしながら、ニヤニヤと笑う大男がいた。その身長はなんと208センチになる程。外国の映画に出てくるハ○クの様な身体に、無造作に金髪が伸びた後ろ髪を後頭部で蓮の華のように纏めているマンバンヘアーの男の名は
「マジで2人ともなんの話してんの?...委員長?顔赤いよ?風邪?」
「な、な、なんでもありません!!」
「あ!待って!香水返してないよ!委員長!」
零夜が呼び止めようとするが、黒恵は揶揄われて顔が赤くなりどこか行ってしまった。その日一日中、ずっと零夜を避けてしまい放課後になり、逃げるように学校を後にする。
「はぁ〜またやってしまいました」
こうも言われると、彼の顔が見られなくなっちゃいます。一年前の出来事から、ずっと好意を寄せてますが...どうせ、この想いは叶う事はないでしょうね
「私は陰陽師ですから...」
陰陽師名家の三女で、子供の時から陰陽師として鍛えられていましたが、九條家としての才能は開花する事なく、最下級陰陽師止まり。このままじゃ、より才能を持った子を産む為に、知らない男性と結婚するだけの運命...ただの一般人の神楽沙君なんて、お父様は認めてくれないし、巻き込みたくはありません...
「はぁ〜、なんで陰陽師一家として生まれて来たのでしょう...普通の女の子として生まれていれば...?!」
この感じ呪力?!まさか、近くに呪怪がぁ!この呪力量...相当強い?!
黒恵は急いで呪力を感じる方向へ向かう。
建物の裏側を走り、視界の先に映ったのは大きな灰色のオオカミだった。
「これは、怪獣種中級
霊力を拳に込めて、灰狼に向かって打撃を放つ。
だが、灰狼の筋肉の硬さにビクともしなかった。
灰狼は大きく足を上げて薙ぎ払う。吹き飛ばされる、黒恵は壁に激突した。
「ガハッ!」
ヤバい...やはり、才能のない私じゃ中級には勝てない...このままじゃ、死ぬ...どうせ、死ぬなら叶わぬ想いでも、告白すればよかった...最後に会いたい、神楽沙君
「委員長?」
「え?...なんで」
想いを寄せている相手、最後に会いたい相手が現れた事に驚いた。だが、灰狼がいる場所で零夜が来た事に絶望をする。
「大丈夫?!怪我してんじゃん!」
「神楽沙君!!逃げて下さい!」
「に、逃げる?そんな事より、委員長の怪我を治さないと」
ダメです!いきなり逃げろと言われても...一般人には呪怪が見えない!
もう、ダメかと思った黒恵は、死ぬ気で零夜を守ろうと飛び込み抱きついた。そしてありったけの霊力を込めて防御力を上げた。
「絶対に守ります!だから、何も聞かずに、私が合図をしたら、ここから逃げて下さい!!お願いします!」
「...」
灰狼は零夜を守る黒恵の背中に向かって、爪を尖らせて引き裂こうとする。
「委員長...すごい霊力だな。もう、あとは俺に任せて」
零夜は右手を上げて、人差し指と中指を伸ばし、灰狼の爪に向けた。すると、灰狼はピタリと止まった。いや、止められたのだ。
「呪力を感じると思ったら、委員長居るとは思わなかったよ。まさか、陰陽師だったんだね...
零夜は腕を右に薙ぎ払うと、灰狼の横から黒い影の3つの斬撃が灰狼を襲う。祓われた呪怪は灰となり消滅する。何が起こったのか、分からない黒恵は零夜の顔をジッと見つめるのだった。
「...え?」
「終わったよ。まずは手当しないとね」
...え?一撃?...神楽沙君って、何者...?
普通の男子高校生だった、九條黒恵の想い人、神楽沙零夜は、中級の呪怪を一撃で祓った事に動揺するのだった。だが、それ以上に零夜に抱きついている事、零夜に顔が近くにいる事、そして守ろうとした相手に守られた事に黒恵の心臓鼓動は強く鳴り続けるのであった。
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